2014-04-29

SiO4だから

またまた、興味深い話が舞い込んできました。

以前ちまたの現場施工できるガラスコーティングは、非晶質(結晶ではない=アモルファス)なので、モース硬度は5程度であり、モース硬度7はあり得ない。と記事をアップしました。

(参考)ガラスコーティング【モース硬度7】の不思議
(参考)ガラスコーティングは結晶なの?
(参考)ガラスコーティングにおけるクリスタル/クォーツやダイヤモンドの意味

これに対して ブログ読者の方から、SiO2ではなく、SiO4無機ガラスコーティングは非常に硬いのである」というようなご意見をいただきました。

すみません、この話を聞いて笑ってしまいました。 

「SiO4」とは、ケイ素(silica:[Si])原子の原子価(つなぎ手)が「4」であるために、すべてのつなぎ手に、酸素(oxygen:[O])が繋がっている二酸化ケイ素の基本的な原子構造を「SiO4四面体」のように文字表現したものですね。


(SiO4四面体である)ケイ素と酸素が結合したシリカガラス構造をモデル化して化学式(組成式)で表すと、以下のようになります。
  1. ケイ素原子につながる酸素原子は最大4
  2. 酸素原子につながるケイ素原子は最大2
四方八方に拡がる立体的に上記1.と2.のつながりが連続すると、その集合体はケイ素(Si):1に対して酸素(O):2になるから化学式(組成式):SiO2となります

仮に、ケイ素と酸素以外の原子が存在しない分子の塊があり、そのすべてのつなぎ手が規則通りにまんべんなく配列したSiO2は、結晶ガラス(これに近いもの:水晶、クォーツ、クリスタル、石英)となります。

実際にはこのような不純物が全くなく、完全に規則的に結合したもの=結晶ガラスを人工的に作ることは非常に困難ですし、常温にて現場施工するガラスコーティングにおいては、ガラスを結晶化することはできず、規則性が少なくランダム性の高い結合の非晶質ガラスとなります。

結晶、非晶質と一言で言いますが、実際には非常に多くの結合形態があります。結合の仕方で「硬いとか柔軟性がある」などのガラスの様々な性質が決まります。仮に「硬いガラス」と言うのなら、「SiO4四面体同士の結晶性結合構造」を示す必要があるのです。

何れにしましても、非晶質ガラス(モース硬度5程度)、結晶ガラス(モース硬度7程度)のどちらも、基本構造は「SiO4」ですし、化学式(組成式)は「SiO2」ですね。

笑ったりしてすみませんでした。





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2014-04-28

日産超撥水コーティングのつづき

前回記事でご紹介しました「超撥水・超撥油防汚コーティング実験を開始」について、お客さまから以下のような情報を頂戴しました。

YouTubeの動画を高画質全画面(HD 1080P)表示すると、クルマ(日産ノート)の右半分が「つや消しに見える」とのことです。

確かに高画質全画面(HD 1080P)にすると、向かって左半分(コーティングなし)に比べて、超撥水超撥油コーティングした右半分がつや消しに見えますね。わたくしが見た感じでは00:40秒あたりが特にそのように見えます。

つや消し、すなわち半透明・不透明のコーティングで、超撥水超撥油するものは珍しくはありません。半透明感は微細凹凸表面によるものです。

このため擦ったりすると凹凸がならされて次第に撥水性や撥油性が落ち、美観上のムラにもなりやすのですが、日産さんの実力や如何にといったところでしょうか?

(参考) 「超撥水コーティングの防汚性は最強!しかし、、」

YouTubeを高画質に切り替える方法はこちらをご覧ください→https://support.google.com/youtube/answer/91449?hl=ja

もう一度動画URLをリンクしておきます。上記の方法で高画質全画面表示にするとテカリ具合がわかりやすいかも?です。 




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2014-04-25

超撥水・超撥油防汚コーティング実験を開始

米国日産オフィシャル ニュースサイトによりますと、ヨーロッパ日産のテクニカルセンターにおいて、セルフクリーニング・コーティングの実験を開始したと発表しています。

このセルフコーティングの技術は以前このブログ「超撥水コーティングの防汚性は最強!しかし、、」でも紹介した、米国の「Ultra-Ever Dry」をベースに開発を進めているようです。




自動車メーカーによって、このような超撥水・超撥油防汚コーティングが実用化・商品化されたら、弊社のようなコーティング剤メーカーにとっては痛いですね。 日産の超撥水・超撥油防汚コーティングによる光沢などの美観や、コーティングの持続性などが気になるところです。   <追伸> YouTubeの動画を高画質全画面(HD 1080P)表示すると、クルマ(日産ノート)の右半分が「つや消しに見える」とのことです。→日産超撥水コーティングのつづき  
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2014-04-22

無機コーティングが密着する理由 ~アクアミカ・ポリシラザンの場合~

先日アップしました記事「無機ガラスコーティングの耐久性 ~表面改質~」において、無機ガラスコーティング密着性の問題をご紹介しました。

これに対して、お客さまから下記のようなご指摘をいただきました。

無機コーティングの代表格であるポリシラザン(パーヒドロポリシラザン・ペルヒドロポリシラザン)は、水酸基(-OH)や、カルボキシル基(-COOH)との結合だけでなく「アクリルやウレタンなどの樹脂と相溶するから、高い密着性が得られるのではないか」というご指摘です。


(参考)ご指摘いただいたお客さまからは、このような他社様の資料をお示しいただきました。→「アクアミカとは」http://www.tokai.or.jp/kyowa/aquamika.pdf

このPDF資料の4ページ上部に「①密着性」という項目があります。

アクアミカ(パーヒドロポリシラザン:PHPS)に関する上記資料から引用:
「PHPSは非常に活性で、塗装成分のOH、COOHなどの官能基と化学結合すると同時に、アクリルやウレタンなどの樹脂と相溶するため、高い密着性が得られます。金属やセラミックスなどの最表面も同様に、OHの存在により密着性が高く、樹脂に対しても極性基の存在によりよく密着していると考えられます。」

ここでは「極性基とケイ素(Si)が結合するから密着する」という書き方がなされています。

これに対して、以前アップした弊社ブログ記事
「無機ガラスコーティングの耐久性 ~表面改質~」では、そもそも有機物である塗装や樹脂(プラスチック)表面において、-OHや-COOHなどの極性基の密度が低いので、極性基が高密度に存在しやすい「ガラス・セラミック・半導体シリコンウェハや、各種金属のような無機酸化物表面」との密着とは異なり、「塗装など有機物表面と無機コーティングとの密着力は比較にならないほど弱い」という説明をいたしました。

今回ご指摘いただきましたことは、この極性基密度の問題ではなく、さりげなく書かれている太字部分の「アクリルやウレタンなどの樹脂と相溶するため、高い密着性が得られます」という部分です。

これはどういうことなのでしょうか?

確かに自動車などの塗装には「アクリル樹脂やウレタン樹脂」が含有されていると考えられます。このような樹脂とポリシラザン無機コーティングが「相溶」するから密着する、というように解釈されますね。

「相溶」とはどういった状態なのでしょうか?

あまり聞かない言葉なので、岩波・広辞苑1996年電子版には掲載されていませんでした。もうひとつ平凡社・世界大百科事典にも掲載されていません。

Google先生に尋ねてみますと下記のような解説があるよ。と教えてくれました。
「相溶性」セメダイン株式会社ウェブサイトhttps://www.cemedine.co.jp/basic/dictionary/006.html

その他のサイトでも似たような説明がなされています。


要するに2種類以上の物質が相互に親和性を示し「溶けあう」ことを意味しているようです。文字通りですね。

塗装と無機コーティングが溶けあって密着するという風に理解すると驚くべきことです。無機コーティング剤を塗布することにより、塗装表面が溶けて結合するということですよね。

この場合の塗装を溶かすとは、どういうことでしょうか。

高温で塗装を溶かしながら無機コーティングすることは考えられないので、常温での「相溶の可能性」としては下記のような方法が考えられるのではないでしょうか。

1.無機溶剤を使用する
ポリシラザンなど無機コーティング剤のPRには、「無機溶剤を使用する」という説明がありますが、これは凄いですね。たぶん無機溶剤なるものを使うと塗装だけではなく、鉄やアルミニウムのボディも溶かしてしまいませんか。
(参考)無機溶剤ガラスコーティングとは?

2.有機溶剤を使用する
ポリシラザンのような高分子ポリマーを、ガラスコーティングとしてスプレーガン吹き塗布をするには、塗料と同様にシンナーなどの石油系有機溶剤を使用して希釈することになります。上記のアクアミカ(パーヒドロポリシラザン:PHPS)資料の10ページには「溶媒の選択」として、キシレン・ターベン・ソルベッソ(別名:ソルベント・ナフサ)・ジブチルエーテル(別名:n-ブチルエーテル)の有機溶剤が指定されています。

つまり、無機溶剤は危険すぎて使用できませんが、石油系有機溶剤=シンナー類を使って塗装表面を溶かすことによって結合させ密着させます、という意味になるのでしょうか? 


何れにしても塗装をやり直すのなら解りますが、ガラスコーティングをするために、塗装表面を「相溶」させるとはどういうことなのでしょうか?
 

どのように考えても、塗装(有機物)の上にポリシラザンのような無機コーティングの密着させるためには、「無機ガラスコーティングの耐久性 ~表面改質~」でも述べましたように、塗装のような有機物表面に「有機-無機改質処理剤」をコーティングした上でないと、ガラスコーティングとして充分な耐久性を得ることはできないと考えます。

いかがでしょうか「相溶による密着」というのは、とても理解しにくいことですね。どなたか解る方がいらっしゃいましたら、ご教示いただけないでしょうか。

(参考)ポリシラザンについて ~ガラスコーティング剤として~

(参考)ガラスコーティング種類と特質 ~特性・機能比較~
(参考)ガラスコーティング剤の密着について(参考)無機ガラスコーティングは温度変化に弱い
http://kirasaku-coating.blogspot.jp/2015/02/blog-post_22.html


 

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2014-04-18

無溶剤ガラスコーティング剤の引火性と臭い

弊社の低分子シランによる無溶剤ガラスコーティング剤をお試しいただいたお客さまのうち、十件のうち一件程度、下記のようなご質問をいただくことがあります。

「溶剤を使用していないコーティング剤
(無溶剤コーティング剤)なのに、引火性だし揮発性のニオイがあるのはナゼですか?」

結論から申し上げますと、低分子シランのガラス化する成分そのものから揮発した気体にニオイがあり、その気体は燃えるからです。溶剤は一切添加しておりません。

その理由は下記の通りです。



無溶剤ガラスコーティング剤が燃える理由

低分子シランを主原料とする「無溶剤ガラスコーティング剤」は、ガラスの原料物質ケイ素(Si)が主成分となります。

ケイ素はご存知のように原子価は「4」です。
つまりケイ素原子は、他の元素が手をつなぐことができる本数が4本あるものです。

ガラスコーティング剤である液体の低分子シランは、4つある手のつなぎ先が「ケイ素(Si)と官能基(R:機能性をもつ原子団)あるいは水素(H)や酸素(O)」となっています。

液体の低分子シランが空気に触れますと、液体としてつなぎ止めることができないケイ素の手のつなぎ先が、空気中の酸素(O)や水素(H)などと結合して、ケイ素を含んだ水素ガスを発生(揮発)させます。

このようにして、ガス化した低分子シランは、ケイ素を中心に水素や酸素と結合しておりますので、炎に近づけますと気化したケイ素水素ガスが引火します。


このガスはケイ素を含んでいますので、燃焼後は空気中の酸素と結合して白いガラス質成分の燃えカスが残存します。※危険なので燃焼実験はしないでください。

このように、液体の低分子シランが空気に触れますと、空気中の酸素や水素と結合しながら引火性のガス(アルコール)が発生し、炎を近づけると燃えるのです。



無溶剤ガラスコーティング剤が臭う理由

低分子シランが気化したガスは確かにニオイがあります。

低分子シランは上記のとおり、「ケイ素(Si)と官能基(R:機能性をもつ原子団)」の構造により、水素や酸素と結合しつつ気化したガスは、うっすらと日本酒のような、エステル臭やアルコール臭などと呼ばれるような臭いがあります。

このニオイは、炭素(C)を中心とする物質である石油系有機溶剤(シンナー:キシレンやトルエン、ターベンなどのミネラルスピリット、有害物質)とは異なる種類の臭いです。



無溶剤化できる理由

ズバリ、低分子化合物だから無溶剤化ができます。


従来の高分子ポリマー化合物を原料とする以下のようなガラスコーティング剤は、石油系有機溶剤と混合する必要があります。

石油系有機溶剤と混合する代表的なガラスコーティング剤原料

  1. ポリシラザン
    パーヒドロポリシラザン・ペルヒドロポリシラザンについてはこちらをご覧ください。→ポリシラザンについて ~ガラスコーティング剤として~
  2. オルガノポリシロキサン
    無溶剤化した高分子オルガノポリシロキサンについてはこちらをご覧ください。→オルガノポリシロキサンとは ~ガラスコーティング剤として~



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      2014-04-14

      無溶剤ガラスコーティングとは?

      弊社の低分子シランによる無溶剤ガラスコーティング剤をお試しいただいたお客さまのうち、十件のうち一件程度、下記のようなご質問をいただくことがあります。

      「溶剤を使用していないコーティング剤
      (無溶剤コーティング剤)なのに、引火性だし揮発性のニオイがあるのはナゼですか?」

      結論から申し上げますと、低分子シランのガラス化する成分そのものから揮発した気体にニオイがあり、その気体は燃えるからです。溶剤は一切添加しておりません。

      その理由は下記の通りです。



      無溶剤ガラスコーティング剤が燃える理由

      低分子シランを主原料とする「無溶剤ガラスコーティング剤」は、ガラスの原料物質ケイ素(Si)が主成分となります。

      ケイ素はご存知のように原子価は「4」です。
      つまりケイ素原子は、他の元素が手をつなぐことができる本数が4本あるものです。

      ガラスコーティング剤である液体の低分子シランは、4つある手のつなぎ先が「ケイ素(Si)と官能基(R:機能性をもつ原子団)あるいは水素(H)や酸素(O)」となっています。

      液体の低分子シランが空気に触れますと、液体としてつなぎ止めることができないケイ素の手のつなぎ先が、空気中の酸素(O)や水素(H)などと結合して、ケイ素を含んだ水素ガスを発生(揮発)させます。

      このようにして、ガス化した低分子シランは、ケイ素を中心に水素や酸素と結合しておりますので、炎に近づけますと気化したケイ素水素ガスが引火します。


      このガスはケイ素を含んでいますので、燃焼後は空気中の酸素と結合して白いガラス質成分の燃えカスが残存します。※危険なので燃焼実験はしないでください。

      このように、液体の低分子シランが空気に触れますと、空気中の酸素や水素と結合しながら引火性のガスが発生し、炎を近づけると燃えるのです。



      無溶剤ガラスコーティング剤が臭う理由

      低分子シランが気化したガスは確かにニオイがあります。

      低分子シランは上記のとおり、「ケイ素(Si)と官能基(R:機能性をもつ原子団)」の構造により、水素や酸素と結合しつつ気化したガスは、うっすらと日本酒のような、エステル臭やアルコール臭などと呼ばれるような臭いがあります。

      このニオイは、炭素(C)を中心とする物質である石油系有機溶剤(シンナー:キシレンやトルエン、ターベンなどのミネラルスピリット、有害物質)とは異なる種類の臭いです。



      無溶剤化できる理由

      ズバリ、低分子化合物だから無溶剤化ができます。


      従来の高分子ポリマー化合物を原料とする以下のようなガラスコーティング剤は、石油系有機溶剤と混合する必要があります。

      石油系有機溶剤と混合する代表的なガラスコーティング剤原料

      1. ポリシラザン
        パーヒドロポリシラザン・ペルヒドロポリシラザンについてはこちらをご覧ください。→ポリシラザンについて ~ガラスコーティング剤として~
      2. オルガノポリシロキサン
        無溶剤化した高分子オルガノポリシロキサンについてはこちらをご覧ください。→オルガノポリシロキサンとは ~ガラスコーティング剤として~



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          2014-04-13

          ポリシラザンの耐久性 ~表面改質~

          ちょっとショッキングな話です。

          コーティング業界の一部では「無機質の最強バリア」みたいな文句が、何とかの一つ覚えのように宣伝されています。
           

          いつものように結論から言います。

          ポリシラザンなど無機ガラスコーティングは、塗装のような有機物に直接コーティング施工をした場合、密着力(耐久性)が弱いためコーティング被膜として残存できる時間が短いのです。

           

          その弱さは、無機ガラスコーティングが塗装表面に密着するメカニズムによるものです。


          無機ガラスコーティングの密着メカニズム

          ポリシラザンなどの無機ガラスコーティングは、ガラスコーティングの主成分であるケイ素(Si)が、塗装表面の水酸基(-OH)やカルボキシル基(-COOH)の酸素(O)とSi-O結合することで、塗装に密着するという説明がなされています。

          この説明は、金属やシリコンウェハ表面などの無機基材表面の場合に無機ガラスコーティングをおこなう説明としては納得できます。

          なぜならば、新鮮で汚染されていない無機物である金属や半導体原料のシリコンウェハような表面には、水酸基(-OH)やカルボキシル基(-COOH)が高密度に表出しているからです。


          このような無機表面に対して、ペルヒドロポリシラザン(パーヒドロポリシラザン)のような単純な無機分子構造のケイ素(Si)は、水酸基(-OH)の酸素(O)と結合する密度が高くなり、この結果、ガラスコーティングとしての密着力が高まります。

          (参考)ポリシラザンについて ~ガラスコーティング剤として~


          塗装は有機物です

          ところが自動車塗装、プラスチック部品やホイールの表面は有機物です。自動車塗装は、アクリルやウレタン、メラミン・エナメルなどの有機樹脂が主な成分です。

          このような塗装の有機物表面に存在する水酸基(-OH)やカルボキシル基(-COOH)は、低い密度でしか存在できません。


          プラスチックはもちろんのこと、ホイール※1も表面は有機物に覆われていますので、無機ガラスコーティングが高密度に結合し密着する部分は、自動車の場合、窓ガラスとドアミラーくらいしかないのです。

          ※1.アルミやマグネシウムや鉄などのホイールの表面は、錆(腐食)の発生を抑えるために無色透明塗装や色付き塗装が施されています。

          無機の窓ガラスに無機ガラスコーティングをしても意味がありませんね。ですから、無機ガラスコーティングは、自動車に対しては直接施工しても残存性の低い弱いコーティングとなるのです。




          塗装(有機物)に対する無機ガラスコーティングの密着性

          それでは、塗装のような有機物に対する無機ガラスコーティングの密着性は、どのようになるのでしょうか?

          大手化成品製造会社による、無機基材と有機基材に対するペルヒドロポリシラザンの密着力データ(耐水性・耐久性)が手元にあります。

          ポリシラザンにより無機ガラスコーティング(ペルヒドロポリシラザン
          ・パーヒドロポリシラザン)を施した有機プラスチックへの密着度を測定するため、お湯(80℃の水※2)を連続的に流しかけ無機ガラスコーティングが消滅するまでの時間を測定した試験結果です。

          ※2.水は温度上昇にともない強い溶解力・洗浄力を示すことから、熱水を使用することで、耐水性試験時間を短縮(加速試験)させることができます。

          A.有機プラスチックに、直接無機コーティングした場合
          80℃耐水性:4時間

          B.有機プラスチックに、有機-無機改質処理※4を行ったうえで、無機コーティングした場合
          80℃耐水性:400時間

          C.無機シリコンウェハに、直接無機コーティングした場合
          80℃耐水性:1000時間

           

          ※4.有機-無機改質処理とは、有機表面と無機表面の接着性を高めるために、ケイ素(Si)を主剤とした、有機物と無機物の接着性を高める「無機有機ハイブリッド化合物」を下地処理コーティングすることです。


          無機コーティングの有機物への密着・耐水・耐久性は100分の1以下

          いかがでしょうか、上記A.のように有機物であるプラスチックに直接ポリシラザンによる無機コーティングを行った場合に比較して、B.有機物と無機物の接着性を高める有機-無機改質処理を施すことによって100倍の耐水性を実現することができます。

          C.のシリコンウェハのような無機基材に対する無機コーティングは、A.に対して250倍の耐水性があるということになります。

          このことは、逆に言いますと無機コーティングであるペルヒドロポリシラザンは、プラスチックや塗装などの有機物に対しての密着性が、無機物基材へのコーティングと比較して桁違いに不十分であることが言えるわけです。
           

          つまり、従来自動車ボディ塗装ガラスコーティングとして普及し、無機コーティングが最高と言われていたのは、実用化当初の半導体シリコンウェハ(無機物)に対する、コーティング性能がそのままに流用されたものと考えられるのです。

          有機物である塗装に対して無機ガラスコーティングを行うには、有機物と無機物の密着性を高めるために、有機-無機改質処理剤による下地処理コーティングをしなければ、本来の性能や機能を発揮することができないのです。


          くわしくは「ガラスコーティング剤の密着について」をご覧ください。


          (参考)無機コーティングが密着する理由 ~アクアミカの場合~

          (参考)
          無機ガラスコーティングは温度変化に弱い
          http://coating.th-angel.com/2015/02/blog-post_22.html



          無機有機ハイブリッドガラスコーティング

          このようなことから化学分野全般において、塗装やプラスチックなどの有機物の表面を改質して機能性を高めるガラスコーティングは、自動車に限らずこの十年余り「無機有機ハイブリッド化」がどんどん進められてきたわけです。

          別の機会に、ガラスコーティングの無機有機ハイブリッド化について説明させていただきます。


          (参考)ガラスコーティング種類と特質 ~特性・機能比較~
          (参考)ガラスコーティングにおける無機溶剤って何ですか?






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