2014-12-12

撥水コーティングについて

撥水コーティングにおける撥水性の意味・仕組みや、特徴・機能性などについてまとめてみました。

●撥水性とは

  • 撥水とは、文字通り水をはじくことを意味します。
  • 撥水と疎水は、水をはじくという意味では同じことです。
  • 撥水は水をはじく現象や様子を表し、疎水は水となじみにくい性質を表します。
  • つまり、水になじみ難い表面は疎水性を持った表面であり、疎水性表面は同時に水をはじく撥水性の表面でもあります。
  • 車のコーティングの場合は、撥水と疎水を若干異なったニュアンスであることがあります。例としては、水がコロコロと球状になり非常に良くはじく場合は「撥水性」と呼び、水が球状ではなく少し広がったようにはじく場合は「疎水性」や「滑水性」と呼ぶようです。


●撥水の定義

  • 撥水状態であることの定義としては、水の接触角により、車のコーティング業界では概ね下記のように言われているようです。


【水の接触角】
  • 180~120°程度:超撥水
  • 120~90°程度 :高撥水
  • 90~40°程度  :低撥水、疎水、滑水など
  • 40~1°程度   :親水


●撥水の仕組み

  • 撥水の仕組みを大別するとふたつに分類されます。ひとつ目は水よりも表面の表面張力(表面自由エネルギー)のが小さいほどよく撥水します。
  • フッ素は地球上の物質で最も電気陰性度が高いため、その化合物であるフッ素樹脂は表面張力が小さくなり、水はもちろんのこと、油をもはじくものもあります。
  • 水の接触角150°以上の超撥水性や、120°を超える撥水性表面 は、植物のハスやイモの葉の表面にように、規則的に配列された細かな凹凸表面でないと実現できません。
  • 水の接触角120°を超える撥水表面は、細かな凹凸が必要であるため、透明性の高い光沢のある表面では実現できていません。また、布などで凹凸表面を拭きますと、細かな凹凸が壊れて撥水性が落ちてしまいます。


表面張力(表面自由エネルギー)単位 [mN/m]
--------------------------------------
水:73
油:25~30程度(石油・鉱油)
--------------------------------------
S1.シリコーン樹脂:16~30程度

F1.フッ素樹脂1:18程度(PTFE、フライパンなど)
F2.フッ素樹脂2:10~25程度(フッ素樹脂+シリコーンコーティング)
F3.フッ素樹脂3:6(CF3、実験室レベルでの最小値)
--------------------------------------
(参考)水の接触角はおよそ下記のようになります。
S1.シリコーン樹脂:110~90°
F1.フッ素樹脂1(PTFE):114°程度
F2.フッ素樹脂2(フッ素樹脂+シリコーンコーティング):>115°~100°
F3.フッ素樹脂3(CF3):120°


●撥水性コーティングの特徴と機能性

  • 水に含まれた水溶性の汚れ物質は、撥水性をもつ表面でははじかれます。さらに、撥油性まで持つ表面は、油性の汚れ物質もはじく能力をもっています。
  • 撥水性コーティングは、汚れにくく汚れが固着しにくい表面となります。
  • 撥水性と撥油性を両立しているコーティングの表面は、更に汚れ難くいです。
  • 撥水表面はコーティングの持続を確認することが容易です。

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2014-12-05

新しい無機有機ハイブリッドコーティング

ガラスコーティングの基本的な成り立ちとして、大きく分類しますと下記の2種類があります。
 

  1. 無機コーティング
    代表例として、高分子タイプのポリシラザン:Perhydropolysilazaneを原料としたものがある。
  2. 無機有機ハイブリッドコーティング
    代表例として、オルガノポリシロキサン/ポリオルガノシロキサン:Polyorganosiloxanを原料としたものがある。
    古くは高分子タイプがあったが、現在は溶剤を必要としない低分子タイプの2種類がある。


 お客さまとさまざまな会話をする中で、無機や有機の構造的な話のほかに、特徴や機能性や用途の違いはどのようになっているのか?ということを問われることがあります。

以前、構造的なことについてまとめましたので、下記記事を合わせてご覧ください。

ガラスコーティングの比較http://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_12.html


無機ガラスコーティングとは

<無機ガラスは、単純な二酸化ケイ素(SiO2)化合物を意味することが多い>
  • 高分子化合物である
    クロロシランを出発原料とし、脱アンモニア架橋により非晶質(アモルファス=結晶構造を持たない)ガラス被膜を形成する高分子化合物である。

    無機ガラス被膜を形成するガラスコーティングの例としてポリシラザン:Perhydropolysilazane)を原料としたものがある。

    無機ポリシラザンを改良した無機・有機ハイブリッド化は、技術的には可能であるが、反応性が急激であるなどの理由から、実用的な意味で無機・有機ハイブリッド化を目指すものは事実上見当たらない。

    (無機有機ポリシラザン/オルガノポリシラザン:Organopolysilazanes)
  • 有機物(塗装など)への密着性が劣る
    単純な無機ガラス被膜を形成するこのタイプは、元来おもに半導体製造においてシリコンウェハ(無機物)への一時的な表面改質剤として使用されているものを、車塗装用コーティング剤として二十年以上前に流用したものである。

    無機ガラス被膜は本来の用途である無機物への密着性は高いが、塗装などの有機物への密着性が不十分であることから耐久性(密着性)に劣る欠点がある。
  • 有害な有機溶剤が不可欠である
    高分子化合物であるため、ガラスコーティング剤として使用するには、大量のキシレン・トルエン・ターベンなどの芳香族有機溶剤(通称シンナー)に溶かし込んで使用する必要がある。

    このためガラス化成分量がごくわずかであり膜厚が極端に薄くなる。

    使用する芳香族有機溶剤:シンナーは、塗装を溶解し塗装に悪影響を及ぼす恐れや、人体および地球環境に対しても毒性・有害性がある。
  • 施工性や機能性に劣る
    → 品質の維持・コストダウンが困難である。
  1. 硬化時の脱アンモニア反応が急激に進行し、硬化反応を制御できないため施工性が悪い。
  2. 被膜硬度や柔軟性を制御できないため、膜厚が極端に薄くなり耐久性・耐傷性が劣る。
  3. 被膜が単純な分子構造であるため、撥水や防汚など機能性を付与することができない。
  4. 単純な無機物被膜であるため、シリカスケール(無機物汚れ)などのウォータースポットが固着しやすく除去が困難になりやすい。
  5. 塗装など有機物への密着性を高めるためには、下地処理としてシリコーンカップリング剤によってコーティングを行う必要がある。
  6. 撥水性を付与したり、無機汚れ(ウォータースポット)固着を抑制する機能を付与するためには、無機・有機ハイブリッドによるトップコートを行う必要がある。
  7. 上記のように反応が急激で作業難易度が高いこと、下地処理→無機ガラスコーティング→トップコートと、多層化による作業が複雑であることから、作業失敗リスクが高く、高品質を維持することが難しく、作業コストアップにつながる。
(参考)
無機ガラスコーティングは温度変化に弱い
http://coating.th-angel.com/2015/02/blog-post_22.html


 

無機有機ハイブリッドコーティングとは

<無機有機ハイブリッドガラスは、二酸化ケイ素(SiO2)と有機官能基を結合(クロスカップリング)した化合物の総称>
  • 高分子タイプと低分子タイプがある
    クロロシランを出発原料とし、脱アルコール架橋により非晶質(アモルファス=結晶構造を持たない)ガラス被膜を形成する高分子化合物がある。

    最近になって保存性や安定性を高め、多官能性(多機能性)を付与することができる低分子タイプ(低分子シラン)が実用化されている。低分子タイプはガラスコーティング剤として、溶剤を一切添加しない高濃度ガラス化成分を含有する無溶剤化ができる。

    特に低分子シラン原料は、日本独自※の研究開発などにより、日本の世界的なシェアが高い。

    ※.低分子シランの基本技術であるクロスカップリング分野では、根岸英一(米パデュー大 特別教授)、鈴木章 (北海道大学 名誉教授)による2010年ノーベル化学賞のように、日本が伝統的に強い分野となっている。
  • 有機物(塗装)への密着性が高い
    無機ガラス(SiO2)基本骨格と、有機官能基による無機・有機ハイブリッド構造であるため、一液のみで塗装への密着性を高め、結合密度の高いガラス被膜を形成できる。
  • 機能性・耐久性・作業性を高めることができる
    無機・有機ハイブリッド構造であり、有機官能基の配向を制御することができるため、上記のような有機物(塗装)への密着性を高めたり、ガラスコーティング表面の撥水性や防汚性などを付与することができる。

    同時に反応性・硬度や柔軟性を制御することができるため、硬化時間・作業時間の最適化、膜厚や被膜硬度や柔軟性の最適化ができるため、作業性や被膜耐久性を向上させることができる。
  • 溶剤を一切使用しない無溶剤化ができる
    旧来からある高分子タイプの無機有機ハイブリッドガラスコーティングは、ガラスコーティング剤として芳香族の有機溶剤に溶解して使用する必要があった。

    これに対して新しい低分子タイプは、溶剤を一切使用せずに高品質のガラスコーティング剤を提供することができる。

    溶剤化によって、リッチ(厚膜化・高光沢・高耐久)なガラスコーティングができるだけでなく、塗装や人体・地球環境に対して安全でかつ、容易な作業にて行うことができるようになり、施工コストダウンと機能や性能向上ができるようになる。

    低分子タイプは、無溶剤だけでなく、アルコール系溶剤を使用することができるため、安全性や環境性を保ったままで液剤コストダウンやレベリング性向上が可能である。
  • 施工性や機能性が高まる
    → 高品質・低コスト化ができる。
  1. 脱アルコール・脱水反応による硬化であるため、硬化速度がマイルドであり添加剤によって硬化時間を制御できるため施工性が高い。
  2. ・被膜の硬度や柔軟性を制御でき、膜厚が最適化できるため耐傷性を向上することができる。このため硬いだけではなく、粘り気も兼ね備えた強靭な被膜を形成できる。
  3. 表面に有機官能基を配向することにより、シリカスケール(無機物汚れ)などのウォータースポットが固着を遅らせることができ、早めの除去により無機汚れの定着を防ぐことができる。
  4. 塗装など有機物との密着を高める有機官能基と、強くて劣化しにくい無機ガラス骨格によって、撥水性や防汚性を高める有機官能基のハイブリッド構造であるため、一液で万能性の高い高品質な被膜が簡単にできる。
  5. 液剤価格の適正化や施工性を高めることにより、総合的なコストダウンと作業の高品質化が両立可能となる。

 

弊社では、無機有機ハイブリッドコーティングの中でも、新しい低分子タイプを中心に開発製造をおこなっております。カーディテイリング事業者さまや、コーティング剤の卸売・小売事業者さまはお気軽にご相談ください。

ガラスコーティング剤は、下記の理由により一般のお客さまには販売しておりません。大変申し訳ありませんがご理解いただきたく、よろしくお願い申し上げます。

ガラスコーティング剤の一般販売についてhttp://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_27.html


(参考)
コーティング剤の選び方 ~トップコートとして~
http://coating.th-angel.com/2015/03/blog-post_31.html

ハイブリッドコーティング ~トップコートとして~http://coating.th-angel.com/2015/06/blog-post.html

ハイブリッドコーティング ~ベースコートとして~
http://coating.th-angel.com/2015/05/blog-post_12.html

新しい無機有機ハイブリッドコーティング
http://coating.th-angel.com/2014/12/blog-post.html

新しいガラスコーティング剤について
http://coating.th-angel.com/2014/05/blog-post.html

ガラスコーティングの比較
http://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_12.html




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