レアアースやレアメタルのコーティングへの適用
一年ほど前から、THエンゼルさんのコーティング剤にはレアアース・レアメタルを使っていますか?や、レアアース・レアメタルを使ったコーティング剤を作ることができますか?とのご質問をいただいております。レアアースやレアメタルは、古くからハードディスクや電池、スピーカーなど、スマートフォンやパソコンなどの電子デバイスの原料として使用されており、数年前に中国で産出される資源取引の問題として、報道されたことが思い出されます。
結論から申し上げます。
弊社の自動車用ガラスコーティング剤および、建築用ガラスコーティング剤には、レアアースやレアメタルと呼ばれる希土類金属由来の化合物は使用していません。
レアアースやレアメタルを使用しない理由は、下記のとおりです。
レアアースやレアメタルを使用しない理由は、下記のとおりです。
硬化型コーティング剤において、一部の金属化合物は、硬化反応などを制御する触媒として使用されています。
このような中で、古くからコーティング剤の硬化触媒として、レアアースやレアメタルが用いられております。
弊社は、コーティング剤の開発段階において、用途に応じて下記のような要件を考慮しながら、最適な触媒を選択しています。 レアアースやレアメタルの適用についても、選択肢のひとつとして評価をおこなっております。
【硬化触媒の要件】
【硬化触媒の要件】
- 硬化特性・硬化速度
- 硬さと柔軟性のバランス
- 素地との密着性
- 耐久性
- 美観
評価した結果として、自動車や建築に使用する硬化型コーティング剤(ガラスコーティング剤)では、レアアースやレアメタルではなく、別種類の金属触媒を採用しております。
過去の話ですが、 自動車や建築用ではなく、用途や条件が異なれば、弊社においても硬化型コーティング剤として、レアアースやレアメタル由来の触媒を用いておりました。
弊社がレアアースやレアメタルをコーティング剤の触媒原料として使用しない理由は、現場で施工する自動車用コーティング剤や建築用コーティング剤としては、硬化特性などの点で最適ではないためです。
弊社がレアアースやレアメタルを使用しない理由は、もうひとつあります。
簡単に言いますと、レアメタルやレアアースを採掘する際の環境汚染と、原料調達の不安定さを避けるためです。
採掘した鉱物からレアアースやレアメタルを取り出すときに、一緒に出てきてしまうものに、ウランやトリウムなどの放射性物質があります。
その課題は下記のようにとらえております。
レアアースコーティングやレアメタルコーティングの課題
東日本大震災に前後して尖閣諸島領土問題に関連して、主要生産国である中国が価格を操作したり輸出制限をしたため、レアアースやレアメタルが注目を浴びたことがありました。
皆様もよくご存じのように、レアアースやレアメタルは中国だけではなく、地球上の多くの地域に分布(中国領土の埋蔵量は世界全体の3割程度、そのほかはカザフスタンなどのCIS諸国、アメリカ、オーストラリアなど)しています。
それではなぜ、当時の世界は、中国に依存していたのかと言うことが疑問になるかと思います。
その理由は、中国での生産量が多く、価格が安かったためです。
中国での生産量が多く価格が安い理由は、中国政府が政策的に寡占を目指したことと、レアアースやレアメタル抽出の際に出てくる汚染物質の存在を、半ば無視して生産を続けていたからなのです。
世界最大の中国南部の鉱床は、イオン吸着型鉱床と呼ばれ、レアアースやレアメタルを含む花崗岩に酸を注入し、酸に溶解したレアアースやレアメタルを取り出す方式です。
従来、このイオン吸着型鉱床では、レアアースやレアメタルを取り出す前に、放射性物質が自然に溶けだしていて、放射性物質の処理は不要だと言われていました。
しかし、現在は溶解処理中に出てくるウランやトリウムなどの放射性物質や、フッ素化合物などの多くの化学物質を使用した精錬方法が、深刻な環境汚染を引き起こしております。
中国のレアアースやレアメタル採掘精錬業者は、中小企業が多く、環境汚染対策をほとんどおこなわずに、必要なコストを削って生産しています。
今後も、中国の供給不安が懸念されるため、CIS、アメリカやオーストラリアなどでのレアアースやレアメタル採掘・生産への動きや、日本でも調達方法の見直しや、レアアースやレアメタルに代わる代替原料へ向けての技術開発が進められています。
いずれにしましても、レアアースやレアメタルのコーティング剤への適用は、機能や性能面での必要性が見いだせないことに加えて、放射性物質やフッ素化合物などによる環境汚染の問題や、不安定なサプライチェーンの問題から、あえて使用する必要はないと考えています。
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