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2014-03-25

オルガノポリシロキサンを原料とするガラスコーティング剤

お客さまより下記のようなご質問をいただきました。


「オルガノポリシロキサン: polyorganosiloxane によるガラスコーティング剤でも無溶剤のものがある。このブログ記事によると、オルガノポリシロキサンを原料としたガラスコーティング剤は、有機溶剤など石油系溶剤に溶かし込む必要があると書かれているが、どういうことなのか?」

このご質問にお答えいたします。

オルガノポリシロキサンや弊社の低分子シランとは、厳密に定義されているわけではありませんので無溶剤化したものとは、以下のようなふたつの可能性が考えられます。


1.(高分子)オルガノポリシロキサンにパウダー微粒子を添加

(高分子)オルガノポリシロキサンは、塗料のように粘度が高く、そのままでは濡れ性やレベリング性が悪いため、ガラスコーティング剤としての塗り込み作業がしにくくなります。このためトルエン・キシレンなどの有機溶剤(石油系溶剤)に溶解して使用することが一般的です。

しかし、車の塗装へのダメージや人体・地球環境への悪影響を避けるために有機溶剤の使用を避け、上記のような濡れ性やレベリング性の問題を改善して、少しでも塗り込みやすくし作業の失敗を避ける目的で、セラミックなどのパウダー微粒子を湿潤分散剤として添加する方法が考えられます。


このように、セラミックなどのパウダー(微粒子)を湿潤分散剤として添加しますと、本来オルガノポリシロキサンが持つガラス化する分子間ネットワークの結合強度が低下することが考えられ、ガラス硬化被膜の密着性や各種強度や耐力(紫外線、熱、酸やアルカリ、硬度・粘りなど)に悪影響を及ぼす可能性が高まります。



2.(低分子)オルガノポリシロキサン

弊社で採用している「低分子シラン」同様方式を、「(低分子)オルガノポリシロキサン」と呼んでいるものがあると考えられます。

「ガラスコーティング比較 ~低分子シランの特性と機能~」←こちらの記事では、時系列的に古くからある高分子タイプのペルヒドロポリシラザンと、オルガノポリシロキサンに対して→低分子シランの比較について述べています。

(参考)ガラスコーティング剤の密着について

(参考) 低分子シラン無溶剤ガラスコーティング剤の特徴である引火性と臭う理由と、従来のガラスコーティング剤が使用する有機溶剤との違いについてはこちらをご覧ください。→無溶剤ガラスコーティング剤だから



オルガノポリシロキサン・ガラスコーティングとは

オルガノポリシロキサンは、クロロシランを出発原料とし、脱アルコール架橋により非晶質(アモルファス)ガラス被膜を形成するポリマー(高分子シラン)です。

オルガノポリシロキサン:Polyorganosiloxaneの名前は、ケイ素:siliconの"sil"と、酸素:oxygenの"ox"と、炭化水素alkaneの"ane"の3次元基本骨格と有機官能基:organoを形成する高分子(ポリ:poly)であることに由来します。

オルガノポリシロキサンは、脱アルコールの反応がポリシラザンの脱アンモニア反応よりもマイルドであることから、比較的取扱がしやすく、無機ガラス主骨格と伴に有機官能基を配向する無機有機ハイブリッド化が容易であるため、機能性を付与しやすいことなどから、ポリシラザンで実現が難しかった課題のいくつかが解決できるようになりました。



 

オルガノポリシロキサン・ガラスコーティングの特質


    無機骨格と伴に有機表面が表出する。
    • 無機汚れ(ウォータースポット、別名イオンデポジット)が固着しにくくなった。
    • 撥水性=疎水性を高めたり低くしたりすることができるため、高撥水化や親水傾向(低撥水化)にするなど目的に応じたコーティング表面が形成できる。反応性(硬化)がマイルドで硬化特性の制御が可能である。
    • 硬度を高めつつも柔軟性を付与することができ、目的に応じた膜厚を形成できる。
    • 手塗が可能であり、特別な設備を必要とせずに塗布作業ができる。高分子であるため有害な有機溶剤(キシレンやトルエンなど)に溶解する必要がある。
    • ガラス化成分含有量が少なく膜厚が薄くなる傾向にある。
    • 塗装だけでなく人体・地球環境に有害である。
    • 有機溶剤を排気する設備が必要であるため設備コストに影響する。

    オルガノポリシロキサンはポリシラザンの課題を克服できたのか?
    高分子シランのなかでもオルガノポリシロキサンは、有機無機ハイブリッド化により、ポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)の下記の課題に対して改善ができていることと、できていないことがあります。

    課題改善点
    ポリシラザンは親水性表面しかできず親水性維持ができない。
    • 無機有機ハイブリッド被膜により被膜性状を変化(低撥水~高撥水)させることができるようになった。
    • 硬化特性が制御できないため施工が難しく高コストである。
    • 硬化速度を制御でき、スプレーガンだけではなく手塗が可能となった。
    • 硬度を制御できないため、膜厚を極端に薄くする必要があり擦過傷の保護性能が劣る。
    • 被膜の硬度と柔軟性をバランス制御できるため厚膜化が可能となった。
    • 硬化過程において有害なアンモニアガスを発し安全性環境性保全のためのコストがかかる。
    • 硬化架橋において発生するガスはアルコールであるため副生物の安全性が高まった。

    課題として残った点
    オルガノポリシロキサンもポリシラザンと同じく高分子であるため、ガラスコーティング剤として製品化するには有害な有機溶剤に溶解して使用する必要があり、溶剤添加によりガラス化成分含有量が少なくなることのほか、塗装への悪影響や安全性・環境性を保全する設備コストがかかる影響が残っております。

    (参考) ガラスコーティングの比較
    http://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_12.html




    新しいガラスコーティング剤:低分子シラン・ガラスコーティングとは

    低分子シランはクロロシランを出発原料とし、ひとつの分子内に複数の有機官能基と加水分解性のアルコキシ基を同時に含有し、脱水架橋により非晶質(アモルファス)ガラス被膜を形成するものです。

    従来のシラノール基を有する高分子オルガノポリシロキサンとの違いは下記のとおりです。 


      • 塗装面や樹脂などの多種類の有機物と強力に化学結合する多官能基と、ガラスや金属など無機物と強力に化学結合する加水分解性アルコキシ基を併せ持つ。
      • 100%機能部化による低分子量液体が構成可能である(高濃度ガラス化成分含有、無溶剤化が可能)。
      • 揮発性のシラノール基を含有しないため保存性・安定性が高い。

      (参考)ハイブリッドコーティング ~新しい無機有機タイプ~







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