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2014-05-14

コーティング剤など引火性危険物の海外輸出について

ガラスコーティング剤を輸出する際に、引火点と沸点(初留点)に留意しなければなりません。

IATA(※1)では、液体の危険物を分類する基準として、国連GHS(※2)の引火性液体の分類基準に基づき、包装等級あるいは、容器等級を決めています。航空輸送に限らず海上輸送についても同様の法令などがあると考えられます。



(参考)危険物国際輸送における留意点 http://www.jetro.go.jp/world/japan/qa/export_04/04A-010148 ジェトロ・独立行政法人日本貿易振興機構ウェブサイト

※1.
IATA:国際航空運送協会(International Air Transport Association)
※2.
GHS:国際連合危険物輸送勧告、化学品の分類および表示に関する世界調和システム(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)


●国連GHS
2.6.2節に記載された分類基準は、以下のように要約される。

  •  区分1:引火点23℃未満および初留点(沸点)35℃以下
  •  区分2:引火点23℃未満および初留点(沸点)35℃超
  •  区分3:引火点23℃以上、60℃以下
  •  区分4:引火点60℃超、93℃以下
(参考)GHS分類マニュアル http://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/int/files/ghs/ghs_manual_new_set.pdf (経済産業省ウェブサイト)

●IATA
IATA DGR 表3.3.Aにおける包装等級あるいは容器等級(Packing Group)は以下のように分類される。

  • 包装等級(容器等級)Ⅰ:GHS「区分1」相当(High danger)
  • 包装等級(容器等級)Ⅱ:GHS「区分2」相当(Medium danger)
  • 包装等級(容器等級)Ⅲ:GHS「区分3」相当(Low danger)
(参考)http://www.jacis.or.jp/regulations.html (航空危険物安全輸送協会JACISウェブサイト)


輸出コスト
海外輸出をする際に、危険物に対応するコストが相応にかかるわけですが、このような国連GHSやIATAによる危険物の分類などが基準となり、運送料金などが決められるものと考えられます。


 

危険物としてのガラスコーティング剤
自動車ボディ用途のガラスコーティング剤で、初留点(沸点)35℃以下というものは考えにくいので、IATA包装等級Ⅰ(GHS区分1)に該当するものは、まず無いと思います。

焼酎やウイスキーなどの引火性成分であるエタノール(エチルアルコール)の場合は、引火点:13℃、沸点:80℃程度なのでIATA包装等級Ⅱになります。
ポリシラザン(基本構造:Si-NH)やポリシロキサン(基本構造:Si-OR)などのケイ素(Si)・シランを原料とする液体ガラスコーティング剤は、空気中の酸素(O)や水素(H)と結合してガス化し引火するわけです。


このため、ケイ素を主原料とする液体ガラスコーティング剤は、IATA包装等級Ⅱ(GHS区分2)または、包装等級Ⅲ(GHS区分3)に該当するものと考えられます。

ガラスコーティング剤には、ポリシラザンやポリシロキサンのほかに、上記のようなお酒にも含まれるエタノール(エチルアルコール)やキシレン・トルエンなどの有機溶剤が使用される場合があります。


これらの有機溶剤も総じて燃えやすいものですのです。このように、ガラス化する原料や溶剤とともにガラスコーティング剤は燃えやすく引火性危険物として分類されます。

(参考)溶剤の引火点や沸点など一覧表 http://www.kyowakako.com/pdf/list_of_solA4.pdf (協和化工株式会社さまウェブサイト)

ガラスコーティング剤輸出・運送時のトラブルを未然に防ぐためには、このように引火点や沸点などを点検して、運送会社さんへの正しい情報提示が必要となります。






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2014-05-02

ウォータースポット(イオンデポジット)除去にサンポール(塩酸)?

ウォータースポットの除去に、キンチョーさんのサンポールを使っても良いのか?とのご質問を複数頂戴しました。

サンポールとは、ご存知のように便器に付着した尿石汚れを洗浄する酸性洗剤です。尿石は人の尿に含まれる成分に由来するカルシウム塩(炭酸カルシウム)が固着・堆積したものです。

一方、
ウォータースポット(別名:イオンデポジット)原因のひとつとして、水道水や雨水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンが、水の蒸発によって炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムとなって堆積・固着したものがあります。

サンポールに含まれている「塩酸」は、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムを溶解しますので、上記のような原因によるウォータースポットの除去には有効であると考えます。

しかし、常温では気体である塩化水素の水溶液である塩酸は、揮発性が高いものです。塩酸から揮発した塩化水素は、鉄やステンレスなどの金属を腐食させます。

このため、サンポールが金属部分に付着しないようにウォータースポットを除去したつもりでも、サンポールが揮発してガス化した塩酸(塩化水素)が、金属のカタマリである自動車本体や、機能部品劣化への影響を与える(腐食を促進する)ことが懸念されますので、使用しない方が良いと考えます。





(参考)
洗車・コーティングと酸
イオンデポジット Ion Deposit

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2014-05-01

新しいガラスコーティング剤について

このところ、無機ガラスコーティングと塗装の密着について記事をアップしているためか、 

THエンゼルさんの「新しい低分子シランガラスコーティング剤の密着性はどうなの?」

というお問い合わせをいただいております。

(参考)
無機ガラスコーティングの耐久性 ~表面改質~
無機コーティングが密着する理由 ~アクアミカの場合~

コーティング剤は、常に自然の物理的化学的現象にしたがって被膜をつくり、被コーティング物=塗装に対して密着します。

各種ガラスコーティング剤が塗装表面に密着する仕組みをおさらいしながら、各種コーティング剤を検証してみます。

結論から申し上げますと、塗装表面(有機物)と、コーティング剤(弊社低分子シラン、パーヒドロポリシラザン、オルガノポリシロキサン)の密着性は下記のような整理となります。 

今回記事は、気合を入れて図も作成しましたので最後までおつきあいください(笑)。

いつものように結論から書きます。


機械的結合
低分子コーティングのほうが、高分子コーティングよりも投錨効果が高いと考えられます。
  • 低分子コーティング<強結合>
  • 高分子コーティング<弱結合>
    ※.ポリシラザン、オルガノポリシロキサンなど
化学的結合 
無機有機ハイブリッドコーティング剤のほうが、無機コーティング剤よりも、塗装表面との化学結合の密度が高いと考えられます。
  • 無機有機ハイブリッドコーティング剤<強結合>
  • 無機コーティング剤<弱結合>
このように、低分子でありかつ、無機有機ハイブリッドであるガラスコーティング剤の密着性が高い理由をくわしく見ていきたいと思います。
(参考)
ガラスコーティング種類と特質 ~特性・機能比較~ポリシラザンについて ~ガラスコーティング剤として~



コーティング剤が密着する仕組み


物質同士が密着(接着)する仕組みの代表的なものとして、「機械的結合」「化学的結合」「物理的結合」の三つの項目が挙げられます。
各項目ごとの塗装表面とコーティング剤が結合する仕組みは、下記のように考えられます。

1.機械的結合

塗装表面の微細な凹凸に液状コーティング剤が入り込み、コーティング剤が固まることによって結合=密着することです。

●低分子コーティング剤の機械的結合
~新しい低分子シラン~
低分子イメージ
図1.低分子イメージ

【図1.低分子イメージ 参照】 

弊社の低分子シランは、ガラス(Si-O結合)化成分の基本単位が低分子=分子量が小さいため、溶剤を全く添加しない状態でもさらさらとした粘度の低い液体です。



図2.低分子コーティングの機械的結合 参照】 

このため、固体化する前のガラス(Si-O結合)化成分の基本単位サイズが小さく、塗装表面の微細な凹凸にも入り込み、錨(いかり)を打ち込んだような「投錨効果=アンカー効果」結合を得ることで、塗装と低分子ガラスコーティングが強固に結合=密着します。


低分子コーティングの機械的結合
図2.低分子コーティングの機械的結合図


●高分子コーティング剤の機械的結合
~従来のポリシラザン、オルガノポリシロキサン~
高分子イメージ
図3.高分子イメージ

図3.高分子イメージ 参照
 
従来型の無機コーティングであるパーヒドロポリシラザンや、従来型の無機有機ハイブッリッドコーティングであるオルガノポリシロキサンは、ガラス(Si-O結合)化成分の基本単位が高分子=分子量が大きいため、高粘度でべたべたの液体です。 

【図4.高分子コーティングの機械的結合 参照

べたべたのままではガラスコーティング剤としては使用できないため、有機溶剤で希釈し「一見さらさらに近い液体」にします。

有機溶剤で希釈してもガラス化する基本単位は大きいままですから、高分子であるガラス(Si-O結合)化成分は、塗装表面の微細な凹凸には入り込めない場合があります。

このため、錨(いかり)を打ち込んだような「投錨効果=アンカー効果」が得られにくくなり、塗装と高分子ガラスコーティングの結合=密着が弱くなります。


高分子コーティングの機械的結合
図4.高分子コーティングの機械的結合




2.化学的結合(一次結合・原子間力)
塗装表面とコーティング剤との間で、原子間の化学結合(共有結合、イオン結合、金属結合など)することです。
有機無機ハイブリッドコーティングである弊社の低分子シランおよび、オルガノポリシロキサンと、無機コーティングであるポリシラザンとでは、有機物である塗装表面との結合=密着の仕組みが異なります。

●有機無機ハイブリッドコーティング剤の化学的結合
~低分子シランやオルガノポリシロキサン~

図5.無機有機ハイブリッドコーティングと塗装の結合 参照】 

有機無機ハイブリッドコーティングは、無機(ガラス状:Si-O構造)基本骨格に強固に連結した官能基※を、骨格の外側に配向している化合物です。

※.無機物や有機物と反応性をもつ原子団:アルコキシ基、メチル基、エポキシ基、フェニル基など

この各種官能基は、塗装や樹脂などの有機物と反応し、化学結合(赤〇部分)することにより、強い密着を得ることができます
図5.無機有機ハイブリッドコーティングと塗装の結合
記号説明
Si:ケイ素、O:酸素、Y:各種官能基、RO:各種官能基
COOH:カルボキシル基、OH:水酸基、有:各種有機物

●無機コーティング剤の化学的結合
~パーヒドロポリシラザンなど~

図6.無機コーティングと塗装の結合 参照

無機コーティングとは、基本的に無機(ガラス状:Si-O構造)の基本骨格のみをもち単純な化合物であるため、塗装や樹脂(プラスチック)などの有機物と反応することができません。

酸素(O)と有機物(有)は結合せず(青×部分)に、有機物表面にわずかにある水酸基(OH)やカルボキシル基(COOH)などと化学結合しますが、低密度であるため弱い結合となり、弱い密着しか得られません
無機コーティングと塗装の結合
図6.無機コーティングと塗装の結合
記号説明
Si:ケイ素、O:酸素
COOH:カルボキシル基、OH:水酸基、有:各種有機物

 3.物理的結合(二次結合・分子間力)
塗装表面とコーティング剤との間で、分子間の引き合う力(水素結合、ファン・デル・ワールス力)が働くことです。物理的結合力(分子間力)は、上記の化学的結合力(原子間力)に比較して非常に小さい(弱い)ので今回は割愛します。



無機コーティング剤と有機物(塗装)の密着性を高めるには

本来、無機物と有機物は反応しないため、そのままでは化学結合が弱く、密着力向上に寄与することはほとんどありません。

図7.無機-有機表面改質コーティング+無機コーティング 参照

無機コーティング剤と、塗装やプラスチック樹脂のような有機物をくっつけるには、「有機物表面を無機物に変化させる無機-有機表面改質剤」を先にコーティングする必要があります。

その上から、無機コーティング剤を(2階建て)施工することにより密着させることが可能になります。その仕組みは下図のようになります。この2階建て施工は、上記「図5.無機有機ハイブリッドコーティングと塗装の結合」とよく似ていることがわかります。
無機-有機表面改質コーティングと無機コーティング
図7.無機-有機表面改質コーティング+無機コーティング
記号説明
Si:ケイ素、O:酸素
COOH:カルボキシル基、OH:水酸基、有:各種有機物

【図8.無機物と無機コーティングの結合 参照】

参考として、無機物(半導体シリコンや金属など)に対して行われる無機コーティングの例として、半導体シリコン=純度の高い単結晶シリカ(Si)との反応(強結合する)を下図に示します。

このように、ポリシラザンなどの無機コーティング剤と無機物との密着性は、当たり前のことですが、強い密着を得ることができます。
図8.無機物と無機コーティングの結合
 記号説明
Si:ケイ素、O:酸素、OH:水酸基

そうですね。お気づきのように無機コーティング剤を塗装などの有機物と密着させる表面改質コーティング剤により2度にわたりコーティングするということは、無機有機ハイブリッドコーティングと似たようなことをしていることになります。


(まとめ)新しい無機有機ハイブリッドコーティング剤とは

無機有機ハイブリッド化とは、無機コーティング剤と表面改質コーティング剤を組み合わせた機能を包含する進化形なのです

従来の無機コーティング剤および、無機有機コーティング剤は高分子タイプでしたが、低分子化することで機械的結合を強化させることができ、更なるガラスコーティング剤として進化を遂げることができました。

(参考)
ハイブリッドコーティング ~新しい無機有機タイプ~


無機有機ハイブリッドガラスコーティングは、無機ガラスコーティングと比較して「無機物汚れ(ウォータースポット・イオンデポジット)の固着しにくい特徴があります」。
この理由については別の機会にお話させていただきます。


(参考)
コーティング剤の選び方 ~トップコートとして~
http://coating.th-angel.com/2015/03/blog-post_31.html

ハイブリッドコーティング ~トップコートとして~
http://coating.th-angel.com/2015/06/blog-post.html

ハイブリッドコーティング ~ベースコートとして~
http://coating.th-angel.com/2015/05/blog-post_12.html

新しい無機有機ハイブリッドコーティング
http://coating.th-angel.com/2014/12/blog-post.html

新しいガラスコーティング剤について
http://coating.th-angel.com/2014/05/blog-post.html

ガラスコーティングの比較
http://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_12.html


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