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2013-10-19

ポリシラザンについて ~ガラスコーティング剤として~

ポリシラザン系ガラスコーティング剤について、ご質問をいただくことがあります。

十数年前、初期の
車ボディ保護用ガラスコーティングとして普及したものが「ポリシラザン」です。ガラスコーティングのルーツとも言えるポリシラザンについて整理してみましょう。



ポリシラザンのルーツ

カーボディコーティング剤におけるポリシラザンは、パーヒドロポリシラザンまたは、ペルヒドロポリシラザン(PHPS:Perhydropolysilazane)などと呼ばれているようです。これは、もともと半導体シリコンウェハを製造する際に、シリコンウェハ表面を疎水性に改質することで、水分除去やフォトレジストの密着を高めるプライマー用途として広まった表面処理剤です。


ポリシラザンとは

ポリシラザンは、シランの一種で、ケイ素=シリコン(Si)・窒素(N)・活性水素基と化学結合する反応基を持つ化合物です。

ポリシラザンは、空気中の水分と反応してシリル基が導入され、塩基性のアンモニアを発生させながら、縮合してSiO2のガラス状被膜(非晶質=結晶ではない)を形成するものです。

ポリシラザンは、比較的高分子量ポリマーであるため、ガラスコーティング剤として使用する場合、大量の有機溶剤に溶かし込んで使用する必要があります。

ポリシラザンには大きく分けて、
「パーヒドロ-ポリシラザン」と「オルガノ-ポリシラザン」があります。

パーヒドロポリシラザンは無機被膜を形成します。この無機被膜タイプは古くから商品化されていますが、さらに被膜性能を高め、高機能化させた無機有機ハイブリッド被膜を形成するオルガノポリシラザンも考えられます。

しかし、ポリシラザンの縮合反応が急激であり取扱がしにくいため、オルガノポリシラザンは実用商品化がなされていません。


※.アルキルシラン類は、アルキル基と無機材料あるいは有機材料などの活性水素基と化学結合を持つ、クロロシラン、シラザン、アルコキシシランの化合物です。



ポリシラザンを原料とするガラスコーティング剤として

ガラスコーティング剤としてポリシラザンを原料とする場合は、ほとんどが溶剤であり、ガラス化するケイ素(Si)の含有量が非常に少なくなります。仮に溶剤で薄めないと、ペンキなどの塗料と同様にベタベタで、きれいに塗布することができません。

ポリシラザンは反応性が急激であり制御が困難であるため、手塗りではきれいに仕上げることがほぼ不可能です。必然的にスプレーガンで噴霧・塗布する必要があり、塗布作業が煩雑かつ熟練を要することと、気化した引火性の有害な有機溶剤排気など設備コストや作業コストへの影響が大きくなります。


ポリシラザンは、水酸基(ヒドロキシ基:-OH)と反応して硬化するためアルコールや水などの安全性の高い溶剤を使用することができず、キシレンやトルエン、ミネラルターベンなどいわゆるシンナー類を溶剤とする必要があります。

キシレンやトルエンなどは有機溶剤であり、人体や地球環境に対して有害であるばかりではなく、塗装にもダメージを与える可能性があります。現在は地球環境負荷を低減させるため、自動車塗装でも低VOC(低揮発性有機化合物)化が進められております。


ポリシラザンは被膜の硬度(硬さ)が高いために非常にもろく、膜厚を極限までに薄くする必要があります。実際には1μm以下の非常に薄い膜でないとクラックが発生し、コーティング被膜自体の細かいひび割れのため、被膜自体が濁ってしまいます。

ガラスコーティングの硬度については下記をご覧ください。


    膜厚が1μm以下では、犠牲被膜として細かなキズにも耐えきれるのか疑問が残るところもあります。

    以上のように、クリーンルームなど環境の整った半導体工場の中での一時的なコーティング剤としてはポリシラザンは優れたものでした。

    ポリシラザンを応用した十数年~二十年前、当時の自動車ボディ用途のガラスコーティング剤は、ポリシラザン以外には選択肢もなく、パイオニア的な原料としてポリシラザンが応用され、当時としては画期的なガラス状被膜を形成するものとして普及したものです。


    パーヒドロポリシラザン:PHPSは、無機ガラス被膜を形成し、表面は親水性の水酸基に覆われるため、車用コーティングとしては、無機物汚れ(ウォータースポット・イオンデポジット)が固着しやすく、親水性表面を一時的に発現しますが、すぐに撥水化してしまう欠点があります。



    ポリシラザンに代わるガラスコーティング

    現在では、ポリシラザンでは実用商品化できなかった、高機能化:無機有機ハイブリッド化が実現できるアルキルシラン系の高機能・高性能ガラスコーティング剤が多種類開発されております。

    毒性の少ないアルコール系溶剤を使用できるようにした「オルガノポリシロキサン」や、さらに低分子化してサラサラの液体とし、反応性を制御することで取扱いがしやすく、クラックが発生しないように硬度を調整できるもの「低分子シラン」があります。

    これらの新しいタイプのガラスコーティング剤:低分子シランは、高度な生産技術により、溶剤を全く使用しない「無溶剤化」した、つまりガラス化成分ケイ素(Si)の濃度を極限まで高め、さらに分子構造を最適化することで、膜厚を厚膜化したり無機物汚れとなるウォータースポット(イオンデポジット)の固着を低減する分子配向を制御(官能基で分子末端を封鎖)したものが、開発・商品化されております。
     

     弊社が採用している新世代・低分子シランによる
    をご覧ください。

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