2014-02-18

コーティング硬度について

ガラスコーティングなどコーティングの硬度に意味があるのか?というご質問をいただくことがあります。


その際にお客さまから、下記の「例1.豆腐に貼った金箔VS箸」のようなたとえ話をお聞きしました。


例1.豆腐に貼った金箔 VS お箸

比較的柔らかい塗装の上に、比較的硬いコーティングをしても柔らかい塗装の硬度が支配的になるのではないのか?
「例えば、柔らかい豆腐に貼り付けた硬い金箔は簡単にお箸で窪みや傷が付けられるではないのか」

一見すると確かにこの例では、そういうこともあるなー?!と考えさせられます。しかし、
人間が操作するお箸のパワーに対する豆腐や金箔の例が適正なのでしょうか?



スケールが滅茶苦茶にかけ離れているような気がします。その他の例でその考え方の極端さを考えてみましょう。


例2.土壌に舗装したアスファルト VS スコップまたはパワーショベル

例えば、舗装道路を見てください。柔らかい土の上に舗装した硬いアスファルト舗装に対してスコップを使って人力で掘り返す場合、アスファルト表面に多少の傷は付けられるでしょうが、掘り返すのはものすごい労力が必要ですね。
スコップの代わりに、強力なパワーショベルを使うとどうでしょうか?
土に対するアスファルトによるコーティング(舗装)は、スコップにはすごい強さを発揮しますし、大型のパワーショベルにはひとたまりもありません。

このように、スケール感が違い過ぎて果たして、豆腐と金箔のたとえ話が適当なのかさっぱりわかりません。
というのが正直な感想です。

そこで、ボディコーティングに対してもう少しスケール感が近くて、身近な例題を考えてみたいと思います。


アルミ鍋のアルマイト処理

アルミニウムは手に入りやすく安価な材料で加工がしやすいので、台所にある鍋ややかんの材料として一般的ですね。

このアルミはそのままの状態で鍋として使用しますと、アルミは柔らかいので傷つきやすく、細かい傷がつくとその隙間に入った食材が洗い流しにくくなり、雑菌が発生しやすくなるとか、アルカリや塩による腐食の進行が早いなど、鍋の機能性として不都合な場合があります。

そのようなアルミ鍋の機能性を改善する表面処理方法として、アルマイト処理があります。アルミの表面に数μm程度以上の酸化被膜をコーティング状に処理するわけですが、この薄い被膜により地金のアルミ鍋よりも格段に使いやすくなるのです。

その理由は、
柔らかいアルミの表面に硬く滑らかなアルマイト表面処理をすることで傷がつきにくくなります。同時に食品に含まれるアルカリや塩、酸による腐食から守ります。


このような効果により、アルミ鍋は美しく、洗浄が楽で清潔な状態を保ち続けることができるのです。


自動車ボディの場合

自動車ボディは金属を使用するのが一般的ですので、地金のままですと腐食(錆)が発生し、見た目も金属色のままでいぶした感じになり、それがが良いと言う方は限られるでしょう。

自動車ボディは、一部の競技自動車などにはアルミボディもあるようですが、ほとんどの場合は「鉄」でできていますね。ですから上記のようなアルマイト処理は自動車ボディにはできません。

鉄の場合は金属メッキ処理も可能性としては考えられますが、美しく滑らかに仕上げるにはコストがとても高くなりますし、ピッカピカ金属色になるのでこれも好みが別れるところです。金属メッキだけでは結局腐食の問題があるので、透明のクリア塗装などの上塗りが必要になると思われます。


塗装による保護

そこでコストパフォーマンスが良くて、色合いなどさまざまな趣味嗜好に対応できる塗装が施されているわけです。塗装はそのままでも美しさを保持しながら、擦過や摩耗による傷つきや、金属(鉄)の腐食を防いでくれます。

自動車は新車であれば、言うまでもなく百万円以上もする高価な買いものですし、そのユーザーのライフスタイルを強く反映したデザイン性や趣味性をもち、しっかりとした中古車市場もあるため、再販価値も重要なものであります。

そのため、屋外で使用することによる日光・風雨や大気汚染、泥はね海水被りなどに加えて洗車などの、様々な外的な傷つきや腐食・劣化から守ることが重要なわけです。自動車の使用形態やライフサイクルと製造コストや商品価値などを考慮して、各自動車メーカーはそれぞれの考え方を反映した塗装を施しています。

そういった意味では塗装が防護の役割を担っているわけですが、一旦腐食劣化したり細かい傷がつきますと、塗装を部分的に補修することは色合わせなど大変厄介です。


全体的な劣化に至っては、全塗装という大がかりで高コストな改修が必要になりますし、全塗装の場合は、自動車工場から出荷されたような塗装品質に仕上げることは大変に困難です。



高硬度ガラスコーティングの意味

このように、塗装の状態は使用中の自動車の価値を左右するものであるため、美観を維持しながら保護をすることを、維持コストを抑えつつ守って行く必要性が高いわけです。

塗装の部分補修や全塗装をできるだけ回避しつつ、比較的柔らかい塗装(鉛筆硬度2H~4H程度)をガラスコーティングなどの比較的硬い被膜(5H~9H程度)で、摩耗や微細な傷から守ることは、メンテナンス性やコストパフォーマンスの点からバランスの良い選択であると言えるのではないでしょうか。

コーティング剤を開発製造する立場からは、高硬度コーティングを選択する際には、下記の点をご注意いただきたく存じます。


(参考)ガラスコーティング【モース硬度7】の不思議 http://coating.th-angel.com/2014/02/blog-post_17.html

(参考) ガラスコーティング剤におけるクリスタル/クオーツやダイヤモンドとは http://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_29.html


硬度とクラック

硬度が硬いほど良いと言われるガラスコーティング商品やサービスがありますが、ガラスコーティングは化学合成品であるため、被膜の硬さが増すほどに脆く壊れやすくなり、「クラック」と呼ばれる微細なひび割れ損傷が発生しやすくなります。

クラックは硬化の過程や使用中の物理的化学的刺激などより発生し、見た目の「クスミ・濁り」になったり、「被膜が剥がれ落ちやすくなる」ことの弊害の原因になります。

施工店さんの現場で作ることができるガラスコーティング(非晶質ガラス)は、鉛筆硬度9H程度が最高硬度となりますが、コップや窓ガラスなどの厚みのあるものと比べて、ミクロン(μm)単位の被膜では硬さゆえの脆さの影響が大きくなります。


クラック発生を回避するためには、少し粘り気を持たせる必要があり、6H~8H程度の硬度が最適であると考えます。


膜厚と硬度

膜厚はある程度厚い方が良いと思います。しかし硬度が同じ場合被膜が厚くなるほどクラックが発生しやすくなりますので、上記のような若干の粘り気のある6H~8H程度のガラスコーティングでは2~4μm前後の膜厚が、微細な傷からの保護という意味でもバランスが良いのではないかと考えます。

硬度が同じ場合は、膜厚が厚くなるほどクラックが発生しやすくなるため、硬度9H程度のガラスコーティングでは0.5μm~1μm程度の薄い膜にしないと、クラックの発生が問題になります。


このように余りにも薄い被膜では、摩耗や微細傷も塗装まで達してしまう可能性が高まります。




(参考)ガラスコーティングの耐久性と光沢 ~膜厚と多層化リスク~http://coating.th-angel.com/2014/09/blog-post_14.html


(参考)自動車工業会ウェブ http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/jamagazine_pdf/201503.pdf によりますと、自動車ボディ塗装のもっとも外側の塗装被膜(上塗り)の膜厚はおおむね30μm~40μmとなっています。



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