2014-02-17

ガラスコーティング【モース硬度7】の不思議

ご存知のように、特にガラスコーティングでは「被膜の硬度」にこだわった商品化がなされています。今回の降雪を機会に、コーティングにおける硬度について考えてみたいと思います。


ガリガリの雪って硬そう

弊社事業所は、工場・営業とも栃木県小山市にあります。ここは栃木県では最も南部地域であり、埼玉県や茨城県・群馬県境地域でもあります。観光地で有名な日光や那須は栃木県北部になります。

恐らく関東以外の方は、東京よりも栃木南部の方が降雪が多いと思われるかもしれませんが、住んでいる実感としては案外そうでもなくて、この辺りは晴れの日が多く、雪が降っても東京の方が雪になったり積雪量も多いような気がします(東京よりも圧倒的に寒いですが・・・)。



しかし、先週金曜から土曜にかけての雪の量はタマゲマシタ。それどころではない地域もたくさんあって、大変な目に合われている方々には早く日常に戻られるように願っております。

そんな中、降雪中の金曜日夕刻にクルマで出かける用事があり、クルマに降り積もった雪を掻いておりました。そのときにふと思ったのですが、氷って結構硬いですよね。ソチオリンピックでスキーやスノボ、アイススケート競技でゲレンデやリンクのコンディションの解説でも、雪や氷の硬さが話題になっています。



氷の硬度

雪って氷の結晶だと思うのですが、氷の硬さっていったいどのくらいなのでしょうか?硬くざらざらした車の雪を掻きながら、塗装表面をガサガサと擦っているように思ったのです。

そこで、ネットで調べてみたらこんなサイト
http://academic.emporia.edu/aberjame/ice/lec02/lec2.htm がありました。米国カンザス州のエンポリア州立大学の教授:ジェームス S.アベールさんによる地質学のページでは、氷のモース硬度は温度によって変化するようです。0℃ではモース硬度1.5、-70℃ではモース硬度6に達するそうです。




モース硬度とは

モース硬度2は、鉱物である「石膏」の硬さと同程度で「指の爪で何とか傷をつけることができる」とあり、モース硬度6は、鉱物「正長石」の硬さと同程度で「ナイフで傷をつけることができず、刃が傷む」とありますから、相当硬いわけです。ちなみに天然の結晶ガラスである水晶=「石英(SiO2)」は、モース硬度7で、「ダイヤモンド」はモース硬度10です。

Wikipediaによりますと、人の爪のモース硬度は約2.5、
ガラス(非晶質)は約5、ナイフの刃先は約5.5だそうです。


モース硬度は、代表的な鉱石を引っ掻いた時の傷つきにくさを表すための尺度ですから、モース硬度の数字と傷つきにくさは比例していないということです。

モース硬度は本来鉱石の種類を分類する尺度のため、段階と硬度に比例関係はなく、測定する方法も大変に曖昧な状況です。

このため、地質学や鉱物関係外の塗装やコーティングなどの表面硬度の尺度としては、JIS化されている下記の鉛筆硬度の方が適しています。


鉛筆硬度とは

コーティングや塗装業界で使用される尺度に、鉛筆硬度があります。

鉛筆硬度とは文字通り、鉛筆の芯の硬さを表す「B」や「H」といったあの表示に由来します。表面を3Hの鉛筆で引っ掻いて傷がつくかどうかを試験した結果で、鉛筆硬度3Hとか9Hなどと表現されます。

鉛筆硬度試験方法は日本工業規格(JIS K 5600)で規定されています。JISのおすすめは、三菱さんの高級鉛筆「ユニ」なのだそうです。


自動車塗装表面は、鉛筆硬度2H~4H程度と言われており、日本国内においては、上記のように鉛筆の芯を基準にした傷つき方を尺度にしています。




ガラスコーティング「モース硬度7」の不思議

コーティング業界においては、モース硬度7のガラスコーティングをうたっているものも見受けられますね。

ガラスよりも2段階も硬い、モース硬度7とはナイフの刃先でも傷つかないってことでしょうか。
それはどういうものなんでしょうか?

たぶん、「モース硬度7のガラスコーティング」は何かの間違いだと思われます。


何故そのようになったのかを推理してみますと、


  1. 天然石英(SiO2)=水晶(結晶ガラス)のモース硬度が7だからなのか。
  2. 半導体ウェハの高純度(イレブンナイン:99.999999999%結晶シリコンのモース硬度が7だからなのか。
  3. 鉛筆硬度7Hとするべきところを、モース硬度7と誤解したのか。

何れかではないかと思われます。

(参考)シリコーン?シリコンではないの 
http://coating.th-angel.com/2013/09/blog-post_5152.html


以前も触れましたが、
ガラスコーティングは、シリカ:SiO2による結晶ではない非晶質ガラス状被膜(モース硬度は5)です。


結晶のガラスコーティング(モース硬度7)はありません。

なぜならば人工的にガラスを結晶化(人工水晶化)させるには、塗装の表面で硬化したガラス被膜を、さらに数百℃~一千℃以上の高温過熱を連続的におこなう必要があるからです。車が燃えるか溶けてしまいます(笑)。

(参考)人工水晶:モース硬度7の人工水晶製造法を説明した東京電波株式会社さんのページ 
http://www.tew.co.jp/products/quartz/synthetic/index.html


(参考)ガラスコーティングは結晶なの? 
http://coating.th-angel.com/2014/01/blog-post_30.html


(参考)ガラスコーティング剤におけるクリスタル/クォーツやダイヤモンドとは http://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_29.html

地中において高温度・高圧力の中で、ケイ素(Si)と酸素(O)から自然に生成された
「天然水晶すなわち石英(結晶化SiO2)」がモース硬度7ですから、「ガラス化したコーティング被膜も同程度の硬度ではないか?」という、誤った思い込みによるもののような気がします。


「常温硬化させることができるゾル・ゲル法によるガラス被膜の硬度」は、最高で鉛筆硬度7H~9Hが可能です。これは非晶質ガラス相当の硬度ですから、まったく理にかなっています。


鉛筆硬度とモース硬度は単純に比較することができず、また、換算した資料はありませんので比較するネタは見たことがありません。

10Hの三菱uni鉛筆の芯は、100円ショップのナイフ(モース硬度5.5)でも削れます(笑)。

モース硬度7と、鉛筆硬度7Hとはまったくちがいます。

「モース硬度7のガラスコーティング」って、いったいどんなものなのでしょうか???わかる方がいらっしゃいましたら、ご教示をお願いいたします。



雪(氷)と塗装の傷つき

上記「氷の硬度」のように、氷の硬度は温度によって変化します。つまり寒く冷たいほど氷は硬くなっていきます。ですから寒いほど塗装も傷つきやすくなると考えられますね。

しかし、ソチオリンピックでのスキー・スノボやスケート競技をみていますと、スキーの板やスケートの歯は、よーく滑っていますね。これは板や歯と雪や氷の接触面で瞬間的に溶けて、水の薄い膜ができるために抵抗が少なくなって滑っているわけです。


このような状態、すなわち軽く撫ぜただけでスーと雪が落ちるようでしたら、傷つきのリスクは少ないと考えられますが、付着した雪が一旦解けて再び凍ったように、バリバリに固着している場合は無理やり擦ったりすると、氷は硬いので傷が付きやすくなるのではないでしょうか?


言うまでもなく雪や氷が固着した場合は、決して無理して掻き落とすのではなく、エンジンをかけて暖房を最大にして、クルマ全体を暖めることによって、表面に水の膜を発生させて滑るように落とすのがいいですね。


それと、コーティングをしておくことによって、できるだけ表面を滑らかに(平滑化)しておくと、雪を滑らせること(滑雪)の助けになると考えられます。またガラスコーティングのように硬い被膜が表面を覆っていると、傷つきの耐力が向上すると考えられます。


もうひとつガラスコーティングは、塗装を微細な傷つきをガラスコーティングが引き受けてくれる効果も期待されます。
微細な傷つきに対しては、シリコーンレジンコーティングなどにより表面を平滑化するか、程度によってはガラスコーティング施工店で補修をしてもらってください。塗装を守ることがコーティングの大きな役割です。





(参考)ガラスコーティングの硬度について http://coating.th-angel.com/2014/02/blog-post_18.html
(参考) SiO4だから硬い無機ガラスコーティングとは http://coating.th-angel.com/2014/04/sio4.html
(参考)ガラスコーティングの耐久性と光沢 ~膜厚と多層化リスク~ http://coating.th-angel.com/2014/09/blog-post_14.html
(参考)アルコキシシロキサンとアルコキシシランhttp://coating.th-angel.com/2016/11/blog-post.html


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