2014-12-12

撥水コーティングについて

撥水コーティングにおける撥水性の意味・仕組みや、特徴・機能性などについてまとめてみました。

●撥水性とは

  • 撥水とは、文字通り水をはじくことを意味します。
  • 撥水と疎水は、水をはじくという意味では同じことです。
  • 撥水は水をはじく現象や様子を表し、疎水は水となじみにくい性質を表します。
  • つまり、水になじみ難い表面は疎水性を持った表面であり、疎水性表面は同時に水をはじく撥水性の表面でもあります。
  • 車のコーティングの場合は、撥水と疎水を若干異なったニュアンスであることがあります。例としては、水がコロコロと球状になり非常に良くはじく場合は「撥水性」と呼び、水が球状ではなく少し広がったようにはじく場合は「疎水性」や「滑水性」と呼ぶようです。


●撥水の定義

  • 撥水状態であることの定義としては、水の接触角により、車のコーティング業界では概ね下記のように言われているようです。


【水の接触角】
  • 180~120°程度:超撥水
  • 120~90°程度 :高撥水
  • 90~40°程度  :低撥水、疎水、滑水など
  • 40~1°程度   :親水


●撥水の仕組み

  • 撥水の仕組みを大別するとふたつに分類されます。ひとつ目は水よりも表面の表面張力(表面自由エネルギー)のが小さいほどよく撥水します。
  • フッ素は地球上の物質で最も電気陰性度が高いため、その化合物であるフッ素樹脂は表面張力が小さくなり、水はもちろんのこと、油をもはじくものもあります。
  • 水の接触角150°以上の超撥水性や、120°を超える撥水性表面 は、植物のハスやイモの葉の表面にように、規則的に配列された細かな凹凸表面でないと実現できません。
  • 水の接触角120°を超える撥水表面は、細かな凹凸が必要であるため、透明性の高い光沢のある表面では実現できていません。また、布などで凹凸表面を拭きますと、細かな凹凸が壊れて撥水性が落ちてしまいます。


表面張力(表面自由エネルギー)単位 [mN/m]
--------------------------------------
水:73
油:25~30程度(石油・鉱油)
--------------------------------------
S1.シリコーン樹脂:16~30程度

F1.フッ素樹脂1:18程度(PTFE、フライパンなど)
F2.フッ素樹脂2:10~25程度(フッ素樹脂+シリコーンコーティング)
F3.フッ素樹脂3:6(CF3、実験室レベルでの最小値)
--------------------------------------
(参考)水の接触角はおよそ下記のようになります。
S1.シリコーン樹脂:110~90°
F1.フッ素樹脂1(PTFE):114°程度
F2.フッ素樹脂2(フッ素樹脂+シリコーンコーティング):>115°~100°
F3.フッ素樹脂3(CF3):120°


●撥水性コーティングの特徴と機能性

  • 水に含まれた水溶性の汚れ物質は、撥水性をもつ表面でははじかれます。さらに、撥油性まで持つ表面は、油性の汚れ物質もはじく能力をもっています。
  • 撥水性コーティングは、汚れにくく汚れが固着しにくい表面となります。
  • 撥水性と撥油性を両立しているコーティングの表面は、更に汚れ難くいです。
  • 撥水表面はコーティングの持続を確認することが容易です。

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2014-12-05

新しい無機有機ハイブリッドコーティング

ガラスコーティングの基本的な成り立ちとして、大きく分類しますと下記の2種類があります。
 

  1. 無機コーティング
    代表例として、高分子タイプのポリシラザン:Perhydropolysilazaneを原料としたものがある。
  2. 無機有機ハイブリッドコーティング
    代表例として、オルガノポリシロキサン/ポリオルガノシロキサン:Polyorganosiloxanを原料としたものがある。
    古くは高分子タイプがあったが、現在は溶剤を必要としない低分子タイプの2種類がある。


 お客さまとさまざまな会話をする中で、無機や有機の構造的な話のほかに、特徴や機能性や用途の違いはどのようになっているのか?ということを問われることがあります。

以前、構造的なことについてまとめましたので、下記記事を合わせてご覧ください。

ガラスコーティングの比較http://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_12.html


無機ガラスコーティングとは

<無機ガラスは、単純な二酸化ケイ素(SiO2)化合物を意味することが多い>
  • 高分子化合物である
    クロロシランを出発原料とし、脱アンモニア架橋により非晶質(アモルファス=結晶構造を持たない)ガラス被膜を形成する高分子化合物である。

    無機ガラス被膜を形成するガラスコーティングの例としてポリシラザン:Perhydropolysilazane)を原料としたものがある。

    無機ポリシラザンを改良した無機・有機ハイブリッド化は、技術的には可能であるが、反応性が急激であるなどの理由から、実用的な意味で無機・有機ハイブリッド化を目指すものは事実上見当たらない。

    (無機有機ポリシラザン/オルガノポリシラザン:Organopolysilazanes)
  • 有機物(塗装など)への密着性が劣る
    単純な無機ガラス被膜を形成するこのタイプは、元来おもに半導体製造においてシリコンウェハ(無機物)への一時的な表面改質剤として使用されているものを、車塗装用コーティング剤として二十年以上前に流用したものである。

    無機ガラス被膜は本来の用途である無機物への密着性は高いが、塗装などの有機物への密着性が不十分であることから耐久性(密着性)に劣る欠点がある。
  • 有害な有機溶剤が不可欠である
    高分子化合物であるため、ガラスコーティング剤として使用するには、大量のキシレン・トルエン・ターベンなどの芳香族有機溶剤(通称シンナー)に溶かし込んで使用する必要がある。

    このためガラス化成分量がごくわずかであり膜厚が極端に薄くなる。

    使用する芳香族有機溶剤:シンナーは、塗装を溶解し塗装に悪影響を及ぼす恐れや、人体および地球環境に対しても毒性・有害性がある。
  • 施工性や機能性に劣る
    → 品質の維持・コストダウンが困難である。
  1. 硬化時の脱アンモニア反応が急激に進行し、硬化反応を制御できないため施工性が悪い。
  2. 被膜硬度や柔軟性を制御できないため、膜厚が極端に薄くなり耐久性・耐傷性が劣る。
  3. 被膜が単純な分子構造であるため、撥水や防汚など機能性を付与することができない。
  4. 単純な無機物被膜であるため、シリカスケール(無機物汚れ)などのウォータースポットが固着しやすく除去が困難になりやすい。
  5. 塗装など有機物への密着性を高めるためには、下地処理としてシリコーンカップリング剤によってコーティングを行う必要がある。
  6. 撥水性を付与したり、無機汚れ(ウォータースポット)固着を抑制する機能を付与するためには、無機・有機ハイブリッドによるトップコートを行う必要がある。
  7. 上記のように反応が急激で作業難易度が高いこと、下地処理→無機ガラスコーティング→トップコートと、多層化による作業が複雑であることから、作業失敗リスクが高く、高品質を維持することが難しく、作業コストアップにつながる。
(参考)
無機ガラスコーティングは温度変化に弱い
http://coating.th-angel.com/2015/02/blog-post_22.html


 

無機有機ハイブリッドコーティングとは

<無機有機ハイブリッドガラスは、二酸化ケイ素(SiO2)と有機官能基を結合(クロスカップリング)した化合物の総称>
  • 高分子タイプと低分子タイプがある
    クロロシランを出発原料とし、脱アルコール架橋により非晶質(アモルファス=結晶構造を持たない)ガラス被膜を形成する高分子化合物がある。

    最近になって保存性や安定性を高め、多官能性(多機能性)を付与することができる低分子タイプ(低分子シラン)が実用化されている。低分子タイプはガラスコーティング剤として、溶剤を一切添加しない高濃度ガラス化成分を含有する無溶剤化ができる。

    特に低分子シラン原料は、日本独自※の研究開発などにより、日本の世界的なシェアが高い。

    ※.低分子シランの基本技術であるクロスカップリング分野では、根岸英一(米パデュー大 特別教授)、鈴木章 (北海道大学 名誉教授)による2010年ノーベル化学賞のように、日本が伝統的に強い分野となっている。
  • 有機物(塗装)への密着性が高い
    無機ガラス(SiO2)基本骨格と、有機官能基による無機・有機ハイブリッド構造であるため、一液のみで塗装への密着性を高め、結合密度の高いガラス被膜を形成できる。
  • 機能性・耐久性・作業性を高めることができる
    無機・有機ハイブリッド構造であり、有機官能基の配向を制御することができるため、上記のような有機物(塗装)への密着性を高めたり、ガラスコーティング表面の撥水性や防汚性などを付与することができる。

    同時に反応性・硬度や柔軟性を制御することができるため、硬化時間・作業時間の最適化、膜厚や被膜硬度や柔軟性の最適化ができるため、作業性や被膜耐久性を向上させることができる。
  • 溶剤を一切使用しない無溶剤化ができる
    旧来からある高分子タイプの無機有機ハイブリッドガラスコーティングは、ガラスコーティング剤として芳香族の有機溶剤に溶解して使用する必要があった。

    これに対して新しい低分子タイプは、溶剤を一切使用せずに高品質のガラスコーティング剤を提供することができる。

    溶剤化によって、リッチ(厚膜化・高光沢・高耐久)なガラスコーティングができるだけでなく、塗装や人体・地球環境に対して安全でかつ、容易な作業にて行うことができるようになり、施工コストダウンと機能や性能向上ができるようになる。

    低分子タイプは、無溶剤だけでなく、アルコール系溶剤を使用することができるため、安全性や環境性を保ったままで液剤コストダウンやレベリング性向上が可能である。
  • 施工性や機能性が高まる
    → 高品質・低コスト化ができる。
  1. 脱アルコール・脱水反応による硬化であるため、硬化速度がマイルドであり添加剤によって硬化時間を制御できるため施工性が高い。
  2. ・被膜の硬度や柔軟性を制御でき、膜厚が最適化できるため耐傷性を向上することができる。このため硬いだけではなく、粘り気も兼ね備えた強靭な被膜を形成できる。
  3. 表面に有機官能基を配向することにより、シリカスケール(無機物汚れ)などのウォータースポットが固着を遅らせることができ、早めの除去により無機汚れの定着を防ぐことができる。
  4. 塗装など有機物との密着を高める有機官能基と、強くて劣化しにくい無機ガラス骨格によって、撥水性や防汚性を高める有機官能基のハイブリッド構造であるため、一液で万能性の高い高品質な被膜が簡単にできる。
  5. 液剤価格の適正化や施工性を高めることにより、総合的なコストダウンと作業の高品質化が両立可能となる。

 

弊社では、無機有機ハイブリッドコーティングの中でも、新しい低分子タイプを中心に開発製造をおこなっております。カーディテイリング事業者さまや、コーティング剤の卸売・小売事業者さまはお気軽にご相談ください。

ガラスコーティング剤は、下記の理由により一般のお客さまには販売しておりません。大変申し訳ありませんがご理解いただきたく、よろしくお願い申し上げます。

ガラスコーティング剤の一般販売についてhttp://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_27.html


(参考)
コーティング剤の選び方 ~トップコートとして~
http://coating.th-angel.com/2015/03/blog-post_31.html

ハイブリッドコーティング ~トップコートとして~http://coating.th-angel.com/2015/06/blog-post.html

ハイブリッドコーティング ~ベースコートとして~
http://coating.th-angel.com/2015/05/blog-post_12.html

新しい無機有機ハイブリッドコーティング
http://coating.th-angel.com/2014/12/blog-post.html

新しいガラスコーティング剤について
http://coating.th-angel.com/2014/05/blog-post.html

ガラスコーティングの比較
http://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_12.html




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2014-11-15

塗装工場では・・・ コーティング剤の取扱

以前より、複数のお客さまから、
「塗装工場でコーティング剤を施工した場合、塗装の定着に影響があるのか?」や、
「再塗装後のコーティングはできるのか?」 
というご質問をいただいております。

先日も同様のご質問をいただきましたので、弊社の考え方をご案内いたします。


コーティング作業と塗装作業を同時並行しておこなう

コーティング作業と、塗装作業を同時並列的に行われて、飛散したコーティング剤が干渉するのではないかとの懸念でしたら、塗装ブースが隔離されている場合は問題ないでしょう。

隔離されていなくて干渉が心配な場合は、塗装前にはコーティング剤をを使用せずに、塗装作業終了後にコーティング剤を使用していただければ、心配ないのではないしょうか?

おそらく、シリコーンの表面自由エネルギーが小さいから、飛散したシリコーン成分が影響して、塗装の乗りが悪くなるのかもしれない?というご心配でしたら、塗装前には入念に脱脂などの洗浄作業をされるはずです。

仮に微量のシリコーンが残存したとしても、塗料に含まれる有機溶剤(芳香族系溶剤:トルエン、キシレンなどいわゆるシンナー類)を使用する塗装の場合は、シリコーンはきれいに溶解するので、問題になるとは考えにくいです。


再塗装後のコーティング

再塗装などをおこなった後に、コーティングをすると言う意味でしたら、何ら問題ないと思いますが、塗装仕立ての塗装が柔らかい状態だから、と言う意味でしたら、塗装直後であり、コーティング前の研磨は必要ないと考えれば、溶剤を使用していない無溶剤のガラスコーティング剤や、水性のコーティング剤を用いれば問題はないと考えます。

とにかく、再塗装直後は柔らかくて心配ということであれば、硬くなるまで時間を置いてからのほうが良いように思われます。何れにしても再塗装の場合は、試験をしてお確かめください。


何れにしましてもこの件に関しては、あいまいなご質問が多いようです。

具体的なご懸念をお伝えいただいた方が、精度の高い返信ができると考えますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。



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2014-11-14

ガラスコーティングを補うコーティング剤 ~メンテナンス剤として~

カーディテイリングショップやカーディーラーなどで、ガラスコーティングを施工されたお客さまより、普段のお手入れに使えるコーティング剤はありませんか?との問い合わせをいただくことがあります。

弊社では下記のような理由により、シリコーンレジンによるコーティングをオススメしております。そのポイントは、下記の3項目を挙げさせていただきます。

1.ガラスコーティングの無機汚れ固着を防ぐ
2.ガラスコーティングの防汚性(撥水性)を補う
3.ガラスコーティングの美観を補う


【シリコーンレジンコーティングとは】

一般ユーザーさま向けに市販されているものや、業務用・プロ用として流通しているほとんどのコーティング剤にはシリコーンが主原料として使用されています。これらは「シリコーンオイル」を使用しています。このシリコーンオイルは、原料価格がこなれていることや、製造が比較的容易なこと、機能性や性能面のバランスがとれている理由から広く使われています。

一方、弊社がオススメしている「シリコーンレジン」を原料としたコーティング剤は、シリコーンオイルよりも、ガラス質の基本構造の結合密度が高いものとなっております。この高い結合密度が、被膜の耐久性や持続性を維持するために重要となります。

シリコーンレジンはシリコーンオイルよりも、コーティング剤原料として機能性や性能面で優れている点が多いのですが課題もあります。その課題とは、コーティング剤としての製造技術や、原料や製造コストの面でハードルが高いものとなってしまうことです。

弊社では、シリコーンレジンを高濃度配合できるようにするため、品質を安定化させる製造プロセスの最適化を図ることで、車用としてこれまで難しかったシリコーンレジンを主原料するコーティング剤を、リーズナブルな価格で製品化することができました。

それでは、このシリコーンレジンコーティングがガラスコーティングのメンテナンス剤としてどのような作り込みをしていて、どのような特徴があるのかを見ていきたいと思います。


(参考)シリコーンレジンって何ですか?


1.ガラスコーティングの無機汚れ固着を防ぐ

ガラスコーティングの主な特徴・役割としては、持続性・耐傷性・防汚性が挙げられます。冠となる名前が「ガラス」ですから、ガラス質のハードコーティングをおこなうことであり、長期間にわたり塗装表面を守り続けることが求められます。

現在のガラスコーティングは、持続性や耐傷性については高いレベルにありますが、「無機汚れの固着を防ぐ」という機能性については、依然として課題が残っています。

ガラスコーティングの被膜がガラス質であるが故に、ガラスコーティングの表面は、ウォータースポットとか、イオンデポジットや水シミなどと呼ばれている「ガラス質の無機汚れ」が固着しやすいことです。

「無機物同士といった同じ性質の物質はくっつきやすい」と一般的に言われているように、水道水や雨水に含まれる無機物:カルシウム・マグネシウムやケイ素(Si)は、ガラス(Si-O)やガラスコーティングの硬化した被膜とは結合しやすいのです。

このため、古いタイプの無機物主体のガラスコーティングが、ウォータースポット(イオンデポジット、水シミ)の固着に悩まされていたことは、言わば当然のことなのです。

最近のガラスコーティングは、有機物である塗装との密着を高める目的のほかに、無機汚れの固着を遅らせることを目的とした「無機有機ハイブリッドタイプのガラスコーティング」に世代交代してきています。

無機有機ハイブリッドタイプは、無機のガラス骨格(基本構造)に加えて、表面に官能基(有機物を含む原子団)が表出するようにすることで、無機物同士が結合し難いようにしているものです。

しかし、無機有機ハイブリッド・ガラスコーティングが硬化した表面は、官能基によってバリアしているため、従来の無機主体ガラスコーティングと比較して、無機物の汚れの結合を遅らせる効果がありますが、どうしても基本構造がガラス質の無機物であるため、放置しますと同体化して取れにくくなるわけです。

【無機汚れ固着を防ぐシリコーンレジンコーティング】

上記のような無機汚れのウォータースポットを防ぐためには、主に有機物で構成されるコーティング剤や良いのかと問われますと、単純に「そうですね」と言うわけにはいきません。

主に有機物で構成されるコーティング剤というのは、古くから使われているカルナバロウなどの天然パラフィンなどを原料とするワックスがあります。これらは基本構造そのものが有機物で構成されているため、紫外線や高温によって比較的容易に分解されるため、耐久性が高いとは言えません。年単位~という長期間にわたる被膜耐久性を有するガラスコーティングとのバランスが悪い理由です。

せっかく、メンテナンスをラクにする意味でガラスコーティングしたのに、毎月のようにワックスがけしていたのでは、本末転倒というのか?ガラスコーティングの価値が半減してしまいます。

余談となりますが、時々、ガラスコーティングの上にワックスを塗るとガラスコーティングに悪影響があるのではないか?と聞かれることがあります。
「そんなに軟弱なガラスコーティングであってはならないでしょう」とお答えしています。

ガラスコーティングの本来の目的である「塗装を長期間保護すること」とバランスが良く、かつ無機汚れの固着を出来るだけ遅らせるには、ガラスコーティングと似た構造であるガラス状の無機骨格をもち、密着性と無機汚れを疎外する働きをもつ官能基を周囲に配向したシリコーンレジンコーティングによる補完をオススメいたします。

ここで疑問を待たれた方がいらっしゃるのではないでしょうか。

基本構造が無機骨格ならば、ガラスコーティングと同様に無機汚れがくっつきやすいのではないのか?と言う疑問です。
確かにシリコーンレジンコーティングは、ガラスコーティングと似た組成・構造なのですが、骨格の結合密度が異なることに大きな違いがあります。

基本構造の結合密度が高い場合は、硬化した被膜を形成します。これが、硬化するガラスコーティングであり、結合密度がガラスコーティングほどには高くない場合は、液体のままで、しなやかな被膜を形成することができます。

弊社のシリコーンレジンコーティングは、基本構造の結合密度をできるだけ高めていますので、施工後も液体のままでありながら、粘弾性をもった耐久性・持続力の高い液体被膜を形成することができます。

(参考)シリコーンレジンコーティングの粘弾性と滑り止め

無機汚れが固着するメカニズムは、硬化した被膜の無機物と「共有結合≒同体化」するために、まさに「固着」するわけです。

これに対して、被膜が粘弾性を持った液体である場合は、被膜自体が流動性を持っている、しなやかな液体コーティングが間に存在して、硬いガラスコーティングと無機汚れが塊として固着する前に、無機汚れを拭き取ってしまえば、ウォータースポットなどの固着を防ぐことができるというわけです。


2.ガラスコーティングの防汚性(撥水性)を補う

(1)親水性を維持することは非現実的

水や油をはじく表面にすることによって汚れの密着を防ぐわけですから、撥水性や撥油性が高いことが、コーティングの基本的な機能性として求められるわけです。

しかし、よくある話に、親水性表面はウォータースポット(イオンデポジット)ができにくい。ということが聞かれます。それは実験室などにおいて、理想的な環境が維持されているような、きわめて限定的な条件での話です。

せいぜいショーカーなどの屋外に持ち出さず常に磨きあげているような車を除き、道路を走り、汚れた雨に打たれ、排気ガスなどに常にさらされている使用環境においては、親水性コーティングの実用性には問題があります。

Si-Oの一般的なガラスの表面は水を弾かない親水性です。特殊な加工をしていない家の窓ガラスや、洗面台の鏡もクリームクレンザーなどで磨いてみてください。直後は水をかけると水は平たく拡がり、見事な親水表面になっていることがわかります。

しかし、屋外に面しているガラス表面の親水性は、ほんの数時間から長くても数日程度で撥水性に変化していきます。撥水性に変化する理由は、油分など様々な物質を含んだ空気や雨、ちりやほこりなどがガラス表面に付着するからなのです。

恒久的に親水性を維持できる表面を実現するには、「光触媒によるセルフクリーニング機能を持った表面処理」と、「雨水などによる洗浄」といった特別な仕組みが必要なのですが、塗装などの有機物への密着を維持できる光触媒コーティングは、未だに実用化されていません。

ですから、ガラスコーティングも含めて、セルクフクリーニング機能を有する親水性表面を維持することはできなのです。

さらに一般的な誤解として、光触媒による親水性表面は、セルフクリーニング機能によって、汚れが雨水と一緒に流れ落ちるというのは、有機物汚れを分解する機能によるものであるのに、あたかもウォータースポットのような、無機汚れまでも洗い流すようなことが言われています。

さすがに、いかに光触媒であっても無機物は分解できませんので、無機汚れの付着や固着を防止することはできません。

(参考)親水防汚:光触媒コーティングの現状と課題 その1

親水性コーティングの課題まとめ

①ガラスコーティングによる親水性表面は、数日程度しか持続性がなく、その後は撥水性表面に変化する。

②光触媒コーティングによる親水性表面は、有機物分解により塗装上に留まる事ができず持続性がない。光触媒が効いていると塗装表面を分解し傷める。



(2)撥水性の表面は防汚性である

前置きが大変長くなりました。汚れの固着を防止する防汚性の観点から上記のような親水性表面は現実的ではありません。自然界をみても防汚性を維持する表面は、撥水性となっております。その理由を探ってみたいと思います。

本来汚れの付着を防ぐには、撥水性(疎水性)・撥油性である必要があります。汚れの成分の多くは、水や油に溶け込んだり混ざったりしたものが、表面に付着して、その後の水分の乾燥や化学的変化によって、塗装表面に密着するわけですから。

植物や動物の表面は、汚れの付着を防ぐために、非常に優れた撥水機能を有効利用しています。例をいくつか挙げてみましょう。

植物の葉は、総じて撥水性です。植物が養分を得て生きていくのに必要な光合成は、葉っぱに日の光が充分に当たることが大切です。植物の呼吸は葉っぱの裏側にある、小さな穴「気孔」を通して二酸化炭素を取り入れて光合成をおこなう原料としています。

泥水や雨水に含まれている汚れが付着して、日が経つごとに汚れが堆積すると、十分な光が届かなくなったり、気孔が塞がれたりして生きていくことができなくなってしまいます。

蝶の羽根や胴体は、撥水性をもっています。因みにセミやカブトムシなども撥水性です。
モンシロチョウに、赤や青で着色した水を、ジョウロや霧吹きを使って蝶にふりかけても、着色した水はキレイに弾かれすぐに流れ落ちてしまい、モンシロチョウの白さに影響はありません。

軽く小さな蝶々にとっては、水の付着(水による濡れ)もそうですが、大気中の様々な汚れ物質が、羽根や胴体にある呼吸をするための小さな穴に固着すると、生命が危うくなってしまいます。

同じことは、カラスやスズメなどの鳥類なども、汚れを含んだ雨水が降りかかっても飛翔に影響することはありませんね。汚れない理由には、羽根を含め全身が素晴らしい撥水性をもっていることが大きく貢献しています。

いかがでしょうか、このように生物界における汚れが固着しにくい表面には、水を良く弾く撥水性が求められるわけです。

それでは、ガラスコーティングの撥水性はどのようになっているのでしょうか。

前述しましたように、ガラスコーティングの基本構造である無機のガラス質骨格は、基本的にSi-Oとなっていますので、表面自由エネルギー(表面張力)が水よりも大きいため、水となじみやすい親水傾向となります。

これに対して、新しいタイプの無機有機ハイブリッドのガラスコーティング剤は、前記の「1.ガラスコーティングの保護性能を補う」のように、無機ガラス基本構造の周囲に撥水性※をもつ官能基(有機物を含む原子団)が配置され、単純な無機ガラス表面と比較して、撥水性を帯びるようになります。

※.表面自由エネルギー(表面張力)の小さい官能基を配向(配置)することで疎水性=撥水性表面となる。

無機有機ハイブリッドタイプであっても、基本構造がガラス質であるため、親水性と撥水性の両方の性質をもっているため、撥水性を高めるにしても限界があります。

【防汚性(撥水性)を補うシリコーンレジンコーティング】

単純に撥水性を高めることで、さまざまな有機物汚れや無機物汚れの付着を防ぐという意味では、表面自由エネルギー(表面張力)を最小にしてあげれば良いのです。表面自由エネルギーが最小となるコーティング剤の原料として、理屈の上ではフッ素樹脂がチャンピオンとなるわけです。

しかし、車のボディ塗装用のコーティング剤となりますと、フッ素樹脂には課題があります。

フッ素樹脂の定着の問題です。フッ素樹脂は様々な汚れを寄せ付けないのですが、それは同時に、自らが塗装表面やガラスコーティング表面と密着しにくい性質をもつことが挙げられます。これは被膜の耐久性や持続性に課題があるということになります。

そこで、フッ素樹脂に次いで撥水性が高く、耐久性や持続性の高い物質となりますと、ガラスコーティングと同じようにケイ素(Si)を原材料とした「シリコーン」となるわけです。

パラフィン系(カルナバロウなど)の天然素材を採用したワックスを除き、液体コーティング剤のほぼ100%は、シリコーンを主な原料としています。

シリコーンによる液体コーティング剤は、ガラスコーティング剤と似た組成でできているため、ガラスコーティングへの密着や、屈折率差のない透明感のある光沢が得られるものとして、良好な相性となる特徴があります。

現在市場に流通している液体コーティング剤やメンテナンス剤は、シリコーンオイルを主原料(一部シリコーンレジンを添加しているものもあるようです)としています。シリコーンオイル原料のコーティング剤やメンテナンス剤も、フッ素樹脂原料品に次ぐ優れた撥水性が得られるのですが、耐久性や持続性に関しガラスコーティングとのバランスが不充分と考えます。

ガラスコーティングをおこなう目的のひとつとして、洗車をはじめとした「メンテナンス作業の間隔が長くなった場合でも汚れの固着を防ぐ」ということを考えると、メンテナンス剤に求められることも、ガラスコーティングの防汚性=撥水性を補い、かつ長期間の持続性・耐久性が要求されるということが言えるのではないでしょうか。

従来のシリコーンオイル原料によるメンテナンス剤の防汚性・撥水性を持ちながらもっと長く、その機能性を維持することができるメンテナンス剤が、シリコーンレジンコーティング剤なのです。弊社がオススメする理由がここにあります。


3.ガラスコーティングの美観を補う

コーティング仕上がりの美観を表すのに、「輝き」や「艶」があると呼びます。
その輝きや艶の中でもガラスコーティングの光沢は、「ソリッドあるいは硬質」になると表現されることがあります。

光沢とは、鏡面などの表面に反射した光の散乱の仕方によって、感じ取られる見え方ですが、光沢の感じ方については、最近も科学的な評価方法についての発表:生理学研究所 
http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2014/09/post-277.html がありますように、未だに研究対象となっているようです。

どのような表面になると「硬質とかソリッドな艶」になるのかは別にして、私たちは普段の生活の中で「濡れたような艶」を体験したことはないでしょうか。「雨に濡れた石造りの歩道」や、「洗髪し乾燥させる前の髪の毛」の艶が、身近な例として挙げられます。

これはまさに水によって表面がまんべんなく濡れた状態です。この濡れたときの独特の光沢は、水の被膜が表面を覆い、水の膜を通して反射した光の具合がこの独特の美しさを醸し出すのではないでしょうか。

ただ残念なことに、石や髪の濡れたような光沢が良いなー、と思っていてもやがて乾いてしまいますので、濡れたような光沢を維持させることは難しいのです。

おそらく、石の表面や髪の毛の表面には細かな凸凹があるため、乾燥した状態ではその凸凹に光が反射することで、艶や光沢が弱く感じるのではないでしょうか。

石や髪が水に濡れますと、石や髪の表面に薄い水の膜ができ、細かな凹凸も水が覆いますので、光の反射の仕方に微妙な違いが生じて、濡れたような独特の光沢が生まれるものと考えられます。

ガラスコーティングの光沢は「ソリッドや硬質」という風に表現され、「濡れたような」輝きや艶とは少し趣の異なる光沢となるようです。

車のボディを濡れたような光沢にしたい場合は、従来ですとカルナバロウのようなパラフィン系の天然材料を用いたワックスを塗布することがありました。

しかし前述のように、メンテナンスなど手入れを楽にするために、せっかくガラスコーティングを施工しているのにもかかわらず、古く酸化したワックスを剥離したり、まめな塗り直しが必要になるので、あまり相性が良いとは言えません。

近年は天然ワックスのわずらわしさを改善する意味で、ガラスコーティングとの親和性が高いシリコーンを応用したコーティング剤が使用されています。

ワックスやシリコーンオイルを原料としたコーティング剤を塗りますと、まさしく油っぽく少しぎらつくような、光沢になりますね。これはワックスやシリコーンオイルコーティング剤が、液体のままの状態で、ガラスコーティング表面に、油っぽい被膜をつくるからだと考えられます。


【濡れたような光沢を補うシリコーンレジンコーティング】

弊社がオススメするシリコーンレジンコーティング剤は、シリコーンオイルよりもガラス質の結合密度が高く、耐久性や持続性が高いので、液体の状態でより長期間にわたり被膜を形成するため、濡れたような光沢をより長く維持することができます。

また、シリコーンレジンコーティングの表面は、ワックスやシリコーンオイルコーティングのようなベタつきがない(油っぽくない)こともあり、濡れたような光沢でありながら、ガラスコーティングの「ソリッドや硬質」な光沢との違和感が少ないことも特徴です。

 

(参考)最高のトップコート ~ハイブリッドコーティング~
http://coating.th-angel.com/2015/06/blog-post.html


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2014-09-14

コーティングの耐久性と光沢 ~膜厚と多層化リスク~

光沢・艶を出す。
コーティングに期待する重要な機能性です。

最近お客様より「光沢を出したいので膜厚をアップしたい、複数回ガラスコーティングを重ねることで、もっと光沢を出したい」と言うようなお声をいただくことが増えているように感じます。

光沢については、工業的な基準としてはJIS Z8105,Z8741,K5600-4-7(日本工業規格)などや、ISO 2813(国際標準化機構)などで用語・測定方法などが定義されています。
工業における定義や測定方法などは上記のようなものがあります。

実際のところ、あくまでも人がどのように感じるのか、というところが最終的な目標であるような気がします。しかし感性については、人それぞれによるところがありますので、「光沢」について脳科学などの生理学などでは、未だに興味の尽きない分野でもあるようです。

自動車ボディなどの光沢や艶と言った場合、光や表面に映る像が、鏡のようにハッキリ・クッキリと見えてかつ、その映り方に深みが感じられるのかといったことが求められるのではないでしょうか。

ハッキリ・クッキリを映り込むというのは、表面の平滑性が高く・乱反射が少ない表面であることが必要ですし、映り方の深みと言う点では膜厚や平滑性なども関連してくるのではないのでしょうか。もちろん被膜の透明度や屈折率が均一であることも重要です。

ガラスコーティングでは透明度が高く屈折率が均一であることは、概ねどのようなコーティングであっても第一条件だと思います。更なる光沢や艶の深みを追及する場合は、膜厚をアップさせることが考えられます。


今回は、ガラスコーティングの光沢と厚膜化・多層化について、耐久性とのトレードオフ関係を考えてみたいと思います。


塗装とガラスコーティングの現状

自動車の塗装技術は、言うまでもなく年々進化しております。

ご存知のようにメタリック塗装や、パール塗装のようなキラキラと輝く、金属粉やマイカ粉を混入した塗料を使用しますと、金属やマイカの腐食・酸化や飛散・ハガレなどを防ぎつつ、美しい光沢を出すために、クリア塗装を上塗りをする必要があります。

かつてはメタリックやパール紛体を含まずに、顔料などによる「色」を出すソリッド塗装は、クリア塗装を上塗りしない場合がありましたが、近年はソリッドカラー塗装でもクリアを上塗りしている新車が多くなっております。

ソリッドカラーを含めて新車塗装におけるクリア塗装は、概ね30μm以上の膜厚があるようです。


(参考)クルマの塗料・塗装方法の進化 日本自動車工業会
http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/jamagazine_pdf/201503.pdf

正直に申し上げますと、30μm以上のクリア塗装劣化がない新車においては、数μm程度のガラスコーティングをかけても、美観上のその違いを感じにくくなっていることは事実です。

塗装がフレッシュで美しい光沢をもつ新車に対するガラスコーティングは、光沢や艶の追及というよりも、今後車を使用していく中での微細な傷つきからの保護や、汚れの付着や酸化防止し、できるだけその美しさを維持させる意味合いが大きくなります。

塗装表面がフレッシュな新車の分厚いクリア塗装の上においては、ガラスコーティング施工部と未施工部を比較するような見方であれば、その違いが解ると思います。しかし、ガラスコーティングの膜厚を多少アップしたからと言って、その違いを際立たせることは難しいのではないでしょうか。

むしろ、むやみにガラスコーティングのように硬度が硬い皮膜を厚くしたり、多層化したりしますと、クラックやハガレを起こしやすくする原因となるため、本来の保護性に支障をきたし、光沢などの美観にも逆効果となるリスク要因となる可能性が高まります。



膜厚アップや多層化させる弊害

最近巷で、ガラスコーティングを塗り重ねて多層化することで、見かけの膜厚をアップするようなものが聞かれます。ガラスコーティングの膜厚を上げ過ぎたり、多層塗りする弊害の要因を考えてみましょう。


1.多層間の密着不良による剥離リスク

ガラスコーティングを何度も塗り重ねすることで、見かけの膜厚をアップさせることにより、光沢や艶を出すという発想があり、ガラスコーティングなどの硬化被膜を多層化するものがあるようです。

この多層化による弊害として間違いなく言えることは、塗り重ねるほど層間の界面が増えることによって、コーティング層間の密着部に「剥離リスク」を抱えた箇所がどんどん増えていきますので、コーティングが剥がれる確率が高まるというなのことです。

厄介なことに、施工直後は綺麗に密着しているように見える場合でも、コーティング施工後、日時が経過するにしたがって、様々な化学的物理的刺激や変化を受け、各層ごとの状態がわずかに変化や刺激が加わることで、剥離・ハガレが発生する可能性が高まることが考えられるのです。

【多層コーティングのイメージ】
----------------------------------
  コーティング n層
---------------------------------- ←剥離リスク
      ・
---------------------------------- ←剥離リスク
      ・
---------------------------------- ←剥離リスク
      ・
---------------------------------- ←剥離リスク
  コーティング 3層
---------------------------------- ←剥離リスク
  コーティング 2層
---------------------------------- ←剥離リスク
  コーティング 1層
----------------------------------

     塗装面

----------------------------------



2.膜厚アップによるクラック発生リスク

コーティングを塗り重ね多層化したガラスコーティングの界面の密着が、非常に強力で、完全な理想的なものであったとしましょう。その場合は、塗り重ねた回数が多いほど、分厚いガラスコーティングができる訳です。

このように、ガラスコーティングの厚みが増していきますと、ガラスは硬くて脆いために「応力=ストレス」の影響を受けやすくなっていきます。

例として、同じガラス材で作られた厚みの異なる「ガラス板」をみてみましょう。
 
同じ材質のガラス板でも厚みが薄い場合は、曲げ半径が小さくても割れにくいですが、分厚い場合は、同じ曲げ半径であっても割れてしまうことがあります。

身近な木材の例で言い替えてみます。薄い杉板(厚さ1mm)と、厚い杉板(10mm)に対して、曲げ半径50mmに曲げてみましょう。厚さ1mmの杉板は割れないかもしれませんが、10mmの杉板は割れてしまうかもしれません。

ガラスは硬くて脆く(脆性が高く)、粘りが少ない(靱性が低い)ものなので、少しの厚さの違いで割れやすさが大きく影響します。

ある板ガラスメーカーさんによる、同一材質の薄板ガラスの破壊が起きる曲げ半径データがあります。一部のデータを下記のようにご紹介します。

【破壊の起こる曲げ半径】

  • ガラス板厚0.50mmの場合:曲げ半径350mm
  • ガラス板厚0.10mmの場合:曲げ半径 70mm
  • ガラス板厚0.05mmの場合:曲げ半径 40mm


ガラスコーティングは、上記ガラス板に近い物性を持っていますのでコーティングの膜厚が増すほど破壊=クラックが起きやすくなります。

以前のブログ記事コーティングの硬度でも触れましたが、同じ膜厚の場合、ガラスコーティングの硬さが増すほどクラックが発生しやすくなります。このため弊社のガラスコーティング剤では、多少の柔軟性を持たせて、あえて鉛筆硬度9Hとはせずに7H前後に調整して、クラックの発生を防いでいます。

参考にガラスが割れるメカニズムと、厚さと応力の関係について解りやすく解説したページをご紹介いたします。
旭硝子株式会社【ガラスの豆知識VOL.21 ガラスの強さ】
https://www.asahiglassplaza.net/gp-pro/knowledge/vol21.html

余談になりますが、車の塗装のクリア塗装膜厚は30μm前後とガラスコーティングの数μm以下よりも一桁程度の膜厚があっても、クラックや剥離が生じない理由の一つには、鉛筆硬度3H前後とそれほど硬くせず、柔軟性を持たせていることが挙げられます。

膜厚を上げ過ぎたり、多層コーティングをした後、時間経過が少ない場合は被膜の経年変化がほとんどないため問題になりにくいのですが、時間が経ちますと車の振動・形状のひずみ、紫外線・酸素・熱・水分・化学物質などによってストレスが加わり、少しずつ化学的物理的変化が進行します。

このような応力=ストレスの蓄積は、眼には見えにくい細かなクラック(ひび割れ)や、多層塗り各層間の密着不具合が発生しやすくなり、美観上の濁りや部分的なハガレの原因となります。



ガラスコーティングとトリートメントの役割

前述のようにガラスコーティング目的は、塗装の微細な傷つきの防止、汚れの付着防止、塗装表面の劣化や酸化を防止することで、塗装本来の光沢や艶、鮮やかな色合いといった美しさを長く保つことであると考えます。

とはいえ、残念ながらガラスコーティングは万能ではありません。

ガラスコーティングは無機物汚れ(ウォータースポット・イオンデポジット)が固着しやすく、膜厚を上げることによる上記のような弊害を避ける意味で、光沢の深みが感じられにくいといった特性を持つため、弊社では下記のようなガラスコーティングを補うトリートメントの併用をオススメしております。

弊社トリートメントは硬化するタイプではなく、液体のまま表面に付着し続けるものです。トリートメントを塗りますと「濡れ」によって、表面の微細な凹凸を埋め、光の乱反射を抑える効果があります。これによりガラスコーティングの硬質な輝きを補い、文字通り濡れたような深みを与えることができます。

例えると、ピアノのような黒いツルツルの表面に水を垂らしますと、表面が濡れている間は、一層の深い滑らかな光沢になりますが、そのような濡れた状態を長期間維持できるようにしたものと考えてください。

このトリートメントは、基本的な分子骨格がガラスと近似した3次元ガラス骨格シリコーンレジンを使用しておりますので、このような濡れ効果が長期間持続し、時間経過とともに表面が多少荒れた場合も洗車をして拭き上げることによって、再び濡れたような美しい表面を回復することができます。

弊社のガラスコーティングとトリートメント(シリコーンレジン)は、原材料としては同じ材料を用いておりますので、上塗り界面の屈折率変化にともなう光沢の濁りも極小に抑え、ふたつの相乗効果によって最高のパフォーマンスが得られるようにしております。

(参考)フッ素コーティングとは(その4) ~透明度・光沢と屈折率について~
http://coating.th-angel.com/2014/08/blog-post.html





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2014-09-09

紫外線によるコーティング劣化について

紫外線による劣化(老化)

あの女優さんは最近劣化してるね。などと大変失礼だと思うのですが、人の場合は歳を取るにつれて、皮膚のシミやシワが増えたり張りが無くなり、全体的にお肉が下がってくるなどの外見的な変化が見て取れる状態、つまりは老化したことを言っている場合が多いような気がします。

自動車ボディコーティング被膜についても、人と同じように時間の経過とともに美観や、保護機能が衰えていくことがあります。人の老化になぞらえてコーティング劣化の具体的な現象を書き出してみました。

1.撥水性・疎水性が弱まってきた。
2.汚れがつきやすくなった。
3.洗車しても汚れが落ちにくくなった。
4.洗車しても光沢が落ちてきた。

人の場合は、細胞が死んでは生まれるを繰り返す再生能力がありますが、新陳代謝により細胞が再生できる場合においても、日光に含まれている紫外線の影響を受けて「老化:劣化」していきます。

一方のコーティング被膜では、人の皮膚のような再生能力はありませんので、例外なく時間の経過とともに徐々に劣化していきます。

それでは、コーティングにおける劣化とはどのようにして起きるのでしょうか。
コーティング被膜の劣化は、紫外線のほかに温度上昇や酸化、大気や雨に含まれる物質による化学的な作用や物理的な擦過・摩耗などが原因として考えられます。

今回は、コーティング被膜を構成する物質との関連性が、数字で捉えやすい電磁波=紫外線を例として、劣化のメカニズムについてまとめてみたいと思います。

私たちは紫外線がコーティング被膜や、人の皮膚を劣化・老化させる要因であることはよく知っていますが、どうして紫外線にはそのようなパワーがあるのでしょうか?


電磁波:紫外線(光子)のエネルギー


紫外線を含む光は、電波や放射線と同じ電磁波の一種です。
電磁波は波長の違いによって分類がなされています。波長の長い(周波数が低い)ほうから、
電波~光~放射線となっています。

更に光を細分化しますと、波長の長い方から、
赤外線~可視光線~紫外線となります。

お気づきのように、一般的に波長が短い電磁波ほど、人体や物にとっては劣化を早める影響力が高いことが言えます。光よりも波長の短い放射線は言うに及ばず、光の中でも波長の短い紫外線はそれにあたります。

波長の長い電磁波よりも波長の短い電磁波のほうが、劣化を早める理由とはどのようなことなのでしょう?

答えはズバリ、電磁波が持つエネルギーが、物質を形づくる原子間の結合を断ち切ることで、物質を分解し別の物質に変質させるからなのです。

もう少しくわしく言いますと、電磁波は光子としてのエネルギーを持っており、高校の物理で勉強したアインシュタインの「光量子説」や、「プランク定数」あるいは「プランク法則」を思い出してみましょう。
光子の持つエネルギーは、波長に反比例する。


E=hc/λ

E: 光子1個のエネルギー
h: プランク定数 6.626×10^-34 [J・s]
c: 光速 2.998×10^8 [m/s]
λ: 電磁波の波長 10^-9 [m]


例えば、波長172nmの紫外線の場合、光子1個当りのエネルギーは1.15×10^-18J(7.22eV)、モル当りでは、167kcal/molです。

つまり、電磁波の周波数が高い=波長が短いほど、電磁波(光子)の持つエネルギーが大きくなることを表しています。もう一度電磁波の持つエネルギーの大きさを整理してみましょう。

電磁波 :電波<光<放射線
電波 :長波<中波<短波<超短波<マイクロ波
 :赤外線<可視光線<紫外線
放射線 :X線<γ線

電磁波(紫外線)エネルギー


紫外線の光子エネルギー


このように、光に分類される電磁波のなかで、最も高いエネルギーを持つ紫外線とは、どの程度のエネルギーを持っていて、その光子エネルギーが物質に与える影響はどの程度のものなのでしょうか?

絶え間なく太陽から降り注ぐ日光には、人間の眼によって感知できる可視光線や、感知できない赤外線や紫外線があります。赤外線や可視光線よりも紫外線のエネルギーが大きいことは解りました。

それでは、紫外線のもつエネルギーを具体的な数字でみてみましょう。
紫外線の中でも波長が短く、エネルギーが強い紫外線UVCは、地球の大気により吸収され地上にはほとんど届きません。

地上に降り注ぐ可視光線の中で最も波長の短い「紫」と、紫外線の中で最も波長の短い「UVA」、この境界あたりの波長:400nmの光子エネルギーは、約3eV=70kcal/mol程度であり、UVBの波長:300nmの光子エネルギーは、約4eV=92kcal/mol程度です。

大気によって遮ることのできない、地上に降り注ぐ最も高エネルギーの紫外線(UVBとUVCの境界辺り)光子エネルギーは、最大でおよそ100kcal/mol程度であると考えられます。


光子エネルギーの影響


原発事故や原子爆弾による放射線被ばくなど特殊な事象を除いて、通常の環境において人体や車などが晒される電磁波エネルギーで最大のものは、太陽光に含まれる紫外線(UVA~UVB:約70~100kcal/mol)であることが解りました。

さて、太陽光として照射された紫外線の光子エネルギーは、物質に対してどのような影響を与えるのでしょうか?

その前に、物質の基本的な構成を思い出してみましょう。

様々な種類の原子と原子が電子を共有することで結合が起こり、結合した原子核の種類と電子の構成によって、物質の種類や性質が決まる大きな要因です。人の皮膚やコーティングの被膜も、複数の原子核同士が共有する電子の構成によって形づくられた物質であるわけです。

物質に電波や光などの電磁波(光子)が照射され光子が衝突すると、物質の原子あるいは分子を構成する電子が、原子核を周回する元の軌道から、外側の軌道への移動(電子遷移)が起こることがあります。

このような電子遷移に伴い、様々な化学的変化が起きるのですが、分子の中で共有結合している原子間結合エネルギーを、電磁波の光子エネルギーが上回ると、分子内の原子間結合の開裂、すなわち「結合が切れる」という現象が発生します。

このように一旦共有結合が切れますと、それぞれの原子はその時の条件に即して再び電子を共有する結合をしようとしますので、多くの場合では結合が切れる前の物質とは別の物質に変化します。


フロンガスと紫外線によるオゾン層破壊


太陽光に含まれる紫外線の影響によって、共有結合が切れて再び結合する例として、近年問題になっている環境破壊の例をみましょう。

人の手によって作られたフロンガス(クロロフルオロカーボン類:CFC)が成層圏に拡がり、このフロンガスが紫外線によって分解され、塩素(Cl)を発生させることで、塩素が触媒となって化学反応を起こすことで、地球大気のオゾン層を破壊してゆきます。

オゾン層が破壊されますと、これまでオゾン層がある程度バリヤしてきた紫外線UVBが、これまでよりも強いエネルギーを保ったまま地上まで到達し易くなり、人を含む生態系の遺伝子などに悪影響を与える原因とななっています。

(参考)気象庁:フロンによるオゾン層の破壊
http://www.data.jma.go.jp/gmd/env/ozonehp/3-25ozone_depletion.html

成層圏に達したフロン:CFC-11(トリクロロフルオロメタン)を構成している、フッ素(F)や炭素(C)と塩素(Cl)が、紫外線の光子エネルギーによって炭素と塩素間の結合が切れて、元来不安定なオゾン分子(O3)フロン由来の塩素(Cl)とが、新たに結合することで、一酸化塩素分子や酸素分子に生まれ変わり、オゾンが破壊(化学変化)されてしまうわけです。

これはまさに、紫外線などの電磁波による分解劣化の地球規模での例になります。

この例をもう少しくわしく見てみましょう。
フロン:CFC-11(分子式CCl3F)は、原子価4の炭素(C)を中心として、炭素から伸びる一つの手にフッ素(F)が結合し、残りの三つの手にはそれぞれ塩素(Cl)が結合しています。

フロン:CFC-11分子の原子間結合エネルギーを調べてみましょう。

・炭素とフッ素    (C-F):116 kcal/mol
・炭素と塩素    (C-Cl): 81 kcal/mol

一方のフロンを分解する紫外線UVB(波長280~315nm)の光子エネルギーは、下記のようになります。

・UVB(280~315nm):91~102 kcal/mol


このようにUVBの光子(電磁波)エネルギーは、炭素と塩素の結合エネルギーよりも大きいため、C-Clの結合を断ち切って(開裂)しまうわけです。

オゾンと同じように私たちの身の回りにあるものは、このような原理で紫外線など電磁波の影響を受け続けているわけですが、特に波長の短い光であるために光子エネルギーが大きい紫外線は、物質の化学変化(開裂と結合)を促進させるパワーが大きいと言うわけです。



紫外線に晒される太陽電池

ここで身近な例として、常時太陽光にさらされる太陽電池パネルを例として紫外線の影響をみてみたいと思います。

以前の当ブログhttp://coating.th-angel.com/2013/10/30.htmlでも触れましたが、およそ30年前に設置された奈良県・壷阪寺に設置された「シャープ製太陽光発電パネル」は、現在でも良好な発電効率で現役稼働中です。

壷阪寺の太陽電池セル封止材としてシリコーンが使われ、優れた耐候性・耐久性を保つことによって、発電効率を維持しながら稼働中であるとのことです。もしも、シリコーン以外の透明な封止材が使われていたならば、どのようなことが起きるのでしょうか。

シリコーン樹脂以外の樹脂の多くは炭素を中心とした分子構造です。たとえば透明性の高いプラスチックの中で、アクリルなどと比較して紫外線による化学変化が少ないとされるポリカーボネートでの紫外線劣化は下記のように考えられます。

ポリカーボネートの基本的な分子骨格は、炭素(C)と炭素あるいは、炭素(C)と酸素(O)によって構成されています。
カーボネート基 (-O-(C=O)-O-)

このような分子骨格のポリカーボネートに、太陽光(紫外線)が照射されますと、炭素同士の結合エネルギー C-C:83kcal/mol炭素(C)や、炭素(C)と酸素(O)間の結合エネルギー C-O:86kcal/molは、紫外線UVA~UVB帯域の光子エネルギー:80~100kcal/mol程度よりも小さいため、原子間結合が切断されることによって劣化するわけです。

ポリカーボネートは、割れにくいことや可視光線の透明性が高いことから、前述のように比較的紫外線による劣化も少ないため、クルマのヘッドランプレンズや、カーポートの屋根材などに広く使用されています。

しかしご存知のように、クルマのヘッドランプに使用されているポリカーボネートは、時間の経過とともに黄色く変色(黄変)します。これは紫外線と酸素によって分解・劣化が進行し、分子構造が変化することで可視光線の吸収スペクトルが変化(黄変)するためです。

仮にポリカーボネートを太陽電池セルの封止材として使用した場合は、ヘッドランプのように数年の使用で黄変してしまうようでは、太陽光が太陽電池セルに十分に届かずに発電効率が下がってしまうことが予想されます。

太陽電池セル封止材の現状と将来


実際の太陽電池の封止材としてはポリカーボネートではなく、柔らかく透明性が高いEVA(エチレン・ビニル・アセテート)が広く使われています。

EVAは、樹脂の中では紫外線劣化し難いものですが、炭素と酸素による分子骨格であるため、長年の使用により透明性が落ちて発電効率に影響する原因のひとつと考えられています。

前述の奈良県・壷阪寺の太陽光発電パネルは、現在主流のEVA封止材ではなく、より劣化が少ないシリコーンが使われています。

現在市場に出ている多くの太陽電池パネルは、製造コスト低減などの理由でEVAが使用されており、シリコーンの使用が見送られているようです。しかし最近は製造コストの改善がみられる可能性が出てきたため、太陽電池セルの封止材として、EVAよりも紫外線に強いシリコーンが再び注目されているようです。


紫外線に負けないシリコーンコーティング・ガラスコーティング


もうお気づきのようにシリコーンが、ポリカーボネートやEVA(エチレン・ビニル・アセテート)よりも紫外線による劣化が少ない理由は、ケイ素(Si)を分子骨格としているためです。
各物質の結合エネルギーと、紫外線の光子エネルギーを比較してみましょう。

紫外線(UVA~UVB)の光子エネルギー

・UVA(315~380nm)    :75~ 91 kcal/mol
・UVB(280~315nm)    :91~102 kcal/mol

ポリカーボネートやEVAなどの基本骨格・原子間結合エネルギー

・炭素と炭素    (C-C)    :83 kcal/mol
・炭素と酸素    (C-O)    :86 kcal/mol

シリコーンやガラスの基本骨格・原子間結合エネルギー

・ケイ素と酸素    (Si-O):110 kcal/mol

このように、ポリカーボネートやEVAの分子骨格は、地上に到達するUVA・UVB紫外線の光子エネルギーよりも、分子内の結合エネルギーが小さいため切断され劣化変質します。

一方のシリコーンの分子骨格は、ガラスと同様にケイ素を中心としたSi-O結合(ケイ素化合物)であるために、UVA・UVBの光子エネルギーを上回りますので、長期間に渡り劣化や変質が起こりにくいのです。



UVB : 102 kcal/mol < Si-O : 110 kcal/mol

上記のような関係から、Si-O分子骨格であるシリコーンレジンコーティングや、ガラスコーティングは、紫外線UVA/UVBに負けないコーティングであるわけです。





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2014-08-17

フッ素コーティングの透明度・光沢と屈折率

フッ素コーティングの高い撥水性・撥油性による防汚性が優れている理由はわかりました。しかし、フッ素コーティングとシリコーンコーティングを比較しますと、フッ素コーティングが良い面ばかりではないことも指摘されています。

フッ素コーティングの透明度や光沢についての指摘です。

そもそも、コーティングにおける光沢の良さや透明度の高さとは何なのでしょうか?
光沢が良く透明度が高いコーティング表面とは、科学的には光の散乱が少ない均質な状態の被膜に覆われていることが絶対的な条件となります。

たとえば、光が散乱することで濁ったように透明度が下がる例を考えてみましょう。


水の陽炎(かげろう)
透明な耐熱ガラスコップに、きれいな全く濁りのない冷たい水を入れてください。この水を観察しますと、非常に透明度の高い状態であることが確認できます。ここに熱いお湯、たとえば80℃の全く濁りのない熱水を静かに少量注ぎ込みます。

するとどうでしょう、モヤモヤと濁ったような半透明の液体が混じり合うのが見えます。コップにある冷水と、後から注ぎ込んだお湯のもとは同じ蛇口からの水であってもです。

このユラユラと陽炎のように見える濁りは、冷たい水と熱水のわずかな(光に対する)屈折率の差によるものと考えられます。全く同じ物質であっても温度差による程度であっても、透明な見え方に影響がでてくるほど微妙なものであることがわかります。水とお湯が混じり合って、温度差がなくなるとモヤモヤの陽炎のようなものは見えなくなります。


大型水槽のアクリル積層板
違った例を見てみましょう。大型の水槽を有する最近の水族館です。


サンゴ礁の海をダイナミックに再現することで人気の高い「沖縄美ら海水族館」の超大型水槽で採用されている「高さ8.2m、幅22.5m、厚さ60cmの透明度の高い一枚ガラス板のように見えるアクリルパネル」これは、厚さ4cmのアクリル板の表面を精密に磨き、このアクリル板と同じ(光の)屈折率であるアクリル接着剤を使って、15枚も繰り返し貼り合わせることで、厚さ60cmの透明度の高いアクリルパネルを構成しています。

そうですね。透明に見え、美しい光沢を得るためには、光が散乱しないようにする必要があるのです。光の散乱が発生する原因は、屈折率の異なるものが混じり合うことがその大きな要因となります。


コーティングにおける透明度
コーティングを構成する物質によって、それぞれ固有の屈折率を有しています。水とお湯のように同じ物質でも温度差によって若干の屈折率の差が生じますと、濁ったように見えてしまいます。水を例にしますと15℃の水に、65℃のお湯(温度差50℃)が混ざった場合の屈折率差はわずかに0.005です。

物質の屈折率
--------------------------------------------------------------------
 :1.33※
--------------------------------------------------------------------
フッ素樹脂 :1.3~1.4程度
シリコーン樹脂 :1.4~1.5程度
--------------------------------------------------------------------
アクリル樹脂 :1.5前後
ガラス :1.4~1.8程度(不純物や非晶質構造などによる)
--------------------------------------------------------------------
※.水の場合、温度1℃の上昇に対して0.0001程度低下する。他の物質も温度変化とともに屈折率が変化する。


このように同じ物質でも、たったの0.005の屈折率差でもこのような陽炎にようなことが起きます。

フッ素コーティングの場合は、以前下記の記事にてご紹介しましたように、フッ素樹脂単体では、クルマの塗装表面に密着しないために、シリコーン樹脂のバインダと一体にして、塗装表面と密着させる必要があります。以下のようにシリコーン樹脂とフッ素樹脂の屈折率は異なります。


(参考記事) フッ素コーティングとは(その2) ~ケイ素によるフッ素の密着について~

フッ素コーティングの透明度・光沢感を上げることを意識して、シリコーン樹脂とフッ素樹脂の屈折率を近づける努力がなされ、近年では以前よりも透明度の高いフッ素コーティングが提供できるようになっています。しかし水とお湯の例でもわかるように、非常に小さな屈折率の揺らぎがありますと、微妙な光沢感・透明感への影響があることも事実です。

このような理由から、ピュアなシリコーン樹脂のみによるコーティングに比較して、シリコーン樹脂とのハイブリッドであるフッ素コーティングの透明感が、わずかに劣る原因がここにあるのです。





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フッ素コーティングの撥水性・撥油性と汚れ

フッ素コーティングの高い撥水性・撥油性による防汚性が優れている理由を見てみましょう。

以前、撥水性・撥油性に関する記事をアップしました。この中で撥水性や撥油性をもつ表面の汚れ難さについてまとめたものです。


(参考)撥水性だから油汚れが着く親油性は本当?
http://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_15.html

この記事でも触れていますが、油分を含んだ汚れがつき難い表面は、撥油性でありかつ撥水性です。具体的に撥油性と撥水性が高い表面とはどのような状態なのでしょうか。

条件を一定にするために、クルマの塗装のように平滑正の高い表面の場合は、表面張力(表面自由エネルギー)が油や水との差が大きいほど、油や水をよくはじく、すなわち撥油性・撥水性表面となります。

 

表面張力(表面自由エネルギー) 単位[mN/m]
--------------------------------------------------------------------------- 水: 73
油: 25~30 (石油・鉱油)
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S1.シリコーン: 16~30

F1.フッ素樹脂1: 18 (PTFE、フライパンなど) F2.フッ素樹脂2: 10~25 (フッ素樹脂+シリコーンコーティング) F3.フッ素樹脂3: 6 (CF3の場合、実験室レベルでの最小値)
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いかがでしょうか。
液体よりも低い表面張力の固体表面(コーティング表面)は、その液体をはじくことができます。
整理してみましょう。
●シリコーンコーティングした表面
シリコーンのみでコーティングした場合は、上記表「S1」シリコーンの表面張力と、水・油の表面張力の差から以下のようになります。


  1. 水との表面張力の差が大きいため、水を良くはじく。
  2. 油との表面張力の差が無いまたは小さいため、油のはじき方が小さい。

「S1」シリコーンの場合、水の接触角では、およそ90~100°前後といったところでしょう。



●フッ素樹脂コーティングした表面
フッ素樹脂をコーティングするためシリコーンをバインダ(接着剤)とした場合は、上記表「F2」フッ素樹脂の表面張力と、水・油との表面張力の差から以下のようになります。

  1. 水との表面張力の差が大きいため、水を良くはじく。
  2. 油との表面張力の差があるため、油をはじく。

上記のように、フッ素樹脂の優れていることとして、撥水性に加えて撥油性があるため、油性の汚れがつき難いことがあげられます。
 
「F2」フッ素樹脂の場合、水の接触角では、およそ100~110°前後といったところでしょう。

 
(参考 実験室では)

上記表「F3」フッ素樹脂のように、CF3で隙間なく覆われた平滑な表面の水の接触角は120°、油の接触角は90°程度になると言われていますが、実験室レベルでしか実現できませんし、実用的コーティングとしては、その他の機能性(耐久性など)が不充分です。




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