2017-11-30

コーティングの寿命

コーティングの寿命の目安として「撥水の変化を見ていただきたい」という主旨の記事※に関連して、下記のようなご質問をいただきました。
※.コーティングの上からコーティング
http://coating.th-angel.com/2015/12/blog-post.html

【ご質問内容】
硬化型コーティングおよび、非硬化型コーティングの撥水性変化にともなう、寿命(耐久性)の捉え方の違いはあるのですか?

ご質問にお答えする前に、弊社の硬化型と非硬化型コーティングの特質について、おさらいしたいと思います。



硬化型コーティングと非硬化型コーティングの特質

弊社が現在主力としているコーティング剤は、硬化型(業務用)と、非硬化型(一般用・業務用)ともに、ひとつの分子内にケイ素(Si)と酸素(O)のSi-O無機骨格と、有機官能基を結合した構造になっております。

このSi-O無機骨格の結合密度を変化させることで、カチカチに固まる硬化型としたり、固まらない非硬化型にしたりすることができます。
弊社では、硬化型の中でも鉛筆硬度がおよそ5H以上に固まるものを、「ガラスコーティング」と呼んでいます。

ご存知のように、Si-O無機骨格を基本構造とする身近なものとして「ガラス」があります。

ガラスコップや窓ガラスはとても硬いです。
このため、ガラスは固体であると思われていますが、ガラスは鉄やアルミのような金属などの固体の特徴である「結晶」ではなく※、少し緩い結合の「非晶質」となっています。

※.結晶化したガラスもありますが、結晶化ガラスは非常に特殊なものです。天然には水晶があり、人工的にガラスを結晶化するには、精密に制御された添加物と厳密に制御された高温高圧を与えることで作成することができます。現場施工するようなコーティングの場合は、結晶化したガラスを作ることはできません。
天然水晶は、不純物の割合や高温・高圧な環境等が、奇跡的に結晶化する条件と合致した際にできたものと考えられています。

ガラスコップや窓ガラスといった、身近な一般的なガラスは非晶質です。
結晶した固体ではない、非晶質であることがガラスの特徴です。

非晶質であるガラスの特徴として、あまり一般的ではありませんが、Si-O基本骨格の密度を変化させることで、ガラスは流れるような液体となったり、ゴム状の柔らかい半固体のようになったり、カチカチに固まったものになります。

このようなガラスの性質を応用して、弊社の硬化型および、非硬化型コーティング剤は、基本的な構造は同様であり、ガラスの性質を代表する無機骨格の密度を変化させることで、カチカチの固体(硬化型)にしたり、固体的な性質を持たせた液体(非硬化型)にしています。



コーティングの寿命について

撥水や光沢が弱くなったとか、汚れやすくなったとか、コーティング寿命の捉え方は様々です。

例えとして適切か分かりませんが、車のタイヤの寿命の捉え方には、どのようなものがあるでしょうか。

私個人的には、乗り心地が硬く感じられるようになったら、タイヤを交換しています。
タイヤを新しくすると、乗り心地が回復して、疲れにくく快適なドライブが楽しめます。

一方、タイヤメーカーは、タイヤの溝の残り具合や、ひび割れの発生といった安全性を重視した状態をみて、寿命を判断する目安が示されていることが多いようです。経験的には、このような状態になるよりも、ずっと前に乗り心地が硬くなるような気がします。

このように、人それぞれに何を求めているかによって、「寿命」の捉え方も異なってくるものと考えます。

コーティングの場合は、硬化型、非硬化型に期待することと、それに伴う寿命の捉え方も違うと考えます。それぞれに期待する効果と寿命について考えてみましょう。



<硬化型コーティングの寿命>

硬化型に求められる機能性は、ベースコートとして硬くて柔軟性のある被膜を形成し、長期にわたる、塗装の微細な傷つきや、塗装の酸化・劣化を防ぐことにあると考えます。硬化型は、塗装表面の平滑性を高めることで、主に有機物汚れの固着を防ぐ目的もあります。

つまり、硬化型コーティングは、代わりに受け止めることで塗装が傷つくことを防ぎ、塗装が酸化・劣化しにくいようにするため、大気や酸性雨などが直接触れることを防いでいます。

硬化型コーティングによる被膜を落とすには、研磨剤を使用する必要があります。一般的な使用環境においては、硬化型コーティングに求められる上記のような機能性が寿命を迎えることはあまりないでしょう。

ただし、ガラスコーティングのような高硬度のコーティングであっても、洗車時タオルの擦過等による微細な傷つきは発生します。比較的柔らかい塗装よりも、ガラスコーティングのほうが傷つきにくいということは言えますが。

例えると、同じように車を使い続けた場合、同様の傷つきとなるまで、塗装では1年かかったものが、ガラスコーティングの場合は2年かかったというような感じでしょうか。

硬化型コーティングの寿命の考え方として整理してみます。

傷つきや酸化・劣化からガードするという意味では、研磨して落とさない限りは、相当長期間保護し続けることができます。

とは言え、車を使いながら洗車を繰り返すうちに、微細な傷つきはありますので、光沢や撥水の様子も変わってきます。そうなりますと、表面を軽く磨くとか、追加でガラスコーティングを施工するとか、何らかの処置をしたほうが良い場合があります。

このように、何に着目するかによって、硬化型コーティングの寿命の捉え方が決まってくるのではないでしょうか。



<非硬化型コーティングの寿命>

非硬化型に要求される機能性は、硬化型のベースコートだけでは防ぎにくい、無機質汚れ(ウォータースポット・イオンデポジット)の固着を、トップコートとして防ぐことや、光沢感・艶感を補うことにあると考えます。非硬化型単体として、塗装に直接コーティングした場合も同様です。

従来の非硬化型でしたら、コーティングの被膜が酸化・劣化することによる黒ずみやくすみの原因となって、美観が損なわれることがありました。これもひとつの寿命として捉えることができると思います。

弊社の非硬化型コーティング剤は、冒頭に記載したように、固まるガラスと同様の無機骨格をもち、塗装との密着性を高め、無機汚れを着きにくくする有機表面と、撥水性を持たせたハイブリッド構造となっております。

このため、弊社の現行コーティングは、従来の非硬化型コーティングのように、被膜が紫外線、熱、大気、水分等によって分解(酸化・劣化)されることは、非常に少なくなっております。

現行の非硬化型コーティングの寿命は、上記のように被膜が酸化・劣化することよりも、被膜が持つ無機質汚れ(ウォータースポット・イオンデポジット)の固着を防ぐ能力低下が注目されると考えます。

被膜が持つ無機質汚れ(ウォータースポット・イオンデポジット)の固着を防ぐ能力は、言い換えると、無機骨格と結合した有機官能基によるものとなります。この有機官能基がしっかり働いている状態では、撥水性が高く、有機官能基の働きが弱まれば、撥水も弱まります。

つまり、現行の非硬化型コーティングによる汚れ固着を防ぐ能力の低下は、撥水の低下として現れますので、これもひとつの寿命として捉えることができると考えます。

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2017-11-11

コーティングは水拭きか乾拭きか

以下のような質問をいただくことがあります。

(質問)シリコーンレジンコーティング剤※の塗り込みと拭き上げのとき、濡れた状態か、乾いた状態か、どちらの状態でおこなうのが良いのでしょうか?
※.対象のシリコーンレジンコーティング
  • キラサク GPコーティング
  • キラサク EXコーティング
  • キラサク ブルーラベル

早速ですが、以下のように回答いたします。


(回答)
シリコーンレジンコーティングの塗布前の状態としては、水に濡れていても、乾燥していてもどちらでも良いです。

それぞれに特徴がありますので、以下のようにご自分に合った方法をお選びください。

どちらでも良い理由は、シリコーンコーティングの成分は、溶剤として「水」を使用している水性だからです。

ただし、塗り込み前に水に濡れている場合と乾燥している場合では、施工性や仕上がり後の耐久性に違いが出てきます。

当方のおすすめは、洗車の際に、撥水状況を観察していただき、少し撥水が弱くなったと感じたら、洗車後の濡れた状態からコーティングしていただければ、楽に良い状態が維持できると考えます。

くわしくは、下記の「水に濡れている状態での施工」と、「乾燥している状態での施工」をお読みいただき、ご自分に合った方法をご選択願います。


水に濡れている状態での施工
<施工性>
表面の水があるため、クロスやスポンジの滑りが良くなりますので、塗布作業がラクです。水分が潤沢なため、拭き上げ作業もラクです。
<耐久性>
表面の水が加わるため、シリコーンレジン濃度が低くなり(薄まり)ます。
このため、単位面積当たりの表面に付着するシリコーンレジンの量も少なる傾向になり、仕上がり後の被膜密度が下がることが考えられます。

乾燥している状態での施工
<施工性>
上記の水濡れしている状態と比較して、シリコーンレジン濃度が高くなります。
シリコーンレジン濃度が高いため、塗布や拭き上げ作業の際にクロスやスポンジの抵抗感が増し、作業性が悪くなります。
塗布や拭き上げ作業の際に、力を入れすぎて、微細な傷つきが発生しないように注意する必要があります。 
拭き上げのコツ
乾燥した状態でコーティング剤を塗布した場合でも、楽にしっかりと拭き仕上げるために、下記の2ステップをおすすめします。
  1. 水を含ませて、絞ったクロスで全体を拭き上げます。 
  2. 最後に、拭きムラや拭き残し点検の意味でも、乾燥したキレイなクロスで仕上げます。 
<耐久性>
コーティングのシリコーンレジンが薄まることがありません。
このため、単位面積当たりの表面に付着するシリコーンレジンの量も多くなり、仕上がり後の被膜の密度が上がることが考えられます。
結果として被膜の耐久性を最大にすることができます。
シリコーンレジンコーティングは、余分なシリコーンレジンが残存しないように、しっかりと拭き上げることが重要です。
耐久性を最大にするには、傷つけないように、丁寧かつ十分に拭き仕上げをする必要があります。

(参考) キラサク GPコーティングとEXコーティングの違い
http://coating.th-angel.com/2017/07/gpex.html

(参考)シリコーンレジンコーティングの粘弾性と滑り止め
http://coating.th-angel.com/2014/02/blog-post_23.html

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2017-10-26

フッ化水素酸にも負けないコーティング?【絶対に真似しないでください】

前回の記事では、ガラスを溶かすフッ化水素酸や、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物類の無機酸について触れました。

フッ化物類の無機酸を使うと、「ウォータースポットとかイオンデポジットと呼ばれる、水シミを落としているつもりが、ガラスコーティングはおろか、車本体の塗装や金属、人体・環境にも深刻な悪影響を与える」というお話をしました。

この記事をお読みくださったAさんからご質問をいただきました。

それならば、「フッ化物類の無機酸にも耐えられるコーティングはできないのか?」というご質問です。

なぜ、そのようなことを聞かれているのか疑問に思い、失礼ながらこちらから以下のように逆質問をいたしました。
「フッ化物類の無機酸のような危険物は取り扱っていないはずなので、どのような意味があるのですか?」

Aさんのお考えは、「現実に、フッ化物類の無機酸を使ったウォータースポット除去剤があるのだから、それに負けないコーティングはできないものか」という、単純明快なものでした。

なるほど、「危険は承知の自己責任で」というようなことのようです。

このような考え方は全く賛同できませんし、あえて(不必要に)危険性の高いものを使うことに加担するような提案や、製品を製造することはできません。

このため、Aさんには申し訳ないのですが、「ご提案することはできません」と回答いたしました。

仕事上では、このような回答になるわけですが、個人的には少々興味があり、フッ化物類の無機酸に耐えうるようなコーティング剤はできないものかと、考えてみることにしました。

ここからは、私の頭の中の想像で書いているだけなので、まったく何の根拠も実績もありません。ここに記載していることを参考にしたり、何かを実施することは絶対におこなわないでください。

以下の記事は、フッ化水素酸を例にして書いておりますが、フッ化アンモニウム、フッ化ナトリウムは水と触れることで、フッ化水素が発生しますので、危険性や毒性は同等と考えてください。


フッ化物類の無機酸にも耐えられるコーティングを考えてみる
フッ化水素酸や、水と触れたフッ化アンモニウム、フッ化ナトリウム等のフッ化物類の無機酸は、ガラス、鉄やアルミニウム等の金属、カルシウム、マグネシウム等の無機物や、皮膚、骨、プラスチック、ゴム、塗装、木材のような、ほとんどの有機物も激しく腐食させてしまいます。

ここで、ちょっと気になりませんか。
保管する容器は何を使うのだろう?

多くの物質に対して、腐食性をもつフッ化物類の無機酸を保管するのに、どのような材質の容器を使用するのでしょうか?

フッ化水素酸の保管は、主にフッ素樹脂(PTFE)素材の容器を使用します。
フッ化水素酸の濃度が低い(薄い)場合は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)やポリエチレンテレフタレート(PET)素材も容器として使用できるようです。
  • PTFE:ポリテトラフルオロエチレン(フッ素樹脂の一種)
  • PP:ポリプロピレン
  • PE:ポリエチレン
  • PET:ポリエチレンテレフタレート
と言うことで、フッ化水素酸に耐薬品性をもつ、PTFE/PP/PE/PETを素材として、コーティング剤ができないか考えてみましょう。


PTFEコーティング
現場施工が可能なコーティングとして実現性がないものとして、最初にあげられるものがPTFEです。PTFEによるコーティングは、フライパンや鍋などの「テフロン」が有名です。

このような、PTFEをコーティングする(定着させる)には、高温(300℃以上)で焼き付ける必要があります。このような高温で処理しますと、車の樹脂部品等への悪影響がありますので、PTFEコーティングは現実的ではありません。


PP/PE/PETコーティング
PP/PE/PETを現場施工でコーティングすることができるのでしょうか。

仮にPP/PE/PETをコーティングできたとしても、車の塗装よりも紫外線や熱、酸性雨や大気中の化学物質によって酸化劣化しやすいため、意味がないですし、むしろしないほうが良いでしょう。

そもそも、PP/PE/PETを現場施工できる高透明なコーティングは、イメージもわかないので、検討する余地がありません。

このため、少し視点を変えて、PP/PE/PETに近い組成のワックス剤から考えてみましょう。


蝋(ロウ)ワックス
PTFEやPP/PE/PETにような合成樹脂が発明されておらず、この世にない時代のフッ化水素酸の保管はどのようにしていたのでしょうか?

金属の鉛や白金はフッ化水素酸に対する耐力があるようです。長期間や濃度が高い場合は、鉛や白金を容器として使用していたようです。

フッ化水素酸の濃度が低い売位の保管や、一時的な保管にはガラス瓶の表面に蝋ワックスを塗布したような容器を使用していたそうです。

パラフィンや、蜜蝋・カルナバ(カルナウバ)等の蝋(ロウ)を原料とするワックスは、分子内の炭素原子の結合が鎖状になった有機化合物です。これらの天然樹脂は、上記のPP/PE/PETのような合成樹脂とも似た分子骨格となっております。

ただし、このような容器を使用していた昔は、フッ化水素酸による事故が多かったようですから、前例として考えることはしないほうが良いでしょう。

繰り返しになりますが、あくまでも「頭の中で想像してみるだけ」の話です。

仮に、上記のようなワックス類がある程度のフッ化物類の無機酸に耐力を持っていたとしても、車のコーティング剤としては、下記のように耐久性が弱く、ワックス自体が汚れの原因となるためおすすめできません。
  • 太陽光(紫外線)や熱に弱く、酸化・劣化しやすい。
  • 酸性雨(窒素酸化物等)やアルカリなど化学物質に弱く分解されやすい。
  • 上記のような理由で分解・劣化したワックスが「汚れ」そのものとなる。

結論
ということで、PTFEやPP/PE/PETは現場施工コーティング剤としての実現性がなく、パラフィン、蜜蝋やカルナバ蝋等のワックスは、従来からわかっていることですが、酸性雨や紫外線・熱に弱く、それ以上でも以下でもありません。

そもそも、近くの化学工場の事故でもない限り、フッ化物類無機酸の雨は降らないですし、百害あって一利なしのフッ化物類の無機酸を使ったウォータースポットクリーナーや、イオンデポジット除去剤を使わなければ良いことです。

それから、この記事を読んで「白金(プラチナ)や鉛入りコーティング剤とか、カルナバロウ入りコーティング剤によって、フッ化物類の無機酸にも耐えるものができました!」とか言わないでください。

「何々入り」程度で、それらに耐えられるほどの物はできませんから(笑)。

くれぐれも、この記事を読んで「実験をしたり、ましてや誤った宣伝をしたり」そのようなことが無いようにしてください。

(参考)ウォータースポットに有効なのは酸性かアルカリ性か
http://coating.th-angel.com/2017/09/blog-post.html

(参考)フッ化水素酸にも負けないコーティング?【絶対に真似しないでください】
http://coating.th-angel.com/2017/10/blog-post_26.html

(参考)ウォータースポットの除去と対策
http://coating.th-angel.com/2016/10/waterspot.html

(参考)ウォータースポットの原因
http://coating.th-angel.com/2016/11/water-spot-cause.html

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