2016-10-28

ウォータースポットの除去と対策

車の汚れの中でも最も厄介な「ウォータースポット(イオンデポジット)」の除去方法や、コーティングによるウォータースポットの予防とバリアなどの対策についてくわしく説明します。

ウォータースポットに関し、下記のような項目ごとに記載しております。なお、本ブログではイオンデポジット(別名:イオンデポジット)に関して下記のように定義しております。

イオンデポジット Ion Deposit

ネット上などで見かける言葉ですが、英語では”Ion Deposit”とは言いませんので和製英語ではないかと思われます。

確かに、さまざまな無機物イオン(ion)が雨水や水道水などに溶け込み、ボディ塗装面や窓ガラスに付着した水が蒸発したのちに、残留した各種の無機物が堆積物(deposit)となるという意味だと思われます。

これはこれで言いえて妙ということでしょう。

このイオンデポジットについては、日本のコーティング業界独特の言葉と考えて、当ブログでは英語圏でも一般的な用語「ウォータースポット(Water Spot)」に統一しております。


●本記事の関連項目ウォータースポットの原因に記載】
1.ウォータースポットってなんだろう
2.ウォータースポットの原因物質
3.ウォータースポットの発生

【ウォータースポットの除去と対策(本記事)に記載】4.ウォータースポットの除去
5.ウォータースポットの予防対策
6.ウォータースポットをバリアする
7.塗装を腐食させるウオータースポット(酸)をバリア
8.塗装につくウオータースポット(シリケート)をバリア
9.窓ガラスにつくウオータースポット(シリカ)をバリア
10.ウオータースポットをがっちり!それともお手軽バリア?
11.ウオータースポットを100%バリアできるの?

4.ウォータースポットの除去

ウォータースポット除去方法を考えるために、汚れの原因と発生プロセスを整理してみましょう。

ボディ塗装 窓ガラス
有機物汚れ 原因物質
酸性雨や空気中に含まれる酸性物質(NOx, SOx, 有機酸, 炭酸ガスなど)
酸性雨など有機物や酸による腐食や固着はほとんどない
発生プロセス 太陽熱などで酸性雨が濃縮され、同じく太陽熱によって軟化した塗装が酸によって腐食する
無機物汚れ 原因物質
水道水や井戸水などに含まれ、シリケート化する物質(ケイ素イオン、金属イオン)

水道水や井戸水などに含まれ、シリケート化する物質(ケイ素イオン、金属イオン)
発生プロセス 水の蒸発に伴い発生したシリケートが堆積し、塗装との機械的結合により固着する 水の蒸発に伴い発生したシリカ(ガラス)が、窓ガラスと非常に強く化学結合する

ウォータースポットは、上記表のように塗装を腐食させたり、窓ガラスと化学結合したりする大変厄介な汚れです。

厄介であるその理由は、何れの場合も腐食や固着、あるいは化学的結合といった汚れが時間を経てしまうと、溶解や研磨による方法で汚れを除去する必要があるということなのです。

キレイな状態にする作業の手間と、高度な技術を要することを考えれば容易に想像できます。

それでは具体的に、部位・原因ごとのウォータースポット汚れ除去方法はどのようになるのでしょうか?

塗装の有機物(酸性雨)汚れの除去 

塗装が酸によって腐食し、クレーター状に荒らされたような状態ですので、洗浄してキレイになるものではありません。

お気づきの通り、荒れた塗装表面を削り取り、その後平滑にしながら研磨による除去が必要になります。

塗装の無機物汚れの除去 

塗装の上にシリケートが堆積して固着したスケールですので、スケールを溶かして除去しなければなりません。

酢酸、塩酸や硝酸を用いることで、カルシウムやマグネシウムのスケールを溶解し除去することができます。

しかしお気づきの通り、酸の使用は、塗装や金属などを腐食させる危険性をともないます。

酸を使用しない場合は、研磨による除去が必要になります。

窓ガラスの無機物汚れの除去 

シリカが窓ガラスと強く化学結合して、溶け合ったような区別のつかない状態です。

シリカとガラスは同質のものです。

ご存知のようにガラスは濃硫酸・濃塩酸でも溶解できません。

シリカやガラスを溶解する酸としてあまり馴染みがないのですが、フッ酸(フッ化水素酸、フッ化アンモニウム)があります。

フッ酸を使ってシリカと窓ガラスの結合を切り取ろうとすると、同時に窓ガラスも影響を受けてしまいます。

フッ酸は法律上「毒物」に指定されています。非常に強力な酸であり、危険過ぎて大切なクルマに使用することもさることながら、人体保安上からも一般使用を避けるべきものです。

酸を使用しない場合は、研磨による除去が必要になります。

5.ウォータースポットの予防対策

塗装や窓ガラスに付着したウォータースポットをキレイに除去するには、酸を使って汚れを溶解させるか、削り落として磨く必要があることがわかりました。

溶解や研磨は、失敗しますと取り戻すことはおろか、より状況を悪化させる可能性が高くなってしまいます。

このため、ウォータースポットは発生してから対処するよりも、できるだけ発生させないようにすることが一番の対策になります。

つまり予防対策することが一番大切というなのです。

ウォータースポットは、発生部位や原因物質によらず、雨水や水道水などの水滴が付着し、水分が蒸発する際に発生します。

そうです!理想的には水滴が付着したままにしないことが重要なのです。

「水滴がつかないようにする。ついたらすぐに拭き取る」 う~ん、言うことは簡単なのですが・・・。

実際にはほとんど不可能なことですね。

しかし、日頃の心がけとしては良いかもしれません。

雨水の拭き取りは、日常のクルマ使用においては実施困難ですが、「洗車の水滴はすぐに拭き取る」これなら実施可能ですよね。

クルマ好きの皆さんなら、当たり前のことでした。

せっかくキレイに洗車したのに水玉が残っていた。厄介なウォータースポットを発生させる原因を自らがつくっていた。

これだけは避けましょうね。

さて、モグラたたきのような普段のお手入れのお話でしたが、「ボディケアを少しでもラクに、状態の悪化をできるだけ避ける」こんな考え方で、事前防御するための予防手段を考えていきたいと思います。

もったいぶってしまいましたが考え方はこうです。

「塗装や窓ガラスにウォータースポットを固着させない、予防対策する」

この掛け声はなかなか良いと思われませんか?

そうなのです。

巷にあふれるボディコーティングやウインドウコーティングは、正しく使うことによってこのためにも役に立つのです。

次項では具体的にウォータースポットの発生部位と原因ごとに予防(バリア)する方法を考えていきましょう。

6.ウォータースポットをバリアする

ここでもう一度、ウォータースポットの原因と一緒に、汚れを防ぐバリア(コーティング)を考えてみましょう。

ボディ塗装 窓ガラス
有機物汚れ 原因 酸による塗装の腐食 ガラスは酸に強い
バリア 酸に強い被膜による保護
無機物汚れ 原因 シリケートと塗装の機械的結合 シリカとガラスの化学結合
バリア シリケートが結合しにくい海面に改質 シリカとの化学結合を阻害する海面に改質

ウォータースポットは、発生する部位と原因がそれぞれに異なります。

このため、残念ながらすべてに万能なコーティングはありません。

それぞれの目的に合うコーティングを選択するか、複合的に適用することで、効果的にさまざまな原因によるウォータースポットを予防=バリアすることが必要となります。

次項では、ウォータースポットの発生部位と原因ごとのバリアとして「塗装を腐食させる酸をバリア」について触れてみたいと思います。

7.塗装を腐食させるウオータースポット(酸)をバリア

(1)ガラスコーティングによるバリア

窓ガラス(SiO2、無機物)は酸性雨にもびくともしません。

もうお気づきですね。

塗装へのガラスコーティングは、硬くて微細なキズつきから塗装を守ってくれるだけではないのです。

ガラスコーティングは、ガラス(SiO2)状硬化被膜を形成し、塗装を酸による腐食から長期間にわたってガッチリと守ります。

しかし、ガラスコーティングは長寿命で高性能高機能なのですが、ガラス状硬化被膜となるため、失敗が許されない施工は、経験技術と設備が必要となります(施工失敗を取り戻すには研磨からやり直すことになります)。

このため、ガラスコーティングは専門の施工業者さんに委託する必要があり、手軽さや費用の面でやや敷居が高い面があるのはご存知のとおりです。

「ガラスコーティングまではちょっと」という場合は、被膜の寿命や性能の点ではやや劣るものの、誰が施工してもきれいに仕上がり、従来のワックスよりもカンタンで、洗車と一緒にラクな施工ができる、下記のシリコーンレジンコーティングをオススメいたします。

(2)シリコーンレジンコーティングによるバリア

シリコーンレジンは、オイルやワックスのような線状(直鎖状)の二次元的分子構造ではなく、ケイ素(Si)と酸素 (O)原子同士が、ガラス(SiO2)と同様にメッシュ状(網目状)の三次元的分子構造の主骨格(シロキサン結合)となるため、機械的・化学的に強いガラスとよく似 た物性を持っています。

これにより酸による腐食にも強く、柔軟性があり取扱いが容易な被膜を形成します。

シリコーンレジンは上記のとおり、ガラスと近似した無機物のような性質を持ち、酸に対しても強い耐力をもつため、塗装を酸による腐食から保護します。

「レジン=樹脂」という言葉からは、硬い固形の被膜を形成するようなイメージを抱かれるかもしれませんが、シリコーンレジンコーティングは、従来のワックスよりも簡単に施工することができ、ガラスコーティングのように被膜が固形化しないため、施工の失敗がない柔軟性のある被膜を形成します。

次項では、ウォータースポットの発生部位と原因ごとのバリアとして「塗装につくシリケートをバリア」について触れてみたいと思います。

(参考)洗車・コーティングと酸(参考)虫の死骸と鳥の糞 洗車・コーティング
(参考)ウォータースポット除去にサンポール(参考) ガラスコーティングを補うコーティング剤 ~メンテナンス剤として~

8.塗装につくウオータースポット(シリケート)をバリア 

塗装へのシリケート固着を防ぐために、表面自由エネルギーが小さいシリコーンレジンコーティングを施します。

表面自由エネルギーが小さいと、他の物質と接する表面積がミクロな分子レベルで小さくなり、シリケートなどの汚れが付着しにくくなるというわけです。


たとえとして、「表面張力が大きい水」と「表面張力が小さい油」の話があります(液体の場合、表面自由エネルギーのことを「表面張力」とも呼びます)。

油を塗った平滑な板の上に水滴を落とすと、水分子の表面張力の方が油分子の表面張力より大きいため、水はそのまま丸い固まりの状態を保ち、油と最小限の接点しかもたないような撥水性表面になり、お互いが混じり合う(汚れる)ことを防ぎます。

小難しい話ですが、塗装にシリコーンレジンコーティングを施すことによって、シリケートなどの汚れが接する表面積が分子レベルで小さくなります。

この結果、シリコーンレジンコーティングがシリケートなどの汚れをくっつきにくくし、時間経過とともに進行する固着を防ぐわけです。

このほかにも、シリコーンレジンコーティングは、塗装表面の細かなキズなどの凸凹の合間に入り込み、表面を滑らかにする(塗装の凹凸部にシリケートが食い込みにくくする)役割も果たしています。

このような複合的な要因により、塗装とシリケートの機械的接合を防ぎ、スケール汚れの固着を低減します。


補足:

「シリコーンレジンの表面自由エネルギーが小さい」というのは、被膜の強さとは別の話です。

シリコーンレジンは、原子間結合が「シロキサン結合」した主骨格を持ちます。

シロキサン結合はケイ素原子(Si)と酸素原子(O)が三次元的なメッシュネット ワークによって結合するガラス(SiO2、無機物)に近似した強い結合力により、機械的・化学的に強い被膜を形成します。

ケイ素上に多種類の有機置換基 (官能基)を備えているため、さまざまな機能性(界面特性)を発揮するものです。

くわしくは別の機会にご説明いたします。

次項では、ウォータースポットの発生部位と原因ごとのバリアとして「窓ガラスにつくシリカをバリア」について触れてみたいと思います。


9.窓ガラスにつくウオータースポット(シリカ)をバリア

窓ガラスとシリカの化学結合を阻害するためには、上記のようにシリケート付着を防止するシリコーンレジンコーティングの使用も、選択肢として考えられます。

しかし、ピュアなシリコーンレジンだけでは滑り性があまり良くないため、窓ガラスのワイパー動作がビビリやすくなることがあります。

このため、シリコーンレジンと同じく表面自由エネルギーが非常に小さいフッ素レジンコーティングを施します。

フッ素レジンがシリカを阻害する理由は、前記シリコーンレジンと同じく、他の物質を引き寄せる力が小さくなることと、フッ素レジンが、窓ガラスの細かな凹凸に入り込み表面を滑らかにすることによるものです。

フッ素レジンコーティングは、機械的・化学的に強いシロキサン結合した三次元のガラス状主骨格分子構造をベースに、水滴がつく表面側に炭素を結合させた有機フッ素を配向させることで、強い被膜を形成しながら無機物シリカが窓ガラスと化学結合しないように、有機フッ素がブロックする役割を担っています。

フッ素レジンコーティングは、優れた滑り性を持っているため、ワイパーのビビリが起きにくく、撥水性も優れているため、雨天走行時の視界確保にも有利です。

10.ウオータースポットをがっちり!それともお手軽バリア?


窓ガラスは、元来有機物汚れに強いので、無機物汚れに対するバリア:フッ素レジンコーティングを施すことで、ウォータースポットを予防できます。

一方、塗装については、有機物汚れと無機物汚れの両方に対する予防バリアが施すことが理想的です。

その際にはガラスの硬い被膜を長期間形成するガラスコーティングを施し、その上にシリコーンレジンをコーティングする案と、ガラスコーティングのみの案、シリコーンレジンコーティングのみの案の3パターンが考えられます。

さて、どれが一番皆さまのクルマ、カーライフに適しているのでしょうか?悩ましいですね。

キラサクが考える選択の目安をまとめてみます。

塗装のウォータースポット予防策 ガラスコーティングのみ シリコーンレジンコーティングのみ ガラスコーティング+ シリコーンレジンコーティング
有機物汚れ・酸性雨による腐食予防 ★★★ ★★☆ ★★★
無機物汚れ・シリケート固着予防 ★★☆ ★★★ ★★★
有効期間 ガラスコーティング 数年 数年
シリコーンレジンコーティング 3~6カ月程度 3~6カ月程度
施工性 ガラスコーティング プロの経験と技術が必要 プロの経験と技術が必要
シリコーンレジンコーティング 簡単施工 簡単施工、 ガラスコーティングのメンテナンスとしても最適

上記のようなバリアとして各種のコーティングが有効なのですが、それで万全なのでしょうか?


11.ウオータースポットを100%バリアできるの? 

すみません。

最初から謝ってしまうのはなんじゃー。

ですよね。

最強のガッチリコーティングをした。

それならばウォータースポットを100%防げるのか?ここまで能書きを垂れていながら、弊社がオススメするコーティング剤を使用していただいても、残念ながら100%バリアはできません。

いきなりのたとえ話で恐縮ですが、海水浴や女性が日常的使う「日焼け止め」を思い出してください。

海水浴に出かける際、必需品のひとつに日焼け止めがありますね。

オゾン層破壊が進行している現在は、なおさら強烈な紫外線から肌の露出を防御しなければなりません。

そうしないと、あとでとんでもないことになりますでしょう。

んーまぁ、仮にその時のヒリヒリは、なんとか我慢したとしましょう。

それよりも本当に恐ろしいのは、数年の期間を経ての、シミやソバカス、黒ズミといったトラブルの定着に加えて、最悪は皮膚ガンを誘発する可能性も大きくなります。

UVに対して100%の防御はできないけれども、皮膚が元来持っている紫外線に対する耐力を上手に補助してあげる。

そうすることで健康で美しい肌をできるだけ長く維持し続けることができる。

日焼け止めにも、UVカット能力の違いや、皮膚に留まる能力の違い、それぞれに使いやすさなどの使い心地が異なります。

さまざまな日焼け止めの中から、目的や条件に合ったものを上手に選択し使用することで、健康維持に役立てることが求められます。

このほかにも、アフターケアとして日焼け後に肌の様子をみながら、ローションを塗ったりして紫外線による炎症を早めに沈静化し手当てをしてあげる。

そういう日常的な意識をもって、肌のケアをしてあげることが、最も大切なことではないでしょうか。

おっと、どこかの美容部員みたいになってしましました。

塗装や窓ガラスのコーティングは、お肌の日焼け止めと似ているなぁ、と思うのですがいかがでしょうか? クルマの使い方や、ライフスタイルなど自分に合ったコーティングを上手に選んで上手に使う。

コーティングをしていて、もうひとつ良いことがあります。

ウォータースポットが固着する前ならラクにウロコが落せることです。

厄介なウォータースポットから100%防御はできないかもしれないけれど、ときどきは気にして、ウロコ状の模様がついたら早めに洗車をしてあげて、クルマのアンチエイジングにどうぞお役立てください。

ここまで長文になりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。


(参考)
親水性コーティング ~親水のメリットとデメリット~ http://coating.th-angel.com/2013/11/blog-post_13.html

ウォータースポット(イオンデポジット)除去にサンポール(塩酸)? http://coating.th-angel.com/2014/05/blog-post_2.html


●本記事の関連項目
ウォータースポットの原因に記載】

1.ウォータースポットってなんだろう
2.ウォータースポットの原因物質
3.ウォータースポットの発生

【ウォータースポットの除去と対策(本記事)に記載】4.ウォータースポットの除去
5.ウォータースポットの予防対策
6.ウォータースポットをバリアする
7.塗装を腐食させるウオータースポット(酸)をバリア
8.塗装につくウオータースポット(シリケート)をバリア
9.窓ガラスにつくウオータースポット(シリカ)をバリア
10.ウオータースポットをがっちり!それともお手軽バリア?
11.ウオータースポットを100%バリアできるの?

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