先日、「アルコキシシラン」を原料として使用している他社のコーティング剤と、THエンゼルさんの「低分子シラン」ガラスコーティングの仕上がりを比較すると、光沢の透明性やギラツキが異なる。というようなご感想を頂戴しました。
このような話の中で、コーティングの種類やスペックを表すようなキーワードが同じでも、実はコーティング剤としての光沢・透明性などの美感や、耐久性・汚れにくさは同じではないのです。
同じような原材料を使っているようでも、なぜ、そのような違いが出てしまうのでしょうか。
原料物質の呼び方
アルコキシシランとは、ケイ素原子が酸素原子を介して、メチルなどのアルコキシ基を含む原子団が結合したシラン化合物の総称です。
また、低分子シランとは、アルコキシシランなどを含む、シラン化合物の中で比較的低分子量のものを指し、併せ持つ官能基の種類や官能性によって、様々な呼び名(種類)が存在します。
このように、同様の組成を表すようなキーワードの原料であっても、実はその特性や機能には非常に多くの種類があるのです。
コーティング剤つくりは卵焼きに似ている
コーティング剤つくりは料理とよく似ている、と思うことがあります。特にそんな時は、シンプルだけど奥の深い「卵焼き」が思い浮かびます。ベーシックな卵焼きの作り方はとてもシンプルです。
材料は、卵と調味料と油くらいでしょう。作り方は、予め卵と調味料を混ぜ合わせておき、フライパンに油をひき、加熱したのちに調味料を混ぜ合わせた卵をフライパンに流し込み、お好みの焼き加減にするといった具合でしょうか。
書き出すと、とても単純な卵焼きですが、材料の選び方とその配合の仕方、何よりも作る人の技量によって、出来栄え・美味しさがまったく別の物になってしまいます。
シンプルな卵焼きだからこそ、その焼き加減や卵選びや卵の鮮度、調味料には何を使いその分量はどのくらいにするのか。
卵の溶き方や、油のひき方からフライパン温度の管理、溶き卵の流し込み方から返し方やフライパンの使い方など様々な要因によってその味わいが変化します。
コーティング剤をつくる場合を、卵焼きに例えてみましょう。
まずは材料選びからです。例えばガラスコーティングの材料です。卵の種類にあたるものと考えられます。
主原料=食材
卵は、ニワトリの卵が一般的ですが、ウズラやダチョウの卵なんてのもあります。ニワトリに限った場合、チャボ、レグホン、鳥骨鶏、地鶏、と言った鶏の種類があります。放し飼いしてるから卵が元気とか、海藻を餌として与えることでヨードを豊富に含んだものなど、主原料となる卵ひとつをとっても様々な種類があり、新鮮さも加えてそれぞれに味覚・嗅覚・視覚・舌触りなどが違ってきます。
ガラスコーティング剤にもポリシラザンとかオルガノポリシロキサンやオルガノシランなどの種類があり、その中でも分子量の違いや、結合密度、官能基の種類などにより大変多くの原料があります。
弊社が使用している原料「低分子シラン」だけをみても、原料メーカー数社から数多くの低分子シラン原料が供給されています。言葉としての分類が同じである、「低分子シラン」であっても、その特性や機能などが異なります。
どの主原料を選び、あるいは複数種類の主原料をブレンドするのかや、下記の調味料(添加剤)との組み合わせにより、コーティング剤としてどのような特徴を持たせるのかを設計していきます。
添加剤=調味料
主な原料となる材料が決まりましたら、つぎに卵焼きならば、加える調味料を使って味付けをすることになります。味付けですから、甘くしたいときは砂糖、塩味が好きな人や、醤油・酒・味醂に加えて、出汁をきかせた出汁巻きだってあります。もちろん、調味料それぞれの種類からはじまり、塩ひとつをとっても、国産の海水を天日干ししたのが良いという人もいれば、ヨーロッパやアメリカ産の岩塩が良いという人もいます。
調味料の観点で、ガラスコーティング剤づくりをみてみましょう。
ガラスコーティング剤は上記のようなガラス化する低分子シランだけでは、コーティング剤どころか、充分な硬化さえも得られないこともあります。
硬化後の被膜の状態や、コーティング施工時の作業性などを考慮して、様々な特性や機能に相当する「味付け」を盛り込む必要があるのです。
その味付けのひとつに、硬化後被膜の「硬さ」があります。ガラスコーティングは単純に硬ければよいという訳ではありません。ガラスコーティングによる被膜の場合、硬すぎる場合は、車ボディの温度変化による伸び縮みや、振動などによるクラック(小さなひび割れ)が発生し易くなり、コーティング施工後しばらくして、剥がれやクスミの原因になります。
ですから、硬度や粘度といった物性を調整するために、適度な柔軟性(硬さ)にしてあげる適切な添加剤を加えることで、美しさと強靭さが持続する被膜を形成することができるのです。
ガラスコーティング剤の添加剤の役割は、硬さの調整だけではありません。施工性を高めるために、塗りと拭き上げのタイミングを調整するなどのために、硬化する速さを調整する触媒選択や配合量を調整します。
この他にも、施工性をよくするためには、できるだけ手間をかけずに、平滑で美しい光沢表面に仕上げるために、レベリング性や濡れ性を向上させる添加剤や溶剤を加えたりします。
調合・調整=混ぜ方・焼き方
ここまでは、産地やメーカーや品目名が記載された詳しいレシピがあれば、誰でも同じように、主原料や調味料を取り揃えることができます。さて、いよいよ卵焼きの混ぜ方~焼き方です。
料理する人の腕が試されるといいましょうか、卵焼きの味や出来栄えがここで決まると言っても過言ではありません。
調味料を入れる量やタイミングを見計らいながら卵をかき混ぜ、フライパンへ油をひき、コンロの火力を調整しながら、溶き卵を流し込みます。火力を微妙に調整し、火の当て方などにも細心の注意を払い、焼き具合を見ながら巻いていきます。
余熱を考慮しながら、フライパンをコンロから離し、絶妙のタイミングで皿に盛り付ければ出来上がりです。
卵焼きを書き出すとこんな感じになると思います。
上手な人の作り方を、動画や詳細な写真を添付した説明をすることで、詳しく伝えることもできるのかもしれませんが、寿司職人の腕前をみるために、最初に卵焼きを注文する人もいるくらいですから、そう簡単に真似することはできないのではないでしょうか。
卵焼きは単純なようですが、作り手の腕前によって、見た目、美味しさはかなり違ったものになります。
コーティング剤の調合や調整の場合も、卵焼きとよく似たことがあると思います。
キラサク GPコーティングや、業務用のトリートメント剤・メンテナンス剤に使用している「シリコーンレジン」を原料とした水性乳化コーティング剤は、弊社で独自に開発製造しています。
シリコーンレジンを主原料にしながら、水性(溶剤は水です)で無臭であるコーティング剤の製造のポイントは、本来なら水には溶けないシリコーンレジンと、水を混ぜ合わせるために「乳化:emulsification」をおこない、使いやすく安定した品質の製品に仕上げることです。
乳化を、卵焼きの調理のようにさらっと説明したいのですが、少し高校化学(せっけん作り)を思い出す必要があります。そんな時に便利なのがネットです。弊社とは取引・資本などの関係が一切ない会社のウェブサイトに、乳化についてわかりやすい説明がありますので引用させていただきます。
【文系でもわかる乳化】
以下ウェブサイト出典:プライミクス株式会社さま
その1 乳化ってなに?
http://www.primix.jp/mixer_lecture/vol1/01.html
その2 身の回りにある乳化物http://www.primix.jp/mixer_lecture/vol1/02.html
その3 乳化粒子の大きさって?http://www.primix.jp/mixer_lecture/vol1/03.html
いかがですか。乳化ひとつをとっても、なかなか奥が深いと思われませんか?
乳化する粒子の大きさを考慮したり、界面活性剤の使い方や、主原料との混ぜ合わせ方・温度管理などを正しくおこなうことにより、高品質の乳化製品ができるのです。
一見すると、きれいにシリコーンレジンと水が混ざり合ったように見えても、時間経過とともに分離したのでは何の意味もありません。
弊社では、長年にわたり高品質で安定した乳化を研鑽してきた技術者が、卵焼きと同じように職人技ともいえる「乳化技術」を駆使して、コーティング剤に求められる、強さ・美しさ・使いやすさ・安定した品質・適正な価格を追求した、調合や調整をしています。
卵焼きの味は食べてみないと
いささか強引に、シンプルだけど奥が深い料理である、「卵焼きとコーティング剤の製造」をなぞらえてみました。「卵焼き」と同じく、コーティングのPRやウェブサイトに書かれたスペックや宣伝文だけでは、コーティングの「味わい・質」といったことは表現しきれません。
同じような名称・キーワードであっても、材料選びからその配合量や製造方法によって、出来上がった製品の品質・仕上がり・使い心地・価格も全く異なったものになるのです。
(参考)レアアースコーティングについてhttp://coating.th-angel.com/2016/10/blog-post_13.html
よろしければポチッとお願いします。 | ||
にほんブログ村 | カー用品・装備ランキング |
本ブログ運営:株式会社THエンゼル
コーティングのはなし ブログの記事一覧を表示します。
一覧リストを表示するまで、少々時間がかかる場合があります。