2014-08-17

フッ素コーティングの透明度・光沢と屈折率

フッ素コーティングの高い撥水性・撥油性による防汚性が優れている理由はわかりました。しかし、フッ素コーティングとシリコーンコーティングを比較しますと、フッ素コーティングが良い面ばかりではないことも指摘されています。

フッ素コーティングの透明度や光沢についての指摘です。

そもそも、コーティングにおける光沢の良さや透明度の高さとは何なのでしょうか?
光沢が良く透明度が高いコーティング表面とは、科学的には光の散乱が少ない均質な状態の被膜に覆われていることが絶対的な条件となります。

たとえば、光が散乱することで濁ったように透明度が下がる例を考えてみましょう。


水の陽炎(かげろう)
透明な耐熱ガラスコップに、きれいな全く濁りのない冷たい水を入れてください。この水を観察しますと、非常に透明度の高い状態であることが確認できます。ここに熱いお湯、たとえば80℃の全く濁りのない熱水を静かに少量注ぎ込みます。

するとどうでしょう、モヤモヤと濁ったような半透明の液体が混じり合うのが見えます。コップにある冷水と、後から注ぎ込んだお湯のもとは同じ蛇口からの水であってもです。

このユラユラと陽炎のように見える濁りは、冷たい水と熱水のわずかな(光に対する)屈折率の差によるものと考えられます。全く同じ物質であっても温度差による程度であっても、透明な見え方に影響がでてくるほど微妙なものであることがわかります。水とお湯が混じり合って、温度差がなくなるとモヤモヤの陽炎のようなものは見えなくなります。


大型水槽のアクリル積層板
違った例を見てみましょう。大型の水槽を有する最近の水族館です。


サンゴ礁の海をダイナミックに再現することで人気の高い「沖縄美ら海水族館」の超大型水槽で採用されている「高さ8.2m、幅22.5m、厚さ60cmの透明度の高い一枚ガラス板のように見えるアクリルパネル」これは、厚さ4cmのアクリル板の表面を精密に磨き、このアクリル板と同じ(光の)屈折率であるアクリル接着剤を使って、15枚も繰り返し貼り合わせることで、厚さ60cmの透明度の高いアクリルパネルを構成しています。

そうですね。透明に見え、美しい光沢を得るためには、光が散乱しないようにする必要があるのです。光の散乱が発生する原因は、屈折率の異なるものが混じり合うことがその大きな要因となります。


コーティングにおける透明度
コーティングを構成する物質によって、それぞれ固有の屈折率を有しています。水とお湯のように同じ物質でも温度差によって若干の屈折率の差が生じますと、濁ったように見えてしまいます。水を例にしますと15℃の水に、65℃のお湯(温度差50℃)が混ざった場合の屈折率差はわずかに0.005です。

物質の屈折率
--------------------------------------------------------------------
 :1.33※
--------------------------------------------------------------------
フッ素樹脂 :1.3~1.4程度
シリコーン樹脂 :1.4~1.5程度
--------------------------------------------------------------------
アクリル樹脂 :1.5前後
ガラス :1.4~1.8程度(不純物や非晶質構造などによる)
--------------------------------------------------------------------
※.水の場合、温度1℃の上昇に対して0.0001程度低下する。他の物質も温度変化とともに屈折率が変化する。


このように同じ物質でも、たったの0.005の屈折率差でもこのような陽炎にようなことが起きます。

フッ素コーティングの場合は、以前下記の記事にてご紹介しましたように、フッ素樹脂単体では、クルマの塗装表面に密着しないために、シリコーン樹脂のバインダと一体にして、塗装表面と密着させる必要があります。以下のようにシリコーン樹脂とフッ素樹脂の屈折率は異なります。


(参考記事) フッ素コーティングとは(その2) ~ケイ素によるフッ素の密着について~

フッ素コーティングの透明度・光沢感を上げることを意識して、シリコーン樹脂とフッ素樹脂の屈折率を近づける努力がなされ、近年では以前よりも透明度の高いフッ素コーティングが提供できるようになっています。しかし水とお湯の例でもわかるように、非常に小さな屈折率の揺らぎがありますと、微妙な光沢感・透明感への影響があることも事実です。

このような理由から、ピュアなシリコーン樹脂のみによるコーティングに比較して、シリコーン樹脂とのハイブリッドであるフッ素コーティングの透明感が、わずかに劣る原因がここにあるのです。





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フッ素コーティングの撥水性・撥油性と汚れ

フッ素コーティングの高い撥水性・撥油性による防汚性が優れている理由を見てみましょう。

以前、撥水性・撥油性に関する記事をアップしました。この中で撥水性や撥油性をもつ表面の汚れ難さについてまとめたものです。


(参考)撥水性だから油汚れが着く親油性は本当?
http://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_15.html

この記事でも触れていますが、油分を含んだ汚れがつき難い表面は、撥油性でありかつ撥水性です。具体的に撥油性と撥水性が高い表面とはどのような状態なのでしょうか。

条件を一定にするために、クルマの塗装のように平滑正の高い表面の場合は、表面張力(表面自由エネルギー)が油や水との差が大きいほど、油や水をよくはじく、すなわち撥油性・撥水性表面となります。

 

表面張力(表面自由エネルギー) 単位[mN/m]
--------------------------------------------------------------------------- 水: 73
油: 25~30 (石油・鉱油)
---------------------------------------------------------------------------
S1.シリコーン: 16~30

F1.フッ素樹脂1: 18 (PTFE、フライパンなど) F2.フッ素樹脂2: 10~25 (フッ素樹脂+シリコーンコーティング) F3.フッ素樹脂3: 6 (CF3の場合、実験室レベルでの最小値)
---------------------------------------------------------------------------


いかがでしょうか。
液体よりも低い表面張力の固体表面(コーティング表面)は、その液体をはじくことができます。
整理してみましょう。
●シリコーンコーティングした表面
シリコーンのみでコーティングした場合は、上記表「S1」シリコーンの表面張力と、水・油の表面張力の差から以下のようになります。


  1. 水との表面張力の差が大きいため、水を良くはじく。
  2. 油との表面張力の差が無いまたは小さいため、油のはじき方が小さい。

「S1」シリコーンの場合、水の接触角では、およそ90~100°前後といったところでしょう。



●フッ素樹脂コーティングした表面
フッ素樹脂をコーティングするためシリコーンをバインダ(接着剤)とした場合は、上記表「F2」フッ素樹脂の表面張力と、水・油との表面張力の差から以下のようになります。

  1. 水との表面張力の差が大きいため、水を良くはじく。
  2. 油との表面張力の差があるため、油をはじく。

上記のように、フッ素樹脂の優れていることとして、撥水性に加えて撥油性があるため、油性の汚れがつき難いことがあげられます。
 
「F2」フッ素樹脂の場合、水の接触角では、およそ100~110°前後といったところでしょう。

 
(参考 実験室では)

上記表「F3」フッ素樹脂のように、CF3で隙間なく覆われた平滑な表面の水の接触角は120°、油の接触角は90°程度になると言われていますが、実験室レベルでしか実現できませんし、実用的コーティングとしては、その他の機能性(耐久性など)が不充分です。




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    2014-07-23

    ケイ素によるフッ素の密着について

    フッ素樹脂は、表面自由エネルギー(表面張力)が小さいため、撥水性・撥油性が高く汚れがつき難い特徴があります。

    とくに撥油性の高さはシリコーンと比較しても大変優れており、このことは油汚れなどに対しても高い防汚性をもつ特徴の裏付けでもあります。

    しかし、優れた防汚性を発揮するフッ素樹脂ですが、車の塗装表面に施工するフッ素コーティングでは、テフロンフライパンのようにフッ素樹脂を高温で焼き付けすることはできません。

    車のフッ素コーティングは、常温環境において特別な設備や道具を必要とせずに、施工できるようにする必要があります。

    くっつきにくいフッ素樹脂を、常温でコーティングできるようにするためには、何らかの手段により、フッ素樹脂と塗装面を密着をさせる必要があります。このためには、フッ素樹脂と塗装面との間に、接着剤の役割となるようなものを介在させることが必要となります。

    フッ素樹脂と塗装面を密着させるため、フッ素樹脂の炭素(C)と塗装面の有機物とを接着する化合物がその役割を果たすわけですが、この場合の接着剤として用いられるものが、ガラス硬化するタイプや、液体として付着するタイプの「ケイ素化合物:ケイ素樹脂」が一般的なのではないでしょうか。

    シリコーンのようなケイ素樹脂は、フッ素樹脂と同じように撥水性や撥油性をもつため、塗装表面にはくっつきにくいのではないのか?という疑問があるかと思います。

    ケイ素樹脂の場合は、多様な官能基を側鎖にもたせることができるため、塗装面の有機物と結合させると同時に、コーティング表面には撥水性や撥油性をもたせて、背反するようなことを一度に両立させることができます。

    このように「ケイ素樹脂:シリコーン」の特性を活かして、塗装面とくっつきにくいフッ素樹脂を仲立ちをさせることで、常温で現場施工できるフッ素コーティング剤を実現することができるのです。

    ケイ素樹脂を「接着材:バインダー」とした場合のフッ素コーティング例をみてみましょう。下図は、フッ素を含むケイ素化合物によるフッ素コーティングの例です。




    フッ素コーティングのイメージ

    F:フッ素
    C:炭素
    CH2: メチレン基などの置換基
    Si:ケイ素
    O:酸素
    Y:有機官能基
    有:有機物(塗装面)



    自動車ボディ塗装と密着する部分は、これまでも当ブログではおなじみのシリコーンがバインダーとして構成されます。


    塗装表面は有機物で覆われていますので、バインダーとなるケイ素原子(Si)と強固に結合する酸素(O)を含む有機官能基Y(有機物と結合しやすい原子団)が、塗装面の有機物(有)と強い力によって原子間結合(化学結合)します。

    フッ素樹脂は、炭素(C)が主骨格となっています。メチレン基(CH2)のような置換基を介することによって、フッ素樹脂-ケイ素樹脂間を結合することができます。

    このようにしてフッ素コーティングは、油分などの汚れの付着を防ぐフッ素樹脂をケイ素樹脂:シリコーンの力を借りることによって。塗装に密着させることができるのです。

    それでは次回は、フッ素コーティングの高い撥水性・撥油性による防汚性が優れている理由を見ていきたいと思います。



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