最初に従来の高分子シランと低分子ガラスコーティングの方式比較をご説明し、従来の高分子シラン原料ガラスコーティング剤を検証しながら、弊社がなぜ低分子シランを選択し、ガラスコーティング剤として開発製造しているのか、各ガラスコーティングの特性や機能についてお話しいたします。
従来のガラスコーティング剤(高分子シラン)
従来の自動車塗装や、建築内外装保護用途ガラスコーティング剤は「高分子シラン」を原料としておりました。この高分子シラン・ガラスコーティング剤で代表的なものに「ポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)」と「オルガノポリシロキサン」があります。1.ポリシラザン・ガラスコーティングとは
ポリシラザンはクロロシランを出発原料とし、脱アンモニア架橋により非晶質(アモルファス)ガラス被膜を形成するポリマー(高分子シラン)です。ポリシラザン:Polysilazaneの名前は、ケイ素:siliconのシラ"sila"と、窒素:アザ"aza"(フランス語)の3次元基本骨格を形成する高分子(ポリ:poly)であることに由来します。
ポリシラザンは、ペルヒドロ-ポリシラザン(PHPS:別名パーヒドロポリシラザン)により無機被膜を形成します。さらに高機能化させるためにオルガノ-ポリシラザンも考えられ、有機官能基を配向する無機有機ハイブリッド化することも可能ですが、急激な反応性により取扱が限定されるため用途や実用性が望めずに、オルガノ-ポリシラザンは殆ど実用化されていません。
ペルヒドロポリシラザン・ガラスコーティングの課題
- 無機表面が表出する。
→無機汚れ(ウォータースポット、別名イオンデポジット)が固着しやすい。
→汚染されていない表面は親水性になるが、空気中や雨水中油分などの有機汚れが付着すると撥水化して表面特性の維持が困難である。
- 反応性(硬化)が急激で硬化特性の制御が困難である。
→高硬度で柔軟性がなく、それに伴うクラック発生を防止するため、膜厚を極限まで薄くする必要があり擦過キズに対する保護性能を得にくい。
→手塗が困難であり、スプレーガンの使用が必要であるため設備コストに影響する。
- 高分子であるため有害な大量の有機溶剤(キシレンやターベンなど)に溶解する必要がある。
→ガラス化成分含有量が少なく膜厚が極端に薄い。
→塗装だけでなく人体・地球環境に有害である。
- 硬化する際に有害なアンモニアが発生する。
→アンモニアや有機溶剤を排気する設備が必要であるため設備コストに影響する。
2.オルガノポリシロキサン・ガラスコーティングとは
オルガノポリシロキサンは、クロロシランを出発原料とし、脱アルコール架橋により非晶質(アモルファス)ガラス被膜を形成するポリマー(高分子シラン)です。オルガノポリシロキサン:Polyorganosiloxaneの名前は、ケイ素:siliconの"sil"と、酸素:oxygenの"ox"と、炭化水素alkaneの"ane"の3次元基本骨格と有機官能基:organoを形成する高分子(ポリ:poly)であることに由来します。
オルガノポリシロキサンは、脱アルコールの反応がポリシラザンの脱アンモニア反応よりもマイルドであることから、比較的取扱がしやすく、無機ガラス主骨格と伴に有機官能基を配向する無機有機ハイブリッド化が容易であるため、機能性を付与しやすいことなどから、ポリシラザンで実現が難しかった課題のいくつかが解決できるようになりました。
オルガノポリシロキサン・ガラスコーティングの特質
- 無機骨格と伴に有機表面が表出する。
→無機汚れ(ウォータースポット、別名イオンデポジット)が固着しにくくなった。
→撥水性=疎水性を高めたり低くしたりすることができるため、高撥水化や親水傾向(低撥水化)にするなど目的に応じたコーティング表面が形成できる。
- 反応性(硬化)がマイルドで硬化特性の制御が可能である。
→硬度を高めつつも柔軟性を付与することができ、目的に応じた膜厚を形成できる。
→手塗が可能であり、特別な設備を必要とせずに塗布作業ができる。
- 高分子であるため有害な有機溶剤(キシレンやトルエンなど)に溶解する必要がある。
→ガラス化成分含有量が少なく膜厚が薄くなる傾向にある。
→塗装だけでなく人体・地球環境に有害である。
→有機溶剤を排気する設備が必要であるため設備コストに影響する。
オルガノポリシロキサンはポリシラザンの課題を克服できたのか?
高分子シランのなかでもオルガノポリシロキサンは、有機無機ハイブリッド化により、ポリシラザン(ペルヒドロポリシラザン)の下記の課題に対して改善ができていることと、できていないことがあります。課題改善点
- 親水性表面しかできず親水性維持ができない。
→無機有機ハイブリッド被膜により被膜性状を変化(低撥水~高撥水)させることができるようになった。
- 硬化特性が制御できないため施工が難しく高コストである。
→硬化速度を制御でき、スプレーガンだけではなく手塗が可能となった。
- 硬度を制御できないため、膜厚を極端に薄くする必要があり擦過傷の保護性能が劣る。
→被膜の硬度と柔軟性をバランス制御できるため厚膜化が可能となった。
- 硬化過程において有害なアンモニアガスを発し安全性環境性保全のためのコストがかかる。
→硬化架橋において発生するガスはアルコールであるため副生物の安全性が高まった。
- オルガノポリシロキサンもポリシラザンと同じく高分子であるため、ガラスコーティング剤として製品化するには有害な有機溶剤に溶解して使用する必要があり、溶剤添加によりガラス化成分含有量が少なくなることのほか、塗装への悪影響や安全性・環境性を保全する設備コストがかかる影響が残っております。
(参考)オルガノポリシロキサンの過去と現在
新しいガラスコーティング剤:低分子シラン・ガラスコーティングとは
低分子シランはクロロシランを出発原料とし、ひとつの分子内に複数の有機官能基と加水分解性のアルコキシ基を同時に含有し、脱水架橋により非晶質(アモルファス)ガラス被膜を形成するものです。従来のシラノール基を有する高分子オルガノポリシロキサンとの違いは下記のとおりです。
- 塗装面や樹脂などの多種類の有機物と強力に化学結合する多官能基と、ガラスや金属など無機物と強力に化学結合する加水分解性アルコキシ基を併せ持つ。
- 100%機能部化による低分子量液体が構成可能である(高濃度ガラス化成分含有、無溶剤化が可能)。
- 揮発性のシラノール基を含有しないため保存性・安定性が高い。
低分子シラン・ガラスコーティング剤の開発経緯
従来から製品化されていた高分子シランによるガラスコーティング剤は、改良が重ねられ施工性や被膜の機能性や性能向上が図られてきましたが、高分子であるためにどうしても、有害な有機溶剤の使用が避けられない状況でした。その後、原料製造の技術革新や改良・コストダウンが重ねられ、特に日本では非常に多くの高機能・高性能な低分子シラン群原料が開発商品化されており、現在は車や建築用ガラスコーティング剤として商品応用が可能な状況を迎えております。
それだけではなく、低分子化によるメリットとして塗布剤として非常に重要な、濡れ性やレベリング性が高まることにより、塗装表面に塗布した仕上がりが、ムラのない光沢やしっとりと濡れたような平滑性が向上する効果があります。
このため弊社では、現在最高の機能や性能と安定した品質を誇る日本製低分子シランを原料として、自動車塗装や建築内外装向けのガラスコーティング剤として求められる「耐久性・防汚性・施工性・光沢美観・メンテナンス性」を追求する開発・製造をおこなっています。
(参考)ガラスコーティング剤の密着について
(参考)無機ガラスコーティングの耐久性 ~無機-有機表面改質~(参考)無機溶剤ガラスコーティングとは?
(参考)無機ガラスコーティングは温度変化に弱い
(参考)ハイブリッドコーティング ~新しい無機有機タイプ~
ガラスコーティング比較表
各ガラスコーティング剤の特質を比較しました。表をクリックすると拡大表示します。↓
(参考)
コーティング剤の選び方 ~トップコートとして~
http://coating.th-angel.com/2015/03/blog-post_31.html
ハイブリッドコーティング ~トップコートとして~
http://coating.th-angel.com/2015/06/blog-post.html
ハイブリッドコーティング ~ベースコートとして~
http://coating.th-angel.com/2015/05/blog-post_12.html
新しい無機有機ハイブリッドコーティング
http://coating.th-angel.com/2014/12/blog-post.html
新しいガラスコーティング剤について
http://coating.th-angel.com/2014/05/blog-post.html
ガラスコーティングの比較
http://coating.th-angel.com/2014/03/blog-post_12.html
アルコキシシロキサンとアルコキシシラン
http://coating.th-angel.com/2016/11/blog-post.html
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