つまり
疎水性と撥水性の関係は、疎水性とは水との親和性を表す言葉であり、撥水性とは疎水性である状態が目に見えるかたちとして水をはじく現象を表す言葉ですので、同じ意味と言っても良い
と考えます。コーティング業界では、撥水性と疎水性を微妙なニュアンスで使い分けていることもありますので、撥水と疎水は同じ意味なのですがその使い分けについて考えてみたいと思います。
疎水と撥水の定義
前回記事親水性と疎水性(撥水性)でも述べましたように、水との親和性が低い性質は「疎水性」として定義されています。疎水性とは
単に塗装表面や窓ガラス表面などの物質表面と水との関係性だけを表しているものではありません。
例えば、豚骨ラーメンのスープのほとんどは「水」ですが、スープを作る過程で出汁とりのために入れた豚骨から出た脂は、どんなに煮込んでも水とは混ざらずに豚骨の油脂がスープの水に浮いています。この状態は豚骨から出た油脂は疎水性であるためだと言うことですね。
疎水(疎水性)とは
それでは「疎水」とはどういう意味なのかを国語辞典で調べてみましょう。手元にある広辞苑では下記のようになっています。
そ‐すい【疏水・疎水】(出典:広辞苑 1996年版)
1.水を流すこと。
2.灌漑・給水・舟運または発電のために、新たに土地を切り開いて水路を設け、通水させること。また、そのもの。多くは湖沼・河川から開溝して水を引き、地形によってはトンネルを設けることもある。
となっています。どうやら、疎水という日本語は「水を流す」とか、「土地を切り開き水路を設けて水を通す」という状態を表す言葉のようです。
疎水の意味はよくわかりましたが、私たちの日常ではあまり使われない言葉のようにも感じます。
そこで、コーティング剤をつくっているものの立場から「疎水性」を考えてみる前に、ボディ塗装や窓ガラスの疎水状態を表すのに一般的な「撥水性」についておさらいしてみましょう。
撥水(撥水性)とは
疎水と同じく「撥水」を国語辞典で調べると、シンプルにひとこと「水をはじくこと」とあります。読んで字の如し、水が付着する様を表した言葉であり、とても馴染み深い言葉です。例えば朝露が着いた葉っぱやハスの葉に浮かぶ水滴、防水加工した傘やレインウェアの表面に降りかかる雨粒などがはじかれて、水玉のようにはじかれる状態がすぐに思い浮かびます。
この撥水のメカニズムについては、別の機会に詳しくみていきたいと思いますが、自動車や建築の塗装や窓ガラス表面での、物質表面が水で濡れた状態を表す「撥水(水の接触角が大きくなる)」が起こるのは、大きく分けて下記の二つの要因が考えられています。
1.固体の表面自由エネルギー
水にはその中心に集まろうとする力があり、これを凝集力と言います。水などの液体は表面積をできるだけ小さくしようとするので、この力を表面張力とも呼んでいるわけです。水が塗装面などに付着した際に、内部の引力:凝集力(表面張力)と比較して、塗装面の表面自由エネルギーが小さいときは、水は小さくまとまろうとする力が大きくなることにより水玉状になります。
撥水性コーティング剤はこの原理を応用し、ボディ塗装表面や窓ガラス表面に塗布したコーティングが表面自由エネルギーをより小さくすることにより、撥水性を高めることができるわけです。
2.固体表面の微細突起
ロータス効果(ハス効果)と言われるように、固体表面がハスの葉のように微細な毛のような表面に凹凸突起がありますと、水と固体表面は非常に多くの点(凸)で接触するすることになります。このとき凹部の液面入り込めない多数の空隙の存在によって点接触をしている場合は、水が水玉状になります。コーティングにより、上記のような微細な凹凸状に塗装表面や窓ガラス表面を改質した場合は、とても高い撥水(超撥水とも呼びます)を得ることができます。
しかし、凹凸をつくるということは、光の乱反射を招く原因ともなりますので、表面が曇ったり白っぽくなったりする弊害を招きます。塗料などの超撥水性のものは、このような理由によりグロス(艶出し)にならないものとなり、艶消しになるのはこのような理由によるものです。
微細な凹凸が際立ってきますと、液面の進行が阻害されて撥水がさらに高まります(ピン止め効果とも言います)。この場合は若干ですが、傾斜や風があたることにより起きる水の流れ方にも影響を与えることがあるようです。
撥水(撥水性)とは疎水(疎水性)の状態を表す
以前の記事でも申し上げましたように、同義語である疎水性と撥水性の違いとは何でしょうか?ここからは私の解釈ですが、
コーティングの世界では撥水のある状態全般を「撥水」または「撥水性」と呼び、そのなかでも水が水路を流れるような筋状になってスムーズに流れ落ちる状態を、「疎水」または「疎水性」と呼んでいる
ように思います。
これはこの記事の冒頭で国語辞典を調べましたように、「疎水」=水の流れに由来するのではないかと考えます。
コーティングにおける疎水とはどのような撥水の状態を表すのでしょうか?
クルマのボディや窓ガラスの上を、水が筋状にスムーズに流れるためには、ピン止め効果が大きくない方が好ましいと思われます。
このため高撥水(接触角が大きい)よりも、低撥水(接触角が小さい)のほうが、小さな傾斜角や弱い風によって、水がきれいに筋状になって流れること、すなわち疎水と言うことになるのではないでしょうか。
(参考リンク)当ブログの「撥水性」に関する参考記事
この「疎水」あるいは「疎水性」と似たような状態や性質に、「滑水」あるいは「滑水性」と呼ばれるものがあります。
次回は「滑水とは」なんなのかについて考えてみたいと思います。
【関連ページ】
- シリコーンコーティングは撥水それとも親水?
- 撥水、疎水、親水、滑水って何ですか?
- 親水性と疎水性(撥水性)
- 撥水(撥水性)とは疎水(疎水性)の状態を表す
- 滑水性ってなんだろう
- 親水性コーティング ~メリットとデメリット~
- ガラスとガラスコーティングの親水性
- 親水性と防汚 ~ポリシラザンガラスコーティングを例として~
- 親水防汚:光触媒コーティングの現状と課題 その1
- 親水防汚:光触媒コーティングの現状と課題 その2
- 撥水性ガラスコーティングとは ~各種コーティングの撥水~
- 超撥水性コーティング
- 超撥水コーティングの防汚性は最強!しかし、、
- 親水促進剤って何ですか?
- 撥水性だから油汚れが着く親油性は本当?
よろしければポチッとお願いします。 | ||
にほんブログ村 | カー用品・装備ランキング |
コーティングのはなし ブログの記事一覧を表示します。
一覧リストを表示するまで、少々時間がかかる場合があります。